ねずみのよめいり(4歳~)

絵本

文:岩崎京子 画:二俣英五郎 出版:教育画劇

大事な娘の結婚相手には一番偉い相手を選びたい。

それは当然の親心。

でも、上には上がいるもので、一番偉いものには中々たどり着けません。

娘の婿殿は一体誰になるのでしょう。

あらすじ

あるところに父、母、娘のネズミの家族がいた。

娘が年頃になったので、親戚のおじさんが縁談を持って来た。

父は娘を嫁にやりたくないので、断ろうとしたが、おじさんは食い下がってくる。

そこで、父は「お天道様のように一番偉いやつに嫁にやる」と口を滑らせてしまった。

すると、世話好きのおじさんは、本当にお天道様に縁談の話をしにいってしまった。

おじさんがお天道様に縁談の話をすると、お天道様は言った。

「一番偉いのは、わしの姿を隠してしまう雲どんだ」と。

そこでおじさんは雲どんの所に行った。

雲どんに縁談の話をすると、雲どんは言った。

「世界一は、私を吹き飛ばしてしまう風どんだ」と。

そこでおじさんは風どんの所に行った。

風どんに縁談の話をすると、風どんは言った。

「世界一の婿は、おいらが吹きまくってもびくともしない壁だ」と。

そこでおじさんは壁の所へ・・・。

一番偉い婿殿は見つかるのでしょうか。

『ねずみのよめいり』の素敵なところ

  • 次へと繋がっていく繰り返し
  • 「偉い」の視野を広げてくれる
  • 方言風な口調ながらわかりやすい文章と、わかりやすいページ割り

この昔話の一番の特徴は、次々と繋がっていく繰り返しにあると思います。

一番偉いものを太陽は雲と言い、雲は風と言い、風は壁と言う。

次の相手からさらに次の相手へというたらい回しの繰り返しが、「次は誰だろう」と一緒に「どんな理由だろう」という面白さも足してくれるのです。

そんな「結局誰が偉いんだろう?」という繰り返しを見ていく中で、「偉い」や「強い」の基準が色々と見えてきます。

すると、「こういうところは一番偉いけど、こういうところは確かに弱い」と言うように、価値観の多面性が見えてきます。

そうしてたどって行った時に、まさかの相手が一番偉くなるという、不思議な面白さもこの昔話の魅力です。

さて、そんな魅力的な昔話を、昔話の雰囲気を残しつつも、かなりわかりやすく描いてくれているのがこの絵本です。

しゃべり口調が田舎の方言のようで、すごく昔話の雰囲気を楽しめます。

ですが、意味のわかりづらさは抑えられていて、端々がわからなくても大筋は聞き取れるようになっているのです。

また、それは話の展開に過不足ないページ割りのおかげでもあります。

展開に対して、しっかり絵が動いていくので、聞きなれない口調でも無理なくお話に入り込めるのです。

数ある昔話「ねずみのよめいり」の絵本。

その中でも、昔話の雰囲気とわかりやすさを見事に共存させた絵本です。

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