ほしをもったひめ(5歳~)

絵本

文:八百板洋子 絵:小沢さかえ 出版:福音館書店

体のどこかに星を持った姫がいた。

姫と結婚する条件は、どこに星があるかを言い当てること。

でも、失敗すれば羊にされてしまいます。

これに挑む、貧しい若者と姫の昔話です。

あらすじ

昔あるところに、お城がありました。

そこには年老いた王様と、カリーナ姫という美しい姫が住んでいました。

カリーナ姫が18歳を迎えた時、王様は国中にお触れを出しました。

それは「カリーナ姫の持っている星がどこにあるか言い当てたものに、姫と国の半分を譲る」

というものでした。

しかし、「言い当てられなかったら、羊にしてしまう」とも言いました。

お城には次々と挑戦者が現れましたが、誰一人言い当てることは出来ず、城の周りは羊で埋め尽くされていきました。

ある日、貧しい羊飼いの若者が城にやってきました。

カリーナ姫にあると若者は仕立て屋だと名乗りました。

若者はカリーナ姫に言いました。

「この世に一つしかない花嫁衣裳を作って差し上げたい」と。

それに興味を持ったカリーナ姫がどんな花嫁衣裳か聞いてみると、

空の星屑を織り込んだスカート

野原の草のしずくを織り込んだ上着

太陽と月の光で織ったヴェール

だと言うのです。

そこでカリーナ姫は、姫が一人になる日を若者に伝え、その時に衣装を持ってくるよう言いました。

その日から若者は山や野原を駆け回り、衣装を作っていきました。

そして、約束の日。

若者は一層たくましくなり、カリーナ姫の前に姿を現しました。

カリーナ姫はさっそくに衣装を見せてもらうと、約束した通りの衣装が出来上がっていました。

それを見て、早速着てみることに。

その花嫁衣裳を着たカリーナ姫はそれはそれは美しい姿でした。

若者はそんなカリーナ姫の右足のひざに、きらりと光る星があることを見逃しませんでした。

それからしばらく経ち、若者はまたお城にやってきました。

星の場所を言い当て、カリーナ姫と結婚するためです。

果たして、無事にカリーナ姫と結婚することは出来るのでしょうか。

『ほしをもったひめ』の素敵なところ

  • 美しく躍動感のある絵で描かれる物語
  • 姫と若者両方の心理描写が描かれている
  • 若者らしい最後の選択

この絵本を一目見て思うのは、絵の美しさでしょう。

純粋に「きれい」と思うだけでなく、物語としての躍動感も物凄いのです。

失敗したものを羊に変える魔法使いの禍々しさ。

若者と姫の邂逅。

衣装を作るために奔走する若者の様子。

花嫁衣裳を着るカリーナ姫。

そして、若者と王様の対峙。

そのすべてが、美しく躍動的で物語に引き込まれていくのです。

子どもたちも「本当に光を集めてる!」

「どんな衣装になるんだろう!」

「スカートに本当に星と夜がくっついてるよ」

など、すっかり夢中になっていました。

また、平易な文章でわかりやすく書かれているので、とてもとっつきやすく読みやすい絵本でもありまます。

その中に自然に絶妙に姫と若者の心理描写を入れているのが、とても素敵なところです。

初めて若者と会った時、そのきれいな瞳にドキッとする姫。

でも、立場上すぐに気を取り直し、つんとした態度で接する姿。

最初は羊を元に戻すために星を探していた若者が、衣装を着たカリーナ姫の美しさに心奪われる様。

そんな所々に織り交ぜられる、お互いへの感情が、物語の帰結をとても自然なものにしてくれているのです。

だからこそ、若者と姫に深く感情移入するのだと思います。

そして最後の「めでたしめでたし」には若者らしい選択と、それによるエッセンスが付け加えられ、この物語を読んできた人であれば、心から「めでたしめでたし」と思える結末になっています。

絵、文章、描写、構成。

すべてが物凄く綺麗にまとまって、読み始めたら目が離せなくなる昔話です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました