おはなしトンネル(4歳~)

絵本

作:中野真典 出版:イースト・プレス

そこは不思議なトンネル。

心細い時に、楽しく明るい気持ちにさせてくれる・・・。

面白いお話のようなトンネルです。

あらすじ

雨の降る日、高架下の真っ暗なトンネルの中。

カッパを着た男の子が震え、うずくまっていた。

走っている電車の音が聞こえる。

と、その音に交じって、不思議な音が聞こえてきた。

目を開けると、真っ暗なトンネルにラッパの音。

ラッパを吹いていたのはピエロだった。

そして、唐突にトンネルの奥でサーカスが始まった。

踊り子たちが、皿を回しながら舞い踊る。

と思ったら、踊り子が消え、お皿がちょうちょになり、飛び出した。

そこで、ピエロがラッパを吹くと、ラッパの音が「ボ・ボ・ボ・・」と変わり、「ボーッ!」と船の汽笛になった。

目の前に大きな船も現れた。

船が遠くへ去っていく。

目の前には波が打ち寄せる青い海。

砂浜に転がった人形を、ペガサスが背中に乗せて、空の向こうへ飛んでいく。

すると、目の前が真っ暗になり、ぎょろりとした目の恐ろしい顔が・・・。

一体どうなってしまうのか!?

『おはなしトンネル』の素敵なところ

  • 不気味なトンネルを劇場に変えてしまう発想力
  • ノンストップで次々と変わっていく場面
  • 最後に素敵なサプライズ

雨の日の、真っ暗なトンネル。

そこはなんだか不気味で、恐怖を感じるのも無理はありません。

でも、この絵本では、それを劇場の暗闇に、トンネルの出口を舞台に見立ててしまいます。

そうなると、そこはもうエンターテイメント。

楽しい世界に早変わり。

サーカスが始まり、海が現れ、さらには空へ。

怖さなんて忘れて、目の前で繰り広げられるお話に、釘付けにされてしまいます。

これは、絵本の中の男の子だけではありません。

絵本を見ている子どもたちも一緒です。

ほとんどの場面が、男の子の一人称で描かれているので、本当に自分もトンネルにいる感覚になるのです。

ノンストップで、次々と起こる出来事。

切り替わっていく場面。

まるでジェットコースターにでも、乗っているようです。

その没入感は相当なもの。

「船になった!」

「お空飛んだよ!」

と、サーカスを見に来ている子どものような反応です。

そんなおはなしトンネルの最後には、素敵なサプライズが用意されていました。

ピエロによる、粋なサプライズです。

ここでは、見ている子もピエロの片棒を担ぎます。

そのサプライズで残ったものが、色々なことを想像させ、このおはなしをより深みのあるものにしてくれているのも、素敵なところです。

不思議なトンネルの、不思議なサーカスを見ているうちに、自分もトンネルの中に入り込んでしまう。

ノンストップで駆け抜けていく、ジェットコースターのような絵本です。

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