パパ、ちょっとまって!(3歳~,絵本,パパ)

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作:グニッラ=ベリィストロム 訳:やまのうちきよこ 出版:偕成社

忙しい朝、男の子は保育園へ行く支度をしています。

でも、なにかするたび他のことを始めてしまい、中々支度は進みません。

パパに呼ばれるたび、「ちょっと待って」という男の子。

けれど、時間ギリギリになると・・・

目次

あらすじ

ある日、男の子アルフォンスとパパが朝の支度をしていました。

パパは朝食の準備をしていて、アルフォンスは保育園へ行く支度をしています。

6時

アルフォンスは着替え終わると、人形のリーサに服を着せていました。

すると、パパに呼ばれたので「はあい、ちょっと待って・・・」と返します。

6時3分

アルフォンスは人形のリーサをおもちゃ棚に座らせると、おもちゃの車のタイヤを見つけました。ずっと探していたタイヤです。すぐにアルフォンスは、タイヤを直し始めました。

すると、パパに呼ばれたので「はあい、ちょっと待って・・・」と返します。

6時20分

アルフォンスは自動車を直し終わり棚に戻すと、新しい動物の絵本を見つけました。アルフォンスはどうしても読んでみたくなり、本を開いてしまいます。

すると、パパに呼ばれたので「はあい、ちょっと待って・・・」と返します。

6時半

アルフォンスが急いでページをめくったので本のページが破れてしまいました。テープでページを直そうとすると、パパに呼ばれました。

アルフォンスはやっぱり「はあい、ちょっと待って・・・」と返します。

7時15分前

アルフォンスはテープを大急ぎで引っ張ったせいで、テープがベタベタにくっついてしまいました。なんとか敗れたページを直すと、パパに新聞を持っていかないといけないことを思い出しました。

すると、パパが大きな声で呼びました。

アルフォンスは「はあい、ちょっと待って・・・」と返します。

7時12分前

郵便受けから新聞をとってみると消防士の大きな写真が載っていたので、アルフォンスは将来消防士になりたいと思いました。

その時、パパが「アリフォンス!」と叫びました。アルフォンスは「はあい、ちょっと待って・・・」と言いながら、急いで台所に向かいました。

パパに新聞を渡すとお礼を言ってくれ、いつもの優しいパパに戻りました。けれど、アルフォンスが食べずに遊び始めたのを見逃さず、注意されてしまいました。

その後、アルフォンスが急いだこと急いだこと。

すぐに朝食を食べ終え、お皿を流しへ運び、口を拭き、歯を磨いて、道具をカバンに詰め、上着を着ると・・・

ちょうど7時。

アルフォンスは出かける時間にすべて間に合わせたのです。

支度ができたアルフォンスはパパを呼びました。けれど、返事がありません。家中を探し回ってもパパの姿は見えません。そこで、台所に戻ってみると・・・

おしまい!

『パパ、ちょっとまって!』の素敵なところ

  • 忙しい朝につい他のことをしてしまう子どもの事情
  • 時計が読めるとよりすごさがわかる、アルフォンスの時間調整力
  • 思わず笑顔になってしまうパパと息子の微笑ましい結末

忙しい朝につい他のことをしてしまう子どもの事情

この絵本のとても楽しいところは、朝の支度がなかなか進まないアルフォンスの姿でしょう。

なにかするたび、他に興味の湧くこと見つけてしまうアルフォンス。人形を片付けたら、自動車の修理を始め、修理が終わったら本を見つけ・・・と、着替えが終わってから全然支度が進みません。

朝食の準備をしているパパは定期的にアルフォンスへ急ぐよう伝えますが返事は毎回、

「はあい、ちょっと待って!」

大人から見たら何度聞いたかわからない、子どもから見たら何度言ったかわからない、とても聞き馴染みのある言葉に感じることでしょう。

この絵本の素敵なところは、「はあい、ちょっと待って!」の裏にある、子ども事情をとてもリアルに伝えてくれるところにあります。

「ちょっと待って!」と言われると「早くしなさい!」と言いたくなりますが、子どもにだって事情があるのです。

ずっと探していたタイヤが見つかった

新しい絵本を見つけてしまった

自分の将来について思い描いていた

忙しい朝にはじっくり見ることができない子ども事情を、この絵本はアルフォンスの姿を通してじっくりと見せてくれるのです。子どもたちも自分のことを代弁してくれているようなアルフォンスの姿に、

やることいっぱいあるんだよ~

私も「ちょっと待って!」ってよく言ってる!

