かぐやひめ(4歳~)

絵本

文:岩崎京子 画:長野ヒデ子 出版:教育画劇

みんな知っている『かぐやひめ』。

その中でもこの絵本は、かぐやひめの心の動きが、とてもよくわかります。

自分の生まれを知っていても、抑えられない恋心。

だからこそ、月に帰るのが辛いのです・・・。

あらすじ

昔々、竹を取ってきて、かごを作るおじいさんがいました。

ある日、竹やぶに行くと、根本がぼうっと光る竹がありました。

不思議に思い切ってみると、手のひらに乗るくらい、小さな女の子がいるではありませんか。

おじいさんは連れ帰り、おばあさんと一緒に育てることにしました。

女の子は、すくすくと成長していきました。

その可愛いことといったら、光り輝くようでした。

そこで、「かぐやひめ」という名前をつけました。

かぐやひめは、ますます美しくなっていきました。

その噂を聞き、大勢の若者たちが、かぐやひめと結婚するためやってきました。

特に熱心だったのが、5人の若者。

みんな、かぐやひめに結婚を申し込んできました。

ですが、かぐやひめは結婚する気はありません。

諦めてもらおうと、「注文したものを持ってきてくれた人と結婚する」と言い、わざと難しいものを注文しました。

5人の若者は、偽物を用意したり、あまりの困難さに諦めたりと、誰一人注文を叶えることは出来ませんでした。

そうこうしているうちに、かぐやひめの噂は、みかどにも聞こえました。

みかどは狩りの帰り道、かぐやひめの家に寄りました。

かぐやひめを一目見るなり、気に入ってしまったみかどは、かぐやひめを御殿へと誘いました。

かぐやみめも、他の人とは違っていると感じましたが、「自分は人ではない」と断りました。

けれども、みかどは諦めず、せっせと手紙を送りました。

かぐやひめも、思いを込めて返事を送り続けるのでした。

秋になり、月の光がだんだん冴えてきた頃です。

月を見ながら、かぐやひめが涙ぐんでいました。

おばあさんが理由を聞くと、かぐやひめは「月の世界の者で、十五夜に月から迎えが来る」というのです。

かぐやひめは、おじいさん、おばあさんとお別れをするのが辛いと泣いていたのでした。

それを聞いたおじいさんとおばあさんは、みかどにお願いをして、兵士を貸してもらいました。

その数は2千人。

おじいさんの家で、月からの迎えを、待ち構えます。

そして、いよいよ十五夜になりました・・・。

『かぐやひめ』の素敵なところ

  • かぐやひめの複雑な気持ちがとてもよく伝わってくる
  • 難しい言葉が出てきても、あらすじはわかるようになっている
  • 十五夜の月を見て思いを馳せる

かぐやひめの複雑な気持ちがとてもよく伝わってくる

この絵本の素敵なところは、かぐやひめの複雑な感情が、見事に描かれているところです。

若者たちを気遣いつつも、結婚を諦めてもらおうとする優しさ。

みかどと一緒になりたいけれど、自分が人間ではないので一緒にはいられないという裏腹な気持ち。

帰らなければいけないけれど、おじいさんたちと別れたくないという悲しみ。

そんな、かぐやひめの思い通りにならない、複雑な感情が丁寧に描かれるのです。

だからこそ、かぐやひめの苦しみや悲しみに寄り添えます。

子どもたちも、

「ほんとは好きなんだよね・・・」

「あー、十五夜になって迎えが来ちゃう!」

と、かぐやひめの、よい理解者になっていました。

この、人間らしい葛藤や感情がしっかりと描かれているのが、とても素敵です。

難しい言葉が出てきても、あらすじはわかるようになっている

ただ、丁寧に描くために、少し難しい言葉が出てくる部分もあります。

特に、5人の若者が、かぐやひめに言われたものを持ってくる場面。

名前からして、「くらもちのみこ」など、すでに聞きなれません。

さらに「真珠の実のなる木」を持ってくるのですが、お宝だという説明では、

「蓬莱の島から取り寄せました」

と、これも子どもにはわかりにくいです。

ですが、場面の最後に「偽物だとバレてしまいました」など、結局駄目だったということがわかる文が入っています。

これにより難しい場面でも、あらすじがわからなくはならず、話に戻って来られるのです。

また、少し難しい部分があるからこそ、物語に深みも生まれるので、そのバランスがいいのもこの絵本の素敵なところだと思います。

十五夜の月を見て思いを馳せる

さて、そんな物語は十五夜の日に終わります。

月の輝きが増していき、一番光が強くなる十五夜の日。

月から使いが降りてくるのです。

この物語は、そんな十五夜の月に、さらなる輝きをもたらしてくれます。

普通に見ても綺麗な十五夜の月ですが、この物語を見ると、

「かぐやひめは、まだ月にいるかな?」

「もう泣いてないかな?」

「うさぎさんと仲良くしてるかも」

と、月への様々な思いが生まれます。

この思いが、十五夜の月をさらに趣深いものにしてくれることでしょう。

見終わった後、現実の世界と繋がっていくのも、素敵なところです。

二言まとめ

かぐやひめの、「人間ではない」ゆえの、複雑な気持ちが丁寧に描かれている。

読めば、十五夜の月がより輝いて見えてくる、昔話絵本です。

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