【絵本】どん(2歳~)

絵本

文:坪内稔典 絵:元永定正 構成:中辻悦子 出版:福音館書店

不思議な形のキャラクター。

いろんな色や形で「どん」と堂々登場します。

その音と、混ざり合う色の変化がとても楽しいナンセンス絵本です。

あらすじ

黄色、青、赤、緑、紫の体をした不思議なキャラクター「どん」。

そんなどんたちが、横一列に並んでいます。

どんたちが、威張り始めると、体が大きくなり、隣の体と重なります。

と、丸と長丸に変化して、コロコロ転がり始めました。

そして、みんな繋がり長ーくなった。

そのまま好き好きと、丸同士が重なり合って違う色に。

次は、とんがり三角になり伸びあがります。

また、威張り始めると、体が大きくなり隣のとんがりと重なります。

と、いろんな色の三角に変わりふわふわと浮かび始め・・・

まるで木のようにいくつかの三角が縦にくっつきました。

そして、好き好きと重なり合う三角たち。

さあ、これまで出てきた「どん」たちが、勢ぞろいで並びます。

並んで並んで、みんなでポーズ。

『どん』の素敵なところ

  • 不思議な形の「どん」にぴったりなキャラクター
  • 重なり合うステンドグラスのような色の変化
  • 形とぴったり合った楽しい音

不思議な形の「どん」にぴったりなキャラクター

この絵本のとても印象的なところは、「どん」というなんとも言葉にしがたいキャラクターでしょう。

大きなスカートに顔だけ着いたような、ほかのところでは見たこともないキャラクター「どん」。

でも、その重厚な顔の雰囲気からか、体の大きさからか、「どん」に妙な納得感があるのが不思議です。

これはどう見ても「どん」だなと。

そんな「どん」は、色とりどりで変幻自在。

基本は、紫、黄、青、赤、緑の5色で、体の大きさや形を自由自在に変えられます。

その姿は、まるでオバケのようにも見えてきます。

威張ると、大きくなり、(おそらく)まん丸に変化もできる不思議な存在。

でも、その楽しい音や、ユーモラスな動きと相まって、妙に頭に残り親近感が湧くのです。

この、「どん」という名前がぴったりすぎる、ユーモラスだけれど、すぐに仲良くなれる不思議な親近感を持ったキャラクターが、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。

重なり合うステンドグラスのような色の変化

ただ、このキャラクターはユーモラスでおもしろいだけではありません。

色の変化という、本能的におもしろい、美しいと思える要素を内包しているのも、とても素敵なところとなっています。

色とりどりの体を持つ「どん」たちですが、実はそのどれもが透過性。

重なり合うと、その部分の色が混ざり合うのです。

これが本当に不思議で美しい。

この重なり合いのすごいところが、丸ごと重なるのではなく、それぞれの形の部分部分が重なるところ。

しかも、それが3層、4層と多重的に起こります。

例えば、スカートの形のような「どん」が5体並ぶ場面では、青の左の隅っこが、隣り合った黄色と混ざり緑、右が赤と混ざり紫に変わっています。

これが威張って大きくなると、赤と黄色が大きくなるので、混ざり合った緑と紫の面積が大きくなり、青の中で緑と紫も混ざり合い黄土色に。

青の中で、緑、紫、黄土色、さらには青の体の端は、ほかの色と混ざっているので違う色という、何層にも重なり合った色の変化が起きるのです。

これが、色の変化とともに、そこに不思議な形が浮かび上がるのも相まって、まるでステンドグラスのようにきれい。

子どもたちも、

「色変わってるよ!」

「緑、紫、茶色、灰色・・・」

「ここもっと重なって違う色になってる!」

と、どんどん変化する色に、驚いたり感動したり。

きっと、原色べた塗りのような絵なのに、重なり合うと混ざり合うという意外性もあるのでしょう。

ただ、そのおかげで、混ざり合った色もくっきりはっきり塗わけられているから、ステンドグラスのように見えるのだと思います。

なにより、混ざりあい、重なり合うおもしろさが、小さい子にもわかりやすい。

この、「どん」の体が重なり合うことで、新たな形や色があらわれるおもしろさも、この絵本のとてもおもしろいところです。

形とぴったり合った楽しい音

さて、見ているだけでも楽しい「どん」ですが、忘れてはいけないのがその絵にぴったりの、これまた楽しい音。

体が大きくなるときは「どんどん どんたち いばってる」。

丸に分裂する時は「ころころ ころん ころころ どん」。

丸が重なり合うときは「すきすき だいすき くっついた」。

というように、リズミカルな音がセットで、「どん」が様々な動きをします。

これが楽しいだけでなく、その形や動きと直感的に結びつき、とても自然に頭の中へ入ってくるのです。

なにより、ほとんどのフレーズで出てくる「どん」が、力強くて楽しい。

聞いていたら「どん!」と、力を込めて、低めの声で言いたくなることでしょう。

この、まるで「ピタゴラスイッチ」などのような、リズミカルかつ、言いたくなるフレーズが盛りだくさんな文章と音も、この絵本のとても楽しいところとなっています。

ぜひ、「どん」を重量感たっぷりに読んでみてください。

楽しさが倍増すること間違いなしですよ。

二言まとめ

不思議なキャラクター「どん」が動くたびに変化する、色や形がおもしろくて美しい。

見ていると一緒に力強く「どん!」と言いたくなってくる、ナンセンス絵本です。

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