ちょっと待ってよ~

と共感の嵐。みんなアルフォンスの味方だったのがとてもおもしろい光景でした。

この、朝の時間親子で行われる「さっさとしなさい」「ちょっと待って」の応酬の裏にある、子どもがさっさとできない事情をアルフォンスの姿を通してありのままに伝えてくれるところが、この絵本のとても素敵なところです。

見たらきっと、子どもに「ちょっと待って」と言われた時、なにをしているのかこっそり見に行きたくなりますよ。

時計が読めるとよりすごさがわかる、アルフォンスの時間調整力

「ちょっと待って」となかなか支度が進まないアルフォンスですが、ギリギリになるとすごい力を発揮します。

着替えしかしていない状態で、出かける時間まで残り12分。ですが、朝食、歯磨き、荷物の支度・・・と、すべて12分で終わらせて、7時きっかりに準備を終えてしまうのです。このアルフォンスの手際のよさには子どもたちもびっくり。

終わっちゃった!

アルフォンスはっや!

とアルフォンスの別人のような姿と準備が終わった後の満足そうな表情に、思わず笑ってしまいます。ここまでマイペースだったからこそのギャップがとてもおもしろいのです。

現実の子どもたちも、「絶対間に合わない」と思っていたら、普通に間に合わせてきて驚くことありますよね~。やる気スイッチが入った子どもの行動力とスピード感ってすごい。

また、この絵本では場面の区切りに時計と時間が使われていて、時計を読める子がこの絵本を見るとさらにおもしろさが加速します。

6時から始まり、場面が切り替わるごとに7時ヘ向かい進んでいく時間。時計が進むことでどれくらい時間が経っているのか具体的にわかります。時計が読めなかったり時間の感覚が薄くても、時間の経過が感じられておもしろいのですが、時間の感覚が身についていると、そのおもしろさが爆増します。

着替えをしたあと、自動車の修理を始めるまでに3分しか経っていないのを見て、

まだ、ちょっとしか経ってないじゃん!

とアルフォンスをかばったり、ご飯ができてから20分以上経ってしまっているのを見て、

流石にいかないと怒られちゃうよ・・・

と心配したりと時間の感覚があるからこそ、物語がより立体的に見えてくるのです。

7時が近づいてきた時に、時間の文字表記が「7時15分前」「7時12分前」と、カウントダウン式に変わるのもおもしろいポイントで残り時間が少ないことがさり気なく伝わってきます。「12分しかない」という時間感覚を持っている子には、最後の場面で見せたアルフォンスの支度の速さはより鮮明に映ることでしょう。

この、なんだかんだで時間に間に合わせてしまうアルフォンスの時間調整力のすごさと、時計が読めたり時間の感覚が身についているとアルフォンスの速さがより伝わる、要所要所に描かれた時計を描いておくというおもしろい仕掛けも、この絵本のとても感心してしまうところです。

思わず笑顔になってしまうパパと息子の微笑ましい結末

すごいスピードで支度を終わらせ時間に間に合わせたアルフォンス。ですが、出かける時間になっても、パパから返事がありません。この、アルフォンスが待つ側になるという、立場が真逆になる結末もこの絵本のとてもおもしろいところとなっています。

あんなにアルフォンスを急かして声も荒げていたパパが、やってこないという緊急事態。台所で見つけたパパは、まるでアルフォンスのようになっていました。これだけでも、

も~パパったら~

子どもみたいだね~

と、子どもたちが笑ってしまうくらい十分おもしろい結末。ですが、このおもしろい結末に親子の絆や信頼を感じられるやり取りを織り込んでいるのが、この作者のとても素敵なところだなぁと思うのです。

子どものようなパパの姿に、アルフォンスは大人のような言葉をかけます。それに対するパパの茶目っ気たっぷりな返答からは、普段から当たり前のように仲良く遊んでいる姿が頭に浮かびます。

一見、朝の忙しい時間に対する大人対子どもという構図に見えますが、最後の結末を見るとそんな小さな枠に収まらない、親子のありのままの関係性を描いた絵本なのだと思えます。

この、親子の立場が逆転してしまう意外で笑える結末と、親子の間で交わされる遊び心と愛情がたっぷり詰まったやり取りの微笑ましさも、この絵本のとても素敵なところです。

こんな余裕のあるパパでいたいなぁ。

二言まとめ

忙しい朝に「ちょっと待って!」と、やりたいことが次々出てくるアルフォンスの姿と心情にとても共感できる。

まさかの時間に間に合ってしまうアルフォンスと、親子の立場が逆転する最後の場面に笑ってしまう、父子の絆が感じられる優しい絵本です。

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登る保育士ホイクライマー
保育士
絵本大好きなクライミングが趣味の保育士/保育士歴12年/クライミング歴10年
年間200冊以上読み聞かせをしてきた経験を元に、絵本の紹介をしています。
専門書や学術書を読むのも好き!
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