あいず(4歳~)

絵本

文:大沼鉄郎 絵:沼野正子 出版:福音館書店

日頃、街中で見かける合図。

クラクション、手信号、灯台の灯り・・・。

探してみると、普段よりももっとたくさんの合図が見つかります。

その合図にはどんな意味があるのでしょう。

あらすじ

ある日、友だちが家に来て、野球に誘われました。

でも、それを聞いていた妹も一緒に来てしまいました。

小さな妹がいると自由に野球が出来ません。

そこで、次の日は妹にばれないよう、合図を考えることにしました。

翌日、家の前まで行くと、鏡に光を反射させ、合図を送ります。

見事に妹にばれないよう野球に行くことが出来ました。

野球の帰り道、工事現場の前を通ると、作業員の人がクレーン車に手を振って合図をしています。

言葉で言うより、手で合図した方がよくわかるからです。

交差点では信号が、合図を出してくれています。

そこへ来た救急車はサイレンを鳴らして、合図を出していました。

家に着くと、妹が怒っています。

けんかする二人に、お母さんが口に指を当て「シーッ」の合図。

お客様が来ていたからです。

他にも犬を呼ぶ合図や、呼び鈴、車のハザードなど、色々な合図があります。

さて、明日は家族で田舎に行く日です。

目覚ましの合図で、朝は起きなければいけません。

兄妹は、田舎へ行く途中、田舎へ行ったあと、どんな合図を見つけていくのでしょうか。

『あいず』の素敵なところ

  • 兄妹と一緒に自然と合図に気付ける仕組み
  • 世の中は合図で溢れていることに気付く
  • 合図の色々な性質に気付く

この絵本の一番素敵だと思うところは、兄妹が生活の中で合図に気付くことを通して、見ている方も自然に合図に気付けるところです。

そもそも、合図に興味を持つきっかけは、妹にばれないように秘密の合図を考えたこと。

これにより、自然と合図には色々な使い方があり、便利であることがわかります。

その帰り道で、色々な合図があることに気付きます。

その後も、生活の中で自然に合図に気付き、触れていきます。

この自然な流れが、自分の生活を思い返して、「あ、あれも合図だ」と気付かせて視野を広げてくれるのです。

そうして視野を広げていくと、世の中は合図に溢れていることに気付きます。

クラクション、ロッカーの名前、コンビニの入店音・・・。

子どもたちと話していくと、無限に合図が出てきます。

少し視点を変えただけで、当たり前のものが、色々な意味を持ってくる面白い体験が出来るのも、この絵本の素敵なところです。

こうして見つけていくと、同時になんの合図かを考えることに繋がります。

「声が聞こえない場所だから、手で合図するんだ」

「危ないから、大きい音出すんだよ」

「字が読めない子でも、わかるようにかな」

中には灯台の灯りの意味を知って、

「そのために光ってるのか~」

と納得している子もいたりしました。

なんの合図かを考えることで、いろんな場面や、立場について考えることにも繋がります。

合図と言う枠を飛び出して、自分の住んでいる世界を考えるきっかけになるのも、この絵本のすごいところなのです。

兄妹と一緒に暮らしの中にある、たくさんの合図を見つけることが出来る。

その合図を通して、自分の暮らす世界への視野を広げてくれる絵本です。

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