文:キム・ギジョン 絵:ムン・ジョンフン 訳:おおたけきよみ 出版:ほるぷ出版
学校へ行く途中、小さな雪玉を作り転がすリス。
転がしていくにつれ、とんどん大きくなっていきます。
けれど、ついに学校が見えてきたその時、雪玉が坂道を転がり始め・・・。
あらすじ
ある冬の日の朝。
リスのトットルが家のドアを開けると、外は一面まっしろな雪景色でした。
トットルは嬉しくなり、げんこつくらいの大きさに雪を丸めると、その雪玉を転がしながら学校へ向かうことにしました。
どんどん雪玉は大きく、重くなりますが、トットルは頑張って雪玉を転がし続けました。
雪玉がトットルの背丈ほどになった時、ちょうど上り坂に差し掛かりました。
トットルが精いっぱい押しても、雪玉はびくともしません。
ちょうどその場所は、ウサギのミミの家の前。
ミミも一緒に押してくれることになり、雪玉はまた動き出しました。
けれど、どんどん大きくなる雪玉は、また動かなくなってしまいました。
そこへ学校へ行く途中のクマのトンドンが通りがかり、一緒に押してくれることに。
ついに学校が見える坂の上まで、雪玉を押してくることができました。
そのころには、雪玉も3人の背丈より大きな雪玉に。
大喜びで叫び声をあげる3人。
ところが、その時です。
雪玉が少しずつ動き始め、学校へ続く坂道を転がり始めたではありませんか。
雪玉は勢いよく転がり、どんどん大きくなっていきます。
さらに、町の人や家を巻き込みながら大きく大きく。
そうして転がり、学校よりも大きくなった雪玉は、学校の目の前でやっと止まったのでした。
驚き途方にくれる人々。
こんな大きな雪玉どうしたらいいかわかりません。
そこで、トットルがいいことを思いつきました。
それをみんなに伝えると、みんなも乗り気。
そして、町中の人が雪玉に集まって・・・。
いったいこの雪玉をどうするというのでしょうか?
『ゆきだま』の素敵なところ
- どんどん大きくなっていく雪玉のおもしろさ
- コントロール不能な雪玉にハラハラドキドキ
- 雪玉の素敵で楽しい活用法
どんどん大きくなっていく雪玉のおもしろさ
この絵本の一番の見どころは、転がすにつれどんどん大きくなっていく雪玉でしょう。
最初は、げんこつくらいの大きさだった雪玉が、転がすにつれトットルの背丈と同じくらいに。
さらに友だちの力を借りて転がすと、クマの子どもよりも大きくなります。
1ページずつ見ていると、そこまで大きさは変わりませんが、最初のページを見返すと、その大きさの違いは一目瞭然。
何倍にも大きくなっていることに驚きます。
さらに、雪玉の大きさだけじゃなく、転がす音が変化していくのも見逃せないポイントです。
最初は、「ころころ ころころ」と転がしていた雪玉ですが、大きくなるにつれ「ころりん ころりん」、「ごろん ごろん」と、音が変化していきます。
この音の変化が、雪玉の大きさだけでなく、その重さの変化も感じさせてくれるのです。
この音とトットルの押し方の変化で、雪玉がどんどん重くなり、押すの時の大変さを思い出させてくれ、見ている子どもにも思わず力が入ってしまうことでしょう。
雪玉を転がしていくことで、それがどんどん大きくなっていくという、シンプルだけれどおもしろい現象を、絵と音で存分に味あわせてくれるのが、この絵本のとても素敵で楽しいところです。
コントロール不能な雪玉にハラハラドキドキ
けれど、ただ楽しいだけでは終わりません。
大きな雪玉にお約束の展開が、期待を裏切らず待っています。
そう、坂道を転がりながらどんどん大きくなるのです。
これはもうインディージョーンズから続くお約束。
坂道の頂上で、「やったー!」と3人が喜ぶ場面を見て、勘のいい子はすでに不穏な空気に気付きます。
「転がったら大変じゃない?」
「転がっていっちゃいそう・・・」
「大丈夫かなぁ・・・?」
など、不安な声があがります。
そんな中、ぐらつき始め、動き出す雪玉。
「あー!止めて止めて!」
「学校壊しちゃうよ!」
「だめー!」
と、予想通りの展開だけど、子どもたちは大慌て。
どんどん大きくなり見上げるほどになっていく雪玉。
巻き込まれる町の人。
臨場感あふれる絵で、本当にインディージョーンズのごとく、巨大雪玉が転がっていきます。
これにハラハラドキドキしないはずがありません。
どこまで転がるのか?
学校は大丈夫なのか?
町の人と家は無事なのか?
様々なことにハラハラドキドキしながらも、見守るしかありません。
この、人の手を離れた雪玉の収拾がつかなくなるお約束な展開も、雪玉ならではのとてもおもしろいところです。
雪玉の素敵で楽しい活用法
そんな雪玉は、間一髪学校の前で止まります。
とはいえ、家をたくさん壊すなど、すでにだいぶ被害を出しています。
なにより、大きすぎてどうしようもありません。
しかし、ここでトットルが素敵な提案をすることで、物語の風向きが一気に変わるのがおもしろい。
困り顔だった町の人も、この提案を聞いた途端笑顔になり、一気に明るい雰囲気に。
この優しく楽しい世界観も、この絵本の大きな魅力の1つです。
力を合わせ、巨大雪玉を改造していくみんな。
そして、完成したものに、
「すごい!」
「楽しそう!」
「やってみたい!」
と、絵本の中のみんなも、絵本を見ている子どもたちも大喜び。
すぐにでも絵本の中に飛び込んでしまいそうな勢いで、目をキラキラさせていました。
この、子どもたちが喜ぶこと間違いなしの、素敵な巨大雪玉活用法も、この絵本のとても楽しいところです。
二言まとめ
転がしていくにつれ、どんどん大きくなっていく雪玉の変化が、シンプルにおもしろい。
巨大雪玉から逃げるお約束の展開まで忘れない、雪玉のおもしろさを120%楽しめる絵本です。
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