どんなかんじかなあ(5歳~)

絵本

文:中山千夏 絵:和田誠 出版:自由国民社

目が見えない、耳が聞こえないなど、自分とは違う感覚を持つ人がいる。

そんな人たちって、どんな感じなんだろう。

自分の出来る範囲で、そんな人たちの気持ちになってみる絵本です。

あらすじ

ひろくんは、考えてみた。

友だちのまりちゃんは目が見えない。

それって「どんなかんじかなあ」と。

ひろくんは、しばらく目をつぶってみた。

真っ暗な中で、とてもたくさんの音が聞こえる。

ひろくんは驚いて目を開けた。

目を開けると、前と同じ静かな世の中だった。

そこで、まりちゃんに会った時に伝えた。

見えないってすごいこと、あんなにたくさん聞こえるということ。

見えるって、ちょっとしか聞こえてなくて損だということ。

それを聞いたまりちゃんは、「ひろくんって、