作:オリヴィエ・ダンレイ 訳:たなかまや 出版:評論社
家の外は降り積もる雪でまっしろ。
お母さんは赤ちゃんを連れて、雪を見に行くことにしました。
雪の冷たさ、味、匂い、そしてお母さんと家のぬくもりが感じられる絵本です。
あらすじ
暖かな家の中、ママがぼうやのゆりかごを揺らしています。
ぼうやはすやすや眠っています。
ママが扉を開けると、外は雪。
部屋の中に雪が吹き込み、ぼうやは目を開けました。
ママは「ゆき!ゆき!ゆき!」と歌い、ぼうやに外で雪が降っていることを嬉しそうに伝えます。
ぼうやを毛皮でくるみ、ママもコートにマフラーに手袋をすると、ぼうやをおぶり雪の中へ出かけます。
「ゆき!ゆき!ゆき!」とママが歌うと、ぼうやも歌い、2人で雪を眺めました。
雪のにおいをかぎ、雪の音を聞き、雪の味を確かめ、高い高いで雪に触れるぼうや。
雪のトロルを作り、そりで丘を滑り、氷の背中に乗ると、ぼうやはご機嫌おおはしゃぎです。
でも、そんな楽しい時間もそろそろ終わり。
ぼうやはもう寝る時間です。
ママが「ゆき ゆき ゆき」とそっと言うと、ぼうやの口から小さなあくび。
ママとぼうやは暖かな家に帰ります。
ママがぼうやのゆりかごを揺らしています。
ぼうやはすやすや眠っています。
『ゆき!ゆき!ゆき!』の素敵なところ
- ぼうやとともに、五感すべてで楽しむ雪の夜
- 一緒に言いたくなる「ゆき!ゆき!ゆき!」のママの歌
- 楽しく寒い外と、ゆったりと暖かな家
ぼうやとともに、五感すべてで楽しむ雪の夜
この絵本のとても素敵なところは、ママとぼうやが一緒に楽しむ雪の夜でしょう。
雪が降った嬉しさからか、小さなぼうやに雪を見せるため連れ出すママ。
ぼうやをだっこしながら、雪の中で一緒に遊びます。
その中で、
「みてごらん、これが雪」と景色を見せ、
「かいでごらん、雪のにおい」と匂いをかがせ、
「聞いてごらん、雪の音」とじっと音を聞かせ・・・
と、五感で雪を感じさせてくれるママ。
それに対して、ぼうやも、
もぞもぞ伸びをしたり、
いっぱいに息を吸ったり、
じっと息を止めたり・・・
と、ママの呼びかけにかわいく答えます。
そんなぼうやの姿を見ていると、自分も雪の日のことを思い出し、その色や匂い、音、味、冷たさなどが呼び起され、本当に雪の中にいるような感覚に。
この、ママの呼びかけと、五感で雪を感じるぼうやを見ているうち、自分の五感も目を覚ましてくるのが、この絵本のとても素敵なところです。
その景色の美しさと相まって、ママとぼうやと自分の3人で雪の夜を歩いている感覚になることでしょう。
もちろん、雪でトロルを作る様子を見て、自分が雪ダルマを作ったこと、そりで滑る疾走感、雪の上に乗る楽しさと冷たさなど、ぼうやがおおはしゃぎした楽しい遊びの感覚も一緒に。
一緒に言いたくなる「ゆき!ゆき!ゆき!」のママの歌
こうして、ママと一緒に雪遊びを楽しむのですが、その中でママが繰り返し歌う歌があります。
それが、
「ゆき!ゆき!ゆき!」
という、とてもシンプルで雪の降る嬉しさが強く伝わってくる歌です。
ママはこの歌を様々な場面で歌います。
ドアを開け、外の雪を見た時。
雪原に着いた時。
雪遊びを始める時。
そして、ぼうやを寝かせる時・・・。
この歌がとても楽しそうで、つい一緒に言いたくなってしまうのです。
だって、子どもたちは雪が大好きで、この歌にはそんな気持ちが詰まっているから。
「ゆき!ゆき!ゆき!」と歌うママからは、ぼうやを楽しまたいという気持ちだけでなく、ママ自身が雪を楽しみたいという気持ちがあふれ出しているのでしょう。
だから、この絵本の雪遊びは、とてもとても楽しく見えるのだと思います。
この、雪への嬉しさがあふれ出している「ゆき!ゆき!ゆき!」という歌も、この絵本のとても特徴的で楽しく素敵なところです。
読む人によってそのリズムが変わるので、この絵本を見た人ごとにママの歌が違うのもおもしろいところですよね。
楽しく寒い外と、ゆったりと暖かな家
こうして、雪遊びを思いきり楽しむママとぼうや。
でも、その楽しさは、家という暖かな帰る場所があるからこそです。
その家の温かさやありがたさも、雪遊びの楽しさと同じくらい感じられるのも、この絵本のとても素敵なところとなっています。
なぜこの絵本で家の温かさが強く感じられるのか。
それはきっと、家から出かけ、家に帰ってくる構成になっているからなのだと思います。
暖かな暖炉のもと、ぼうやもママもうとうとしている家の中。
そんな寝る前のまどろみのような雰囲気から、この絵本は始まります。
そこから、寒い雪の中に出ての楽しい雪遊び。
そこでの時間は、家での暖かなまどろみとは真逆で、寒いけれど刺激的で楽しい時間。
でも、その楽しさだけで終わらず、たくさん遊んだ後は、暖かな家へと帰ってくるのです。
そして、また暖かなまどろみの中へ。
暖かなまどろみの中、外の暗さと寒さを感じながら終わります。
きっと家に帰ってきたとき、「あー楽しかった!」という、楽しい時間が終わったのは残念だけど、どこか安心する感覚を味わえることでしょう。
その感覚は、まるで本当に雪遊びをし、指先が氷のように冷たくなって帰ってきたときの家の温かさ。
「ただいまー!」と、全身びしょ濡れで家に帰りついた時の安心感に似ているかもしれません。
この、雪遊びの楽しさと合わせて、家という暖かな安心感を味わえるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
ママとぼうやの五感を思いきり使った楽しそうな雪遊びに、自分も雪遊びをしている気分になれる。
雪遊びの楽しさと同じくらい、帰ってくる家の温かさとありがたさも感じられる雪遊び絵本です。
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