文:川村たかし 画:遠山繁年 出版:教育画劇
「自分は大きい」「自分は一番」そんな気持ちになった時。
実は世の中にはまだまだ上がたくさんいる。
そんなことを楽しくほんわか悟らせてくれる絵本です。
あらすじ
昔々、大きな鶴がいた。
大きな鶴は「自分がこの世で一番大きい」と自慢していた。
しかし、他の鶴が「トンビの方が大きい」と言うので、大きな鶴は背伸びをしてトンビより大きくなって見せた。
すると、トンビが「池の方が大きい」と言うので、鶴はまた背伸びをして、池より大きくなって見せた。
今度は池が「山の方が大きい」と言うので、鶴はさらに背伸びをして、山より大きくなって見せた。
山は笑いながら言った。
「この山の向こうまで行けば、お前より大きなものがるさ」と。
鶴は山を越え飛んで行ってみることにした。
海まで来て、ごつごつした岩で一休みしていると、その岩が動き出した。
なんと、その岩は大きなエビの角だったのだ。
あまりの大きさに、鶴は自分の方が小さいことを認めた。
それにエビは大喜び。
そして、大笑い。
でも、大笑いしすぎて・・・。
果たして、エビがこの世で一番大きなものなのでしょうか。
『おおきさくらべ』の素敵なところ
- ワクワクする繰り返しと大きくなる鶴
- はっきりと大きさの差がわかる絵
- 「上には上がいるなぁ」とほんわか終わる最後
この絵本は大きさを比べる繰り返しで出来ています。
そして、繰り返されるごとに鶴が大きくなっていくのが面白いところ。
最初はトンビより大きくなるくらいで現実的です。
しかし、池より大きくなったあたりで「おや?」と思います。
からの山!
子どもたちも「背伸びしても山よりは大きくなれないよ」と言うのですが、山より大きくなってしまいます。
これには「ほんとに山より大きくなった!」とびっくり仰天。
この現実感と非現実感の融合がとてもおもしろいのです。
また、繰り返しのフレーズもとてもワクワクさせてくれます。
大きくなるたび「そんなはずはなかろう」と言われ、
「お前より○○の方がもっと大きいよ」と言われます。
それに対して、つるが「ずうん」と背伸びをして、次のページで本当に大きくなった鶴を見る。
この流れの繰り返しが「本当にそんなに大きくなれるのかな?」とわくわくさせてくれるのです。
このワクワク感と、この絵本の根幹「大きさを比べる」という所をさらに面白く盛り上げてくれるのがこの絵です。
この絵本の絵は大きさの対比が物凄くわかりやすく、明確に描かれています。
山と同じ大きさになった鶴の物凄いサイズ感は、もう最初のページの鶴とは別の生き物です。
そんな大きな鶴とエビでは、まるで怪獣と人くらい違います。
ですが、そんなエビも・・・と、
子どもが思わず「デカッ!?」と言ってしまうくらいの対比で描かれているのです。
大きくなれば、さらに大きなものが出てくるこの絵本。
結局、一番はわかりません。
「上には上がいるなぁ」
と鶴がなんとなく悟ってほんわか終わります。
このふわっと感がとってもいい味を出しているのです。
明確ではっきりとした大きさ比べから、物凄くふわっと終わる。
ワクワクとほんわかが詰った昔話です。
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