【絵本】オリオンとクラヤーミ(4歳~)

絵本

作・絵:エマ・ヤーレット 訳:たわらまち 出版:主婦の友社

暗闇が怖い男の子。

そんな男の子のもとに、ある日夜空が降りてきました。

そして、2人で暗闇探検に出かけてみると・・・。

あらすじ

あるところにオリオンという男の子が住んでいました。

オリオンはとても怖がり。

中でも、1番怖いのが暗いところでした。

その怖さを克服するため、いろいろやっては見たのですが、どれも効き目はありません。

そして、今日もまた寝る時間がやってきてしまったのでした。

ベッドに行き、オバケが来ないよう見張っていましたが、部屋はどんどん暗くなっていきます。

オリオンはついに我慢できなくなり、真っ暗な天窓に向かって叫びました。

「怪しい音も、おばけも、真っ暗な夜もどっか行け!」

と。

すると、不思議なことが起こりました。

天窓から見える夜空が生き物のように見えたかと思うと、人のような形になり、部屋へと入ってきたのです。

こんなに怖いことはありません。

でも、オリオンはママにいつも、

「どんなお客様にも礼儀正しく」

と、言われていることを思い出し、自己紹介することに。

それを聞いた不思議な生き物は、クラヤーミと名乗り2人は握手を交わしたのでした。

クラヤーミはオリオンを夜の街へ冒険に行こうと誘いました。

もちろん、オリオンは怖くて断ろうとしました。

でも、不思議なことにクラヤーミを見ていても、怖くありません。

そこで、オリオンはクラヤーミについていってみることにしました。

まずは、家の中の暗いところ。

タンスの中やベッドの下、水道管の中や地下室を探検します。

すると、怖いどころかとっても楽しい。

けれど、やっぱり外に出るのは怖いオリオン。

だって、変な音がたくさん聞こえてくるのですから。

しかし、クラヤーミと一緒なので、オリオンは勇気を出して夜の街へ出てみることにしました。

するとどうでしょう。

音の正体は、いびき、木の揺れ、フクロウの鳴き声、冷蔵庫の駆動音など、どれも怖いものではありませんでした。

オリオンは、すっかり夜の街の楽しさに夢中です。

ただ、オリオンにはまだ一つ怖い場所がありました。

そこは世界一暗い場所。

そう、宇宙です。

それを聞いたクラヤーミは、オリオンの手をしっかり握ると、夜空に向かって駆け出して・・・

宇宙までオリオンを連れてきてくれました。

そこは、最高に真っ暗でしたが、オリオンはもう怖くありませんでした。

そして、クラヤーミとオリオンは友だちになりました。

だけど、あっという間に時は過ぎ、家に帰るころには朝日が昇り始めていました。

明るくなるにつれ、クラヤーミの体は透けていきます。

せっかく友だちになった2人は、このままお別れとなってしまうのでしょうか?

『オリオンとクラヤーミ』の素敵なところ

  • とても共感できる暗闇が怖い気持ち
  • クラヤーミとの楽しい夜
  • 大切な場面で使われる動きのある仕掛け

とても共感できる暗闇が怖い気持ち

この絵本でまず感じるのは暗闇が怖いことへの共感でしょう。

人が本能的に怖がる暗闇。

そこを怖いと思うのは当然です。

そんな暗闇への恐怖を、オリオンは体現して見せてくれます。

外から聞こえる「ガサガサ」「ゴーゴー」などの謎の音。

タンスの中にはモンスターがいるのでは?

