作:前川和大 絵:小林系 出版:講談社
外にも家の中にもある暗闇。
そこには何かがいそうな気がする。
夜寝る時には特に。
もし‟それ”と出会ってしまったら・・・。
あらすじ
明かりのついていない家は暗い。
暗い所には何かがいる気がする。
夕方になると暗いところが増えていく。
だから、暗いところが増えないように家中の電気をつけて回る。
でも、お母さんが消してしまう。
布団に入り電気が消える。
暗いところから何かが見ている気がした。
「誰かいるの?いるならいるって言って」
暗闇に話しかけてみた。
すると、「・・・いないよ」と言葉が返ってきた。
飛び起きてお母さんに抱きついた。
「いないよ」と言われたことを話したら、「いないなら黙っていればいいのに。変なおばけね」と笑った。
その後、ぼくはトイレに行った。
「おかあさーん。いるよね?」と聞いてみると、「・・・いないよ」とさっきの声。
やっぱりいる!
トイレから飛び出して、家中の電気をつけて回った。
でも、またお母さんが消してしまった。
ぼくはライトを持って来た。
おばけはきっと光に弱いはずだから。
「光を消して」
また声がした。
どこにいるのか聞くと、暗いところにいると言う。
おばけの言うとおりにライトを消してみた。
やっぱりまっくらやみになった。
何も見えないと言うと、このまっくらなのがおばけだと言う。
おばけは「目を開けて。ぼくの向こうに何が見える?暗いところからしか見えないものがたくさんあるよ」と言ってきた。
目を開けてみてみると、そこには星のような輝きが見える。
その星に見えたのは街の光だった。
ぼくは暗闇に溶けて混ざって、夜の空を飛んでいた。
「暗い方がよく見えるんだ」と声は得意そうに言った。
ぼくらは夜を巡った。
暗闇の中、色々な景色を見て、彼らはどこに辿り着くのでしょう。
『くらいところからやってくる』の素敵なところ
- 誰もが感じたことがある暗闇への不安に共感できる
- 暗闇の魅力や必要性が伝わってくる
- それぞれの感じ方や考え方を大切にした作り
夜の闇や、家の中の暗がり、電気のついていない階段の先。
なんだか気味が悪いな。
なにかいそうだな。
と感じたり、意を決して暗がりに飛び込んで、電気をつけると安心するといった経験をした人は多いと思います。
そんな心境や行動がとてもリアルに描かれていて、読んでいると本当に共感出来ます。
見ている子も主人公と一緒に、息を潜めているのが印象的。
きっとなりきっているのでしょう。
でも、その怖さや不安感を解消してくれるのもこの絵本の魅力です。
暗いところからの方がよく見えるもの。
暗い中で生きているもの。
怖がらずに暗闇に身を置いた時の心地よさ。
それを主人公とともに感じさせてくれます。
そんな暗闇に誘う声ですが、その正体は明かされません。
漠然としたヒントはありますが、誰にも答えがわかりません。
読み終わった後に、「おばけじゃない?」という子、「夜だよ」という子など、感じ方は人それぞれ。
でも、その理由は千差万別で面白いです。
暗いところへの見方を広げてくれる、たくさんの余白を持った絵本です。
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