【絵本】ゆきだま(3歳~)

絵本

文:キム・ギジョン 絵:ムン・ジョンフン 訳:おおたけきよみ 出版:ほるぷ出版

学校へ行く途中、小さな雪玉を作り転がすリス。

転がしていくにつれ、とんどん大きくなっていきます。

けれど、ついに学校が見えてきたその時、雪玉が坂道を転がり始め・・・。

あらすじ

ある冬の日の朝。

リスのトットルが家のドアを開けると、外は一面まっしろな雪景色でした。

トットルは嬉しくなり、げんこつくらいの大きさに雪を丸めると、その雪玉を転がしながら学校へ向かうことにしました。

どんどん雪玉は大きく、重くなりますが、トットルは頑張って雪玉を転がし続けました。

雪玉がトットルの背丈ほどになった時、ちょうど上り坂に差し掛かりました。

トットルが精いっぱい押しても、雪玉はびくともしません。

ちょうどその場所は、ウサギのミミの家の前。

ミミも一緒に押してくれることになり、雪玉はまた動き出しました。

けれど、どんどん大きくなる雪玉は、また動かなくなってしまいました。

そこへ学校へ行く途中のクマのトンドンが通りがかり、一緒に押してくれることに。

ついに学校が見える坂の上まで、雪玉を押してくることができました。

そのころには、雪玉も3人の背丈より大きな雪玉に。

大喜びで叫び声をあげる3人。

ところが、その時です。

雪玉が少しずつ動き始め、学校へ続く坂道を転がり始めたではありませんか。

雪玉は勢いよく転がり、どんどん大きくなっていきます。

さらに、町の人や家を巻き込みながら大きく大きく。

そうして転がり、学校よりも大きくなった雪玉は、学校の目の前でやっと止まったのでした。

驚き途方にくれる人々。

こんな大きな雪玉どうしたらいいかわかりません。

そこで、トットルがいいことを思いつきました。

それをみんなに伝えると、みんなも乗り気。

そして、町中の人が雪玉に集まって・・・。

いったいこの雪玉をどうするというのでしょうか?

『ゆきだま』の素敵なところ

  • どんどん大きくなっていく雪玉のおもしろさ
  • コントロール不能な雪玉にハラハラドキドキ

どんどん大きくなっていく雪玉のおもしろさ

この絵本の一番の見どころは、転がすにつれどんどん大きくなっていく雪玉でしょう。

最初は、げんこつくらいの大きさだった雪玉が、転がすにつれトットルの背丈と同じくらいに。

さらに友だちの力を借りて転がすと、クマの子どもよりも大きくなります。

1ページずつ見ていると、そこまで大きさは変わりませんが、最初のページを見返すと、その大きさの違いは一目瞭然。

何倍にも大きくなっていることに驚きます。

さらに、雪玉の大きさだけじゃなく、転がす音が変化していくのも見逃せないポイントです。

最初は、「ころころ ころころ」と転がしていた雪玉ですが、大きくなるにつれ「ころりん ころりん」、「ごろん ごろん」と、音が変化していきます。

この音の変化が、雪玉の大きさだけでなく、その重さの変化も感じさせてくれるのです。

この音とトットルの押し方の変化で、雪玉がどんどん重くなり、押すの時の大変さを思い出させてくれ、見ている子どもにも思わず力が入ってしまうことでしょう。

雪玉を転がしていくことで、それがどんどん大きくなっていくという、シンプルだけれどおもしろい現象を、絵と音で存分に味あわせてくれるのが、この絵本のとても素敵で楽しいところです。

コントロール不能な雪玉にハラハラドキドキ

けれど、ただ楽しいだけでは終わりません。

大きな雪玉にお約束の展開が、期待を裏切らず待っています。

そう、坂道を転がりながらどんどん大きくなるのです。

これはもうインディージョーンズから続くお約束。

坂道の頂上で、「やったー!」と3人が喜ぶ場面を見て、勘のいい子はすでに不穏な空気に気付きます。

「転がったら大変じゃない?」

「転がっていっちゃいそう・・・」

「大丈夫かなぁ・・・?」

など、不安な声があがります。

そんな中、ぐらつき始め、動き出す雪玉。

「あー!止めて止めて!」

「学校壊しちゃうよ!」

「だめー!」

と、予想通りの展開だけど、子どもたちは大慌て。

どんどん大きくなり見上げるほどになっていく雪玉。

巻き込まれる町の人。

臨場感あふれる絵で、本当にインディージョーンズのごとく、巨大雪玉が転がっていきます。

これにハラハラドキドキしないはずがありません。

どこまで転がるのか?

学校は大丈夫なのか?

町の人と家は無事なのか?

様々なことにハラハラドキドキしながらも、見守るしかありません。

この、人の手を離れた雪玉の収拾がつかなくなるお約束な展開も、雪玉ならではのとてもおもしろいところです。

雪玉の素敵で楽しい活用法

そんな雪玉は、間一髪学校の前で止まります。

とはいえ、家をたくさん壊すなど、すでにだいぶ被害を出しています。

なにより、大きすぎてどうしようもありません。

しかし、ここでトットルが素敵な提案をすることで、物語の風向きが一気に変わるのがおもしろい。

困り顔だった町の人も、この提案を聞いた途端笑顔になり、一気に明るい雰囲気に。

この優しく楽しい世界観も、この絵本の大きな魅力の1つです。

力を合わせ、巨大雪玉を改造していくみんな。

そして、完成したものに、

「すごい!」

「楽しそう!」

「やってみたい!」

と、絵本の中のみんなも、絵本を見ている子どもたちも大喜び。

すぐにでも絵本の中に飛び込んでしまいそうな勢いで、目をキラキラさせていました。

この、子どもたちが喜ぶこと間違いなしの、素敵な巨大雪玉活用法も、この絵本のとても楽しいところです。

二言まとめ

転がしていくにつれ、どんどん大きくなっていく雪玉の変化が、シンプルにおもしろい。

巨大雪玉から逃げるお約束の展開まで忘れない、雪玉のおもしろさを120%楽しめる絵本です。

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