【絵本】木はいいなあ(3歳~)

絵本

作:ユードリイ 絵:シーモント 訳:さいおんじさちこ 出版:偕成社

木はいいなあ。

木陰にもなるし、遊び場にもなる。

それに家やみんなを守ってくれる。

木はいいなあ。

あらすじ

木がたくさんあるのはいいなあ。

空を隠すくらいたくさんの木。

木は色々なところに生え、たくさん生えると森になる。

でも、一本だけの木でもいい。

秋になり葉っぱが落ちると、落ち葉遊びができる。

落ち葉を集めて焚火をしてもいい。

木には幹と枝があり、木登りもできる。

もしそれがリンゴの木なら、リンゴを取って食べられる。

イヌに追いかけられたネコの逃げ場にもなるし、小鳥の住処にもなるし、木からとれた棒で絵を描くこともできる。

木にはブランコもつけられるし、花かごを吊るしておけるし、畑仕事の休憩にくわを立てかけることもできる。

木は木陰を作ってくれ、みんなを一休みさせてくれる。

家のそばに大きな木があると、木陰で家を涼しくしてくれたり、嵐から守ってくれる。

だから、木を植えるといい。

だって、自分で木を植えたら・・・。

『木はいいなあ』の素敵なところ

  • 木のいいところが親しみ深く丁寧に描かれる
  • 描かれている木がとても身近
  • 見たら木を植えてみたくなる

木のいいところが親しみ深く丁寧に描かれる

この絵本のとても素敵なところは、木のいいところがひとつひとつ丁寧に描かれていることでしょう。

たくさんの木、一本だけの木、家の近くにある木、公園にあるような木・・・。

色々な木の、様々ないいところが描かれます。

さらに素敵なのは、そのいいところを伝える言葉がまったく気取っていない、とても親しみ深いものであることです。

「木がたくさんあるのはいいなあ。木が空を隠しているよ。」

「木には幹と枝がある。枝に登ると、遠くの方が見えるよ。枝に座って、じっと考えることもできるし、海賊ごっこもできる。」

こんな風に、自分たちが「木はいいなあ」と思った時、頭に浮かんでくるような言葉や感想が、そのまま絵本になっているのです。

だからこそ、絵本の中で語られる木のよさに、自然と共感できるのでしょう。

「夏も涼しいよね~」

「木の上からだと遠くまで見えて気持ちいい!」

「落ち葉遊び楽しいよね!」

と、子どもたちからも共感の声。

自分たちが実際に体験し感じたことと、絵本の中の言葉がリンクするのでしょう。

とても実感をともなった言葉が出てきていました。

この、飾らないけれど、とてもとても丁寧に、木のいいところをたくさん描き出してくれるのが、この絵本のとても素敵で共感できるところです。

描かれている木がとても身近

こうして、たくさん語られる木のいいところですが、そこで描かれている木が、どれも身近で子どもたちに伝わりやすいものとなっているのも、素敵なところ。

木への賛美を描くとき、どうしてもスケールが大きくなりがちです。

地球規模だったり、生命のサイクルだったり・・・。

けれど、この絵本で描かれる木は、どれも人に近いものばかり。

たった一本だけ生えた木や、子どもの遊び場になる木、釣りをしている川に生えた木、家のそばに生えている木・・・。

どれも、人の暮らしの近くにあることが自然と感じられるものばかりなのです。

だから、描かれる木がどれも見たことのあるもののように思えてきます。

「あの公園にこんな木あるなあ」

「あの木登りした木みたいだなあ」

「キャンプで行った森みたい」

などなど、遠い世界のものではなく、自分と地続きの木だと感じられるものばかり。

そんな身近な木のいいところを語られたら、そりゃ「木はいいなあ」と思ってしまうことでしょう。

この、登場する木がどれも身近なことで、心からしみじみと「木はいいなあ」と思えるところも、この絵本のとても素敵で、木のことがもっと好きになってしまうところです。

見たら木を植えてみたくなる

さて、こうして色々な木のいいところを見てきたこの絵本。

最後は、自分の木を植える場面で終わります。

この終わり方が本当に素敵。

まず、自分の植えた木が大きくなった時、これまでこの絵本で見てきた「木はいいなあ」が、自分の木で起こるというワクワク感がたまりません。

「ブランコをつけようか」

「木陰でお弁当を食べようか」

「自分の秘密基地にしようか」

などなど、夢がどんどん膨らみます。

もう一つ素敵なのが、自分が木を植えたことで、それを見た他の人も木を植えたくなるという、木が増えていく流れができていることです。

木を植えた人が、自分の木を他の人に見せ、その人も木を植えたくなるという流れ。

そもそも、この絵本を見た人が自分の木を植えてみたくなる流れ。

その流れがどれも、世界の木を増やす流れに繋がっていくのです。

この、身近なワクワク感から木を植えたくなって、それが知らないうちに世界の木を増やしているという、楽しみながら好循環を生む流れが仕掛けられているのも、この絵本のとても素敵で壮大なところです。

二言まとめ

身近に生える様々な木の色々なよさが、等身大で丁寧に描き出されている。

見たら、心からしみじみと「木はいいなあ」と、木のよさを再確認できる心地よい絵本です。

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