【絵本】たすけてー(3歳~)

絵本

作・絵:りとうようい 出版:金の星社

イボイノシシの母ちゃんは、2児の母。

でも、ある日、子ども達に魔の手が迫る。

そんな時、頼れるのは・・・この強靭な肉体だけ!!!

あらすじ

イボイノシシの母ちゃんが、サバンナで2匹の坊やたちに、乳を飲ませていました。

その時、坊やを狙って、ハイエナの群れが近寄ってきました。

母ちゃんは、坊やたちを体の後ろに隠すと・・・

ハイエナたちに突進し、見事に蹴散らしてしまいました。

と、その時、隙をついたチーターが、坊やの元に迫っています。

さらに、もう一匹の坊やがワシにつかまり空へ。

ワシを追いかける母ちゃんは目の前にキリンを見つけました。

キリンの背中をお借りして、キリンの頭の上へ駆けあがる母ちゃん。

そして、ジャンプ!

そのままワシに激突し、なんとか坊やを助け出したのでした。

けれど、安心もしていられません。

今度は、もう一人の坊やを追っているチーターめがけて、そのまま落下。

けれど、外れて地面にドシン!

このままでは坊やがチーターに食べられてしまいます。

と思った瞬間・・・

『たすけてー』の素敵なところ

  • 優しくて、強くて、頼りになるおちゃめな母ちゃん
  • 疾走感あふれる絶対絶命なピンチの連続
  • ピンチなのに笑いの絶えないおもしろさ

優しくて、強くて、頼りになるおちゃめな母ちゃん

この絵本の特徴的なところは、母ちゃんの圧倒的な存在感でしょう。

表紙の絵から伝わるように、とても優しく、思いやりに溢れた母ちゃん。

けれど、ひとたび坊やに危機が迫れば、その優しい顔は一転、野生の顔に変わります。

特に、度肝を抜かれるのが、ハイエナに襲われた場面。

完全に捕食者の顔をして現れたハイエナに、子ども達は、

「ハイエナが来た!」

「食べられちゃうよ~」

と、とても不安そうな顔。

でも、ページをめくったとたん、ハイエナを蹴散らしている母ちゃん。

ハイエナの表情も、母ちゃんのあまりの強さに恐れおののき情けない顔に。

これには、

「母ちゃん、つよっ!?」

「めっちゃ強いじゃん!」

と、みんな驚きを隠せず、その蹴散らしっぷりに目玉が飛び出していました。

さらに、ピンチが続きますが、どんなに絶体絶命でも諦めません。

使えるものはすべて使い、坊やを助けようとする姿は、まさに頼れる母ちゃんです。

この、坊やたちへの優しさと、坊やがピンチになった時の豹変っぷりという、母ちゃんという存在の様々な顔を描き出しているのが、この絵本のとてもおもしろく素敵で度肝を抜かれるところです。

最後の最後で、失敗してしまうおちゃめさもぜひ見てみてください。

疾走感あふれる絶対絶命なピンチの連続

こんな風に、頼れる母ちゃんですが、絶体絶命のピンチが怒涛のように押しよせてきます。

ハイエナを蹴散らしたら、チーターが坊やを追いかけ、もう1匹の坊やはワシにつかまりと、とてもじゃないけど、母ちゃんの体一つじゃさばききれないレベルです。

このページをめくるたび、ピンチが起こる疾走感と絶望感もまた、この絵本のとてもおもしろくハラハラドキドキするところ。

だって、ピンチが解決する前に、次のピンチが起こっていくのですから。

頭を整理する暇もありません。

そして、それは母ちゃんも同じです。

じっくり考える時間のない中で、対処していかなければいけない忙しさ。

ここで、子ども達と母ちゃんの気持ちがリンクするのでしょう。

気付けば、大きな波に乗っているかのような、不思議な気持ちよさが生まれます。

ただ、走り抜けるしかない疾走感とでもいうのでしょうか。

ワシを追いかけ、キリンの背中をかけ登り、ジャンプしてワシを撃退し、そのままの流れで、チーターめがけて落下する・・・

という、考えているような、ただただ走っているような不思議な感覚。

この、次々起こるピンチに、考えている暇もなく、ひたすら走り抜けていくという、まさに母ちゃんと同じ心境を味わえるのも、この絵本のとてもおもしろいところです。

ピンチなのに笑いの絶えないおもしろさ

さて、このように、ピンチが続き、ハラハラドキドキし続けるこの絵本。

ですが、不思議なことに笑いも絶えないのがおもしろいところです。

それは、それぞれの場面が、とてもコミカルに描かれているからでしょう。

ハイエナを蹴散らす場面は、まるでドタバタ劇のように。

ワシに頭突きする場面は、ロケットのように直立不動でぶつかります。

特に、爆笑が起こるのが、チーターを外して地面に激突する場面。

誰もが、チーターにぶつかると思っていたからこそ、その失敗と、まるでギャグマンガのような、地面へのめり込みっぷりに、

「ぶつかっちゃった!?」

「地面に埋まってる!」

「顔つぶれてるー!」

と、大爆笑。

さらに、その影響が強く残る最後の場面でも、母ちゃんの頭を見てまた大爆笑が起こっていました。

この、見るだけでおもしろい絵のコミカルさもまた、この絵本のとてもとても魅力的なところです。

きっと、絶体絶命なピンチのハラハラドキドキ感と、母ちゃんの一生懸命さ、そこにコミカルさがバランスよくブレンドされているからこそ、子ども達が何度見ても夢中になってしまうのだと思います。

二言まとめ

母ちゃんが、一生懸命かつ、コミカルに絶体絶命のピンチを蹴散らしていくのが、たまらなくおもしろい。

ハラハラドキドキしながらも、常に笑いが絶えない、母親の愛情が詰った絵本です。

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