作・絵:スギヤマカナヨ 出版:赤ちゃんとママ社
みんな知ってる歌「どんぐりころころ」。
でも、2番まで歌ってもドングリは山へ帰れません。
それなら、山に帰れるまで歌ってしまいましょう!
あらすじ
どんぐり ころころ どんぶりこ
おいけに はまって さあ たいへん
どじょうが でて きて こんにちは
ぼっちゃん いっしょに あそびましょう
どんぐり ころころ よろこんで
しばらく いっしょに あそんだが
やっぱり おやまが こいしいと
ないては どじょうを こまらせた
どんぐり ころころ ないてたら
おいけの なかまが やってきて
どうしたら おやまに かえれるか
みんなで ちえを だしあった
どんぐり ころころ どっこいしょ
おいけの みんなで かついだよ
なんとか およいで いけの うえ
おひさま きらきら わらってた
どんぐり ころころ いけの ふち
かえるの けろきち おんぶして
しばらく あるいて みた ものの
いけども おやまは みあたらない
歌とどんぐりの冒険はまだまだ続きます。
どんぐりは無事にお山へ帰れるのでしょうか?
『どんぐりころころ~おやまへかえるだいさくせん』の素敵なところ
- みんな知ってる動揺の、誰も知らない続きの歌
- 自然の厳しさが身に染みる、お山に帰るまでの大冒険
- 自然の息吹と力強さを感じる予想外な結末
みんな知ってる動揺の、誰も知らない続きの歌
この絵本のなによりおもしろいところは、童謡「どんぐりころころ」の誰も聞いたことがない、続きの歌を聞くことができるところでしょう。
よく考えると、2番まで歌っても、どんぐりが山に帰りたいと泣いて終わる悲劇的な童謡。
これを聞いたら、なんとかお山に返してあげたいと思うのが人情です。
それを一生懸命叶えようとしてくれるのがこの絵本。
歌の続きを描いて、なんとかどんぐりを山に返してあげようとしていきます。
その長さ、なんと17番まで。
ドジョウたち、池の仲間の協力で、池から出て山を目指します。
これには、どんどん出てくる新しい歌に子どもたちもびっくり。
「えー!カエルも出てきた!」
「また転がっちゃったよ~」
「どこまで続くんだろう!?」
と、よく知っている歌だからこそ、予想外の衝撃を受けていました。
でも、知らない歌詞だけど、リズムはよく知っているからどうしても歌いたいようで、頑張ってリズムを合わせていたのも印象的。
とりあえず最初の「どんぐりころころ♪」は、完璧に合わせ、そこからはごにょごにょ小声になっていくのが、とても微笑ましかったです。
やっぱり、リズムは子どもの体を勝手に動かして、楽しい気分にさせてしまうのでしょうね。
この、みんなよく知っている歌の続きを描くという、馴染み深さと新鮮さが同時に味わえる不思議な感覚とそのおもしろさが、この絵本のとても素敵なところです。
きっと、この歌を最後まで聞いたら、「どんぐりころころ」が楽しい結末に塗り替えられることでしょう。
自然の厳しさが身に染みる、お山に帰るまでの大冒険
そんな、17番まであるどんぐりの山へ帰る旅。
それは大冒険と呼ぶにふさわしい大変なものでした。
だって、17番まであるということは、そんなに簡単に帰れていないということですから・・・。
池の近くにいる時は、まだよかったのです。
池の仲間やカエルが運んでくれますから。
でも、池を離れてからが大変。
なにせドングリは、森のみんなの大好物。
リスにタヌキにカラスなど、ドングリを狙う生き物はたくさんいるのです。
この、池を離れたとたん、童謡の優しい世界から、厳しい食物連鎖の世界に放り込まれるのも、この絵本のおもしろいところでしょう。
リスはドングリを保存用に隠し、タヌキには食べられるけれど、糞として排出され・・・。
と、中々過酷な道を辿るドングリの坊や。
これには子どもたちも、
「リスはドングリ好きだから食べられちゃう!」
「タヌキに食べられちゃったよ!?」
「カラスがお山に連れてってくれるのかな!?」
と、ハラハラドキドキの連続。
まさか、童謡の続き歌で、こんなにシビアな大冒険を見せられるとは思ってもいなかったのでしょう。
ちゃんと、巻末にはドングリを食べる動物一覧も載っていて、自然の中でのドングリの立ち位置もわかるようになっている徹底ぶり。
「へー、クマもドングリ食べるんだ!」
「サルも食べるの!?」
「ドングリって、色んな動物が食べてるんだね」
と、子どもたちも思わず感心していました。
この、童謡から始まったとは思えない、シビアな自然界を生き抜きつつお山に帰ると言う、思っていたのとはだいぶ違う大冒険のハラハラドキドキ感も、この絵本のとてもおもしろいところです。
自然の息吹と力強さを感じる予想外な結末
さて、そんな大冒険の最後の結末は、予想外のものでした。
ぼくも含め、みんなてっきりお山に帰って「めでたしめでたし」となるものだと思っていましたが、そうはならないのも、この絵本のおもしろいところ。
リス、タヌキ、カラスと、続いた難敵でしたが、最後に現れた刺客はぼくたちのとても身近な存在だったのです。
見事につかまってしまうドングリの坊や。
でも、その後の展開が、自然の息吹や力強さを感じる、とても素敵なものになっていました。
さらに、ドングリの坊やから繋がった、命の連鎖も。
童謡から始まり、とても子どもにわかりやすいように、自然の中で生きるドングリの姿や、命の息吹を感じさせてくれる様は、まさに必見と言えるでしょう。
この、ただドングリが山に帰るだけでなく、自然の中でのドングリの生き様とその力強さが、とてもとても伝わってくる予想外の結末も、この絵本の間違いなく素敵なところです。
二言まとめ
みんな知ってる童謡「どんぐりころころ」の続きから始まる、誰も知らないドングリの大冒険にハラハラドキドキさせられる。
童謡の続きとは思えない、厳しい自然の中で生きるドングリのありのままの姿と、力強い生命力を感じられる、歌の絵本です。
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