【絵本】富士山にのぼる(5歳~)

絵本

作:石川直樹 出版:アリス館

富士山は日本一の山。

そんな富士山に登ったことはありますか?

これはその富士登山に挑む絵本です。

あらすじ

富士山は日本で一番高い山。

富士山の姿は近づいていくとどんどん変わる。

遠くから見ているだけじゃつまらないので、冬のある日、富士山に登ることにした。

真っ白な雪の上を少しずつ登っていく。

とうとう誰の足跡もない所までやってきた。

雪は凍って固くなるので、アイゼンをつけて滑らないように歩く。

ゆっくり、少しずつ。

そうすれば疲れない。

息は吐いて、吐いて、吸う。

山登りでは吐くことが大事だ。

4時間歩き続け、日暮れが近づいてきた。

街の明かりは、もうかなり遠い。

今日はテントを張り、ここで眠ることにした。

テントを張ったら、綺麗な雪を集めて溶かし、水を作る。

甘い紅茶を飲み、食事も作る。

今夜のメニューはご飯ラーメンだ。

寝袋に入ると温かいが、風の音で深くは眠れない。

眠りながら、富士山のふもとに広がる森のことを考えていた。

そこは青木ヶ原珠海と呼ばれる豊かな森。

富士山に降った雨が、何年も地面の中を旅した後に、その森へ湧き出してくる。

富士山の周りにはたくさんの洞穴があり、一年中溶けない氷のある「氷穴」や、風の通り道である「風穴」などもある。

樹海にはたくさんの生き物たちが住んでいて、神聖な空気で満ちている。

富士山の夜空は、本物の夜空。

星がまぶしいほどに輝いて、宇宙が手の届きそうなところにある。

そして、雲海から太陽が昇り、朝が来た。

テントは日の出前にたたんである。

靴底にアイゼンをつけたら出発だ。

頂上に近くなるほど、風は荒れ狂うように吹き付けてくる。

この厳しい環境を越えた先には一体どんな景色が待っているのだろか・・・。

『富士山にのぼる』の素敵なところ

  • 写真とともに歩む冬の富士登山の一部始終が見られる
  • 登るだけではわからない富士山の色々な顔
  • 富士山からの景色を自分の目で見たくなる

写真とともに歩む冬の富士登山の一部始終が見られる

この絵本のなによりもすごいところは、富士山の頂上への道のりを写真で見ながら歩めるところでしょう。

外から見る富士山はよく目にしますが、富士山からの眺めや頂上の景色を見たことのある人は少ないと思います。

外から見るのとは全く違う富士山の顔が、この絵本ではたっぷりと描かれるのです。

それも、ただ綺麗な景色が描かれるだけではありません。

一歩一歩雪を踏みしめる自分の足元と影、テントでお湯を沸かす様子など、登っていく一挙手一投足が、主観視点で描かれます。

その時の心理描写と相まって、本当に富士山を登っている気分になってくるのです。

一歩一歩少しずつ頂上に近づいていく感覚。

これを味わえるのが、この絵本の本当にすごいところ。

そして、その時々に様々な美しい景色を見せてくれるところも。

夕暮れの街明かり、真っ暗な夜、美しい星空、光り輝く日の出・・・。

ただ、美しいだけじゃなく、そこまでの苦労を味わっているからこその感動がそこにはあります。

この、厳しく長い富士登山を、苦労も感動もひっくるめて味あわせてくれるのが、この絵本のとても素敵なところなのです。

登るだけではわからない富士山の色々な顔

これだけ登る姿を克明に描いているこの絵本ですが、描かれているのは登るところだけではありません。

富士山を取り巻く自然や、文化についても触れられているのも、この絵本の素敵なところなのです。

富士山の雪解け水に育まれた豊かな森、青木ヶ原珠海の神秘的な姿。

様々な洞穴。

さらには、信仰の対象としての富士山や、その富士山を祀る地域のお祭りという文化まで、富士山の様々な顔を見せてくれます。

ただ、日本のシンボルとしてそこにあるだけでなく、人や森など様々なものと繋がる姿は、「日本一の山」ではなく「自然の一部である富士山」に気付かせてくれるのです。

こうして、色々な富士山の顔を知ると、自然と富士山への興味が湧いてくることでしょう。

ただ、登るだけではなく「富士山」というものについて、考えるきっかけを作ってくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

富士山からの景色を自分の目で見たくなる

さて、こうして写真を通して、富士山を登り頂上へと辿り着き、そこからの景色を見せてくれるこの絵本。

その美しさに感動を覚えるとともに、湧きあがってくるのが「自分の目で見てみたい」という気持ちです。

日本一高い場所から見る景色。

雲の上から見る朝日。

天の川どころではない、満天の星空。

そのどれもが「実際に見たらどんなに綺麗なんだろう」という気持ちにさせてくれます。

さらに、この気持ちを比較的叶えやすいというのも大きなポイント。

富士山はルートによっては比較的子どもでも登りやすく、この思いが実現しやすいのです。

この富士山の懐の深さも合わさって、実際にこの光景を見ることも夢物語ではありません。

絵本を見て、「自分も登ってみたい」という気持ちにさせてくれるところ。

その気持ちを実行に移し、絵本の中の景色を現実のものにしやすいのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

主観視点からの写真で描かれる富士登山を通して、その苦労や感動を一緒に体験することができる。

見れば、「自分もその景色を見てみたい」という気持ちが湧きあがってくる実写絵本です。

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