文:竹下文子 絵:鈴木まもる 出版:金の星社
なんでも作れる積み木遊び。
どんどん積み木を持ってきて、どんどん大きくなっていく。
さあ、なにができるのでしょうか?
あらすじ
小人たちが積み木を運んできました。
円柱2つに、長四角の積み木を持ってきて・・・
ベンチができました。
そこに長い棒と、四角と、短い棒を持ってきて・・・
ベンチにつけると、キリンになりました。
今度は三角をたくさん持ってきて・・・
四角も棒も、もっともっと持ってきて・・・
さらにさらにくっつけていくと・・・
怪獣ツミキザウルスができました!
けれど、喜んでいたのも束の間、ツミキザウルスが歩き出し、ドシンドシンと追いかけてきます。
大慌てで逃げるキリンと小人たち。
一体どうなってしまうのでしょう?
『つみきでとんとん』の素敵なところ
- 積み木で作ったものが動き出す夢のような世界
- 積み木だからこその物語
- 積み木の無限の可能性が感じられる最後の場面
積み木で作ったものが動き出す夢のような世界
この絵本のなにより素敵なところは、作った積み木に命が吹き込まれ動き出すところでしょう。
普段は、積み木を作り、イメージの中で動かしている積み木の世界。
積み木同士は積んであるだけなので、動かすこともあまりできません。
そんな積み木が、躍動的に、重厚に動き出すのだから、盛り上がらないはずがありません。
かわいいキリンが動き出した時は、
「キリンさん動き出したよ!」
「わあ!本当に生きてるみたい!」
「かわいい♪」
と、みんな大喜び。
すっかり、この絵本のマスコットキャラクターのよう。
ツミキザウルスが動き出した時は、
「こんなに大きいのに動いた!」
「かっこいい!」
「なんでも食べちゃいそう!」
と、その大きさと重厚感にテンションが上がります。
きっと、頭の中では自分の作った力作が動いているところも、想像していたことでしょう。
この、作った積み木に命が吹き込まれ、動き出す世界観がなにより素敵なところです。
積み木だからこその物語
また、物語が積み木だからこその作りになっているのも、この絵本のおもしろいところ。
ツミキザウルスを防ぐ手立ても、その後の展開も、まさに「積み木だったらこうなるよね」といったものになっています。
子どもたちも、「積み木だったら崩れちゃうんじゃない?」と、予想したりするのですが、まさにその通りの展開に。
これは、子どもたちの頭にある積み木の特性が、そのまま物語の作りに繋がっているということです。
「作っては崩して、また作る」という、積み木ならではのダイナミックな遊びが、そのまま物語になっているという感じでしょうか。
積み木が動き出す、魔法のような世界でありながらも、現実の積み木と見事にリンクしているのです。
この、積み木だからこその、物語の作りもこの絵本のとても素敵なところです。
この絵本を読むと、無性に自分も積み木でなにかを作りたくなりますよ。
積み木の無限の可能性が感じられる最後の場面
さて、そんな物語の最後の場面。
ツミキザウルスの件も一段落し、気を取り直して新たなものを作り始めます。
この出来上がったもののクオリティが高すぎるのも、この絵本の素敵なところ。
使う積み木の数も、そのくみ上げ方の緻密さも、いつもの積み木とは次元の違うクオリティを見せつけてくるのです。
これまでの、ツミキザウルスなども十分すごかったですが、よく見たら再現できるレベルだったり、積み木が好きな子は同じ様な規模のものを作っていたりもします。
ですが、最後の場面はそんなものではありません。
子どもたちも「こんなのできるの!?」「これ積み木!?」と度肝を抜かれるレベルです。
ここまで、子どもたちの知っている積み木の世界で物語が展開してきたのが嘘のよう。
ですが、よーく見ると、そこに使われているパーツは、自分たちが日ごろから使っている積み木と一緒。
同じ積み木で、これだけのものが出来るのだということがわかります。
こうなると、刺激を受けないわけもなく、絵本を見ながら作ってみたり、これまでのイメージの枠を超えて作ってみようとする子が現れます。
こんな風に、この絵本を通して、新たな積み木の可能性を発見させてくれ、試してみたくさせられるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
作った積み木が動き出すという、夢ような世界がとても楽しい。
読めば、自分も積み木ですごいものが作りたくなる、積み木の無限の可能性が伝わってくる絵本です。
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