ベッドの下にはヘビがいるかもしれない。

水道管から生き物が出てくるかも・・・。

そんな、暗闇が怖いときに想像するようなことを、オリオンは目の前で想像して見せてくれるのです。

これには子どもたちも、

「いそうだよね・・・」

「私も思ったことある」

「だから、絶対開けないんだ」

「ぼくは暗いの大好き!」

と、共感したり強がってみたり。

この、オリオンが感じる暗闇の怖さを丁寧に描くことで、その怖さにとても共感できるのが、この絵本のとても素敵なところです。

この共感があるからこそ、ここからの怖さを克服する物語により入り込めるのですから。

クラヤーミとの楽しい夜

こんな風に、暗闇が怖いオリオンですが、ある日転機が訪れます。

それがクラヤーミとの出会い。

暗闇に向かい「どっか行け」と言ったら、反対にやってきてしまったのです。

その登場からとても神秘的なクラヤーミ。

夜空が形を成して部屋の入ってくるだけでも神秘的なのに、その体の美しさもとても神秘的。

からの中に星や星雲が見え、流れ星まで降っています。

見ているだけで吸い込まれそうというのは、まさにこのこと。

目が釘付けになること間違いなしでしょう。

でも、本当に素敵なのはここからで、クラヤーミと一緒に暗闇冒険へ出かけるのです。

これまで怖いと思っていたところを、実際に行って確かめてみるという大冒険。

けれど、暗闇名人のクラヤーミと一緒だと、不思議なことにどれも楽しくて仕方ありません。

ベッドの下にクラヤーミが入りトランポリンのように遊んだり、水道管に釣り糸を垂らしたり、地下室で影絵をしたり。

暗闇をすっかり遊び場にしてしまいます。

外の変な音たちも、実際に見てみれば、どれも知っているものばかり。

怖いと思っている時は、勇気を振り絞って確かめてみることの大切さが、オリオンの姿を通して伝わってきます。

ただ、これだけで終わらないのが、この絵本のとてもとても神秘的でおもしろくて、クラヤーミと一緒だからこそできるところです。

これまでの冒険は、勇気を出せば1人でもできます。

でも、最後に確認しに行くのはなんと宇宙。

クラヤーミは、軽々と宇宙まで飛び上がってしまうのです。

これには子どもたちも、

「宇宙まで行っちゃうの!?」

「空も飛べるんだ!」

「地球だ!」

と、びっくり仰天。

まさかの展開に、すごい盛り上がりを見せていました。

もちろんそこは、最高に暗いけれど、最高に楽しい空間。

もう、怖い暗闇はどこにもありません。

この、クラヤーミと怖いものを一つずつ確認していく冒険も、この絵本のとても素敵なところです。

ぜひ、暗闇が怖い想像力豊かな子にはこの絵本を読んであげてください。

きっと、オリオンの姿と、クラヤーミの優しさに勇気をもらえると思いますよ。

大切な場面で使われる動きのある仕掛け

さて、そんなこの絵本ですが、2か所だけある仕掛けが使われています。

それが、クラヤーミの腕が動くというもの。

この仕掛けは、この絵本の中でとても大切な2か所に使われています。

1つ目は、オリオンとクラヤーミが出会う場面。

怖がりつつもオリオンが自己紹介し手を差し出します。

ここで、仕掛けを使いクラヤーミの腕を動かすと、腕がオリオンの方に伸び、握手をする形になるのです。

さらに動かした腕の後ろから、クラヤーミの自己紹介をするセリフが現れます。

こうして、オリオンとクラヤーミの出会いがとてもドラマチックに演出されるのです。

2つ目は、オリオンとクラヤーミの別れを予感させる場面。

朝日が昇り、クラヤーミの体が薄くなる中、オリオンはクラヤーミにだっこされています。

そこで、オリオンはクラヤーミに、この冒険が楽しかったこと、また会いたいことを伝えます。

腕を開き、話を聞いているクラヤーミ。

その腕を動かすと、オリオンを抱きしめる形なるのです。

そして、とても素敵で思わず微笑んでうセリフが現れます。

この、とても大切な2つの場面での仕掛けを使ったドラマチックな演出も、とても素敵なところです。

どちらの場面も、クラヤーミの返答が読めないドキドキ感と、隠されていたセリフを読んだ時の安心感をより強く感じさせてくれることでしょう。

二言まとめ

怖がりな男の子と、クラヤーミという神秘的な生き物の出会いが、最高に不思議で素敵でおもしろい。

暗闇の正体を探りに宇宙まで行ってしまう、オリオンとクラヤーミの姿を通して、暗闇へ向き合う勇気をくれる絵本です。

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