作:林木林 絵:高畠那生 出版:くもん出版
ひらがな50音にちなんだ温泉がありました。
それぞれの行ごとにテーマがある楽しい温泉。
さあ、お気に入りの温泉を探しに行こう!
あらすじ
お父さんとお母さん、子ども2人の4人家族が、温泉にやってきました。
入ってすぐにあったのは「あいうえおもしろおはなし温泉」。
あかずきんの湯や、いっすんぼうしの湯など、おとぎ話が温泉になっています。
次は「かきくけこだわり空中温泉」。
かんらんしゃの湯や、ききゅう風呂など、どの温泉も空中に浮いています。
今度は「がぎぐげごくらくがっき温泉」。
音符にお湯がたまったがくふの湯や、弦楽器の演奏を楽しめるげんがくアンサン風呂など、どれもリラックスできそう。
さらに「さしすせそれいけ水中温泉」。
ここへはせんすいかん温泉に乗ってやってきます。
温泉につかりながら水中を散歩できるさかな温泉や、オイルで出来ているしんかい温泉があります。
その次にやってきたのは「ざじずぜぞぞーんさざ波温泉」。
ざとうくじらの潮吹きジェットバスや、じんべえざめのうがいジャグジーなど、生き物の力を借りた温泉が目白押し。
まだまだ続くあいうえおんせん。
50音+α、すべてのひらがなにちなんだ温泉をお楽しみください。
『あいうえおんせん』の素敵なところ
- 50音にちなんだ不思議すぎる温泉たち
- 見れば見るほどおもしろいネタが詰めこまれたページ
- もう一度見に行きたくなる女将からのメッセージ
50音にちなんだ不思議すぎる温泉たち
この絵本のなによりおもしろいところは、50音にちなんだおもしろい温泉の数々でしょう。
なんなら50音でも多いのに、「がぎぐげご」「ぱぴぷぺぽ」など濁音や半濁音も入ってくるので、その数はさらに増えています。
そして、そのどれもがとても個性的。
赤ずきんの湯であれば、オオカミのお腹にたまった湯に入るというなんともブラックジョークのきいたものになっていたり、
浦島太郎の湯では、みんなおじいさんになっています。
観覧車風呂では、客車がバスタブになっていてなかなか怖そう・・・。
潜水艦温泉の操舵室の湯では、運転しながら入浴できます。
こんな風に、そのどれもが常識を破りに破ってくるからおもしろい。
ひとつひとつの温泉を見ているだけで、驚きっぱなしで飽きません。
さらにおもしろいのが、あ行やか行などの行ごとに、テーマが決まっているところ。
これだけたくさんの温泉が出てくると、普通はごちゃごちゃしてしまうところですが、5文字区切りでテーマがあるので、とてもきれいにまとまっているのです。
1行1ページになっているので、それぞれの温泉の関係性もおもしろい。
どこかの湯が他の温泉に繋がっていたり、お互いに関係しあうストーリー性があったりします。
きっと、このおかげですごい数の温泉があるのに、見ていると程よい分量に感じるのでしょう。
一見カオスなようで、見ているととてもきれいにまとまった印象になるから不思議です。
この、ひらがな全文字の用意された、個性的過ぎる温泉に最初から最後まで驚かされ続けるのが、この絵本のとても素敵で楽しいところです。
見れば見るほどおもしろいネタが詰めこまれたページ
そんな温泉を見ているだけでもおもしろいこの絵本ですが、温泉を見ているだけではもったいない。
描きこまれたページの中にも、たくさんの発見やおもしろいものが詰め込まれているのです。
例えば、白雪姫がテーマになっている絵本の湯から、魔女が飛び出し他の風呂人にリンゴを進めていたり、
宇宙のスタッフがいたり、
戻れない温泉で、戻れなかった人の骨が山になっていたり・・・。
他にも、ところ狭しとネタが詰め込まれていて、ネタを見つけない方が難しいくらいです。
さらに、それらのネタの間に、ストーリー性が想像できるのもおもしろい。
前のページで出ていたキャラクターが、のちのページで出てきて、
「さっきのぬりかべ!」
「あの温泉出た後、ここでのんびりしてるのかな?」
など、それぞれのキャラクターの時間経過へ想像を膨らませたり・・・
ページ内での関わり合いに、
「コーヒー牛乳屋さんがいる!」
「この人から買って飲んでるんだ!」
「電気ウナギ混ざってる!」
「誰かしびれてるよー!」
「それを見て驚いてる子もいる!」
と、それぞれのキャラクターの関係性を読み取ったり・・・
そんな語られない部分を、想像するのがとても楽しい要素になっているのです。
この、ただただページを眺めているだけで、おもしろいことが次々見つかり、どんどん想像力が膨らむのも、この絵本のとても素敵なところです。
もう一度見に行きたくなる女将からのメッセージ
こうして、たくさんの温泉と、おもしろいものを発見し続け終わるこの絵本。
ですが、最後にまだおもしろい遊びを残してくれているのが、この絵本のなんともにくいところです。
それが、女将からの手紙。
なんと、おはなし温泉なら「あ・い・う・え・お」それぞれを頭文字にした、5つのものが隠されているというのです。
もちろん、それが全ページに。
これを見たら、もう一度最初から見ないわけにはいきません。
一度目よりも、目を凝らしてよく見ます。
すると、一度目では気付かなかった発見もすることになります。
このループがなんともおもしろい。
さらに、隠し要素なのか、実は全ページに王冠が隠されています。
これもいろんなページをよく見ているうちに、
「あれ?ここにも王冠ある!」
「さっきもあったよね!」
「全部にあるのかな!?」
と、明確に発見が嬉しい要素。
この女将の手紙という、何度も見たくなる仕組みがあることで、他の発見にも繋がり、この絵本がよりおもしろくなる。
そんな、ループする作りがなんとも素敵でおもしろいところとなっています。
ぜひ、じっくりのんびりあいうえ温泉をおたのしみください。
二言まとめ
ひらがな50音にちなんだ、ものすごい数の個性的過ぎる温泉が驚きに満ちていておもしろい。
温泉だけじゃなく、ページ内での発見も同じくらいおもしろい、眺めているだけでとても楽しい温泉ひらがな絵本です。
コメント