おおきさくらべ(4歳~)

絵本

文:川村たかし 画:遠山繁年 出版:教育画劇

「自分は大きい」「自分は一番」そんな気持ちになった時。

実は世の中にはまだまだ上がたくさんいる。

そんなことを楽しくほんわか悟らせてくれる絵本です。

あらすじ

昔々、大きな鶴がいた。

大きな鶴は「自分がこの世で一番大きい」と自慢していた。

しかし、他の鶴が「トンビの方が大きい」と言うので、大きな鶴は背伸びをしてトンビより大きくなって見せた。

すると、トンビが「池の方が大きい」と言うので、鶴はまた背伸びをして、池より大きくなって見せた。

今度は池が「山の方が大きい」と言うので、鶴はさらに背伸びをして、山より大きくなって見せた。

山は笑いながら言った。

「この山の向こうまで行けば、お前より大きなものがるさ」と。

鶴は山を越え飛んで行ってみることにした。

海まで来て、ごつごつした岩で一休みしていると、その岩が動き出した。

なんと、その岩は大きなエビの角だったのだ。

あまりの大きさに、鶴は自分の方が小さいことを認めた。

それにエビは大喜び。

そして、大笑い。

でも、大笑いしすぎて・・・。

果たして、エビがこの世で一番大きなものなのでしょうか。

『おおきさくらべ』の素敵なところ

  • ワクワクする繰り返しと大きくなる鶴
  • はっきりと大きさの差がわかる絵
  • 「上には上がいるなぁ」とほんわか終わる最後

この絵本は大きさを比べる繰り返しで出来ています。

そして、繰り返されるごとに鶴が大きくなっていくのが面白いところ。

最初はトンビより大きくなるくらいで現実的です。

しかし、池より大きくなったあたりで「おや?」と思います。

からの山!

子どもたちも「背伸びしても山よりは大きくなれないよ」と言うのですが、山より大きくなってしまいます。

これには「ほんとに山より大きくなった!」とびっくり仰天。

この現実感と非現実感の融合がとてもおもしろいのです。

また、繰り返しのフレーズもとてもワクワクさせてくれます。

大きくなるたび「そんなはずはなかろう」と言われ、

「お前より○○の方がもっと大きいよ」と言われます。

それに対して、つるが「ずうん」と背伸びをして、次のページで本当に大きくなった鶴を見る。

この流れの繰り返しが「本当にそんなに大きくなれるのかな?」とわくわくさせてくれるのです。

このワクワク感と、この絵本の根幹「大きさを比べる」という所をさらに面白く盛り上げてくれるのがこの絵です。

この絵本の絵は大きさの対比が物凄くわかりやすく、明確に描かれています。

山と同じ大きさになった鶴の物凄いサイズ感は、もう最初のページの鶴とは別の生き物です。

そんな大きな鶴とエビでは、まるで怪獣と人くらい違います。

ですが、そんなエビも・・・と、

子どもが思わず「デカッ!?」と言ってしまうくらいの対比で描かれているのです。

大きくなれば、さらに大きなものが出てくるこの絵本。

結局、一番はわかりません。

「上には上がいるなぁ」

と鶴がなんとなく悟ってほんわか終わります。

このふわっと感がとってもいい味を出しているのです。

明確ではっきりとした大きさ比べから、物凄くふわっと終わる。

ワクワクとほんわかが詰った昔話です。

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