作:日隈みさき 出版:あかね書房
鳴くことをやめ、旅に出た一番鶏。
その旅の中で出会う、たくさんの1がつく言葉。
1のつく言葉の多さに驚かされる言葉遊び絵本です。
あらすじ
一番鶏とは、朝一番に鳴く鶏のこと。
そんな一番鶏が、ある日鳴くのを「いちぬけぴ」とやめてしまいました。
ニワトリ一族は、一致団結して、ボイコット。
一応みんなにお知らせをすると、これは一大事と、鳴くようお願いしましたが、一羽残らず旅に出てしまいました。
一列に並んで進みます。
町を一望し、一面の草むらを抜け、一か八かつり橋を渡ります。
市場をひとっ走り、一輪車を追い抜いて、一日中歩いて走ってくたくたです。
ニワトリたちが一休みしていると、空に輝く一番星を見つけました。
一番星は夜が来たことを知らせます。
一番鶏は朝が来たことを知らせます。
そんなことを考えていると・・・。
『いちばんどりいちぬけた』の素敵なところ
- 1のついた言葉が目白押しで進んでいく物語
- 道中の鳥たちの行動に色々なことを想像させられる
- 旅に出たことでわかった自分の気持ち
1のついた言葉が目白押しで進んでいく物語
この絵本のなによりおもしろいところは、1のついた言葉で物語が進行していくことでしょう。
一番鶏、いちぬけぴ、一族、一致団結、一応、一大事・・・
と、1のつく言葉が目白押し。
1のつく言葉って、こんなにあったのかと驚かされます。
子どもたちも、
「あ!1がついてる!」
「ここに1があるよ!」
と、1を見つけるたびに声を上げていました。
中には、「14個・・・」と、1のつく言葉の数を数える強者も。
終わった後「21個もあった!」と、1のつく言葉の多さに驚いていました。
でも、出てくる言葉に特別な言葉はほとんどなく、普段から自然に使っている言葉ばかり。
改めて考えてみると、1って色々な言葉についているんだなあと気付かされます。
そんな、日頃は気付かない1のつく言葉のおもしろさや、その多さに気付かせてくれ、しかもそれが物語になっているという秀逸さが、この絵本のとてもおもしろいところです。
道中の鳥たちの行動に色々なことを想像させられる
こうして、1のつく言葉が盛りだくさんの旅に出るニワトリ一族。
その道中のおもしろさが、言葉遊びだけじゃないのも、この絵本の素敵なところです。
そもそも、ニワトリ一族の中に、1匹ずつハトとヒヨコが混ざっている時点で、
「あれ!?ニワトリじゃなくてハトじゃない!?」
「ヒヨコもいる!かわいい~」
と、まずツッコミが入ります。
その上で、草むらや、市場など、様々なロケーションごとの、ニワトリたちのユーモラスな行動に物語を想像してしまうのです。
草むらを抜けると、ハトが赤い花で、ニワトリ風の頭飾りを作っているのを見て、
「なんかついてる!自分もニワトリみたいになりたかったのかな?」
市場でハトがイチゴを見に行っているのを見て、
「イチゴ食べたいんじゃない?買わないよって言われてるのかな?」
など、その光景からニワトリたちの文章では語られない物語や、セリフを自然と想像してしまうのです。
この言葉遊びだけでなく、絵を見ているだけでも、たくさんの発見や想像が楽しいもの、この絵本のおもしろいところです。
旅に出たことでわかった自分の気持ち
さて、こうして1日中歩き続けたニワトリ一族。
夜になり一番星を見ていると、翌朝のことが気になってきます。
一番星と対になる、一番鶏の仕事。
(そもそも、この対比がとてもロマンチックで素敵です)
自分たちの鳴き声を待っていてくれる人々のこと。
自分たちも、旅に出るまで気付いていなかった、1へのこだわり・・・。
その結果、ニワトリたちが取る行動はたった一つしかありませんでした。
たた、ここで素敵だと思ったのは、行動そのものではありません。
旅をする中で、色々な場所に行き、色々なものを見て、色々なことを考えた結果、自分たちにとって大切なものや場所がわかったのだろうなと、感じられたところなのです。
きっと、旅に出なければ、一番鶏の仕事の大切さや、その仕事を好きなことに気付くこともなかったでしょう。
1のつく言葉遊びのおもしろさ、道中のニワトリたちの行動など、おもしろいところがたくさんある絵本。
そのなかでも、旅を通して、自分たちの本当の気持ちに気付くという物語が、とても素敵だなと感じるのです。
二言まとめ
次々と出てくる、1のつく言葉に、普段どれだけ1のつく言葉を使っているのかに気付かされ、驚かされる。
読めば、「一度は旅に出てみようと」と思わされる、1のつく言葉遊び絵本です。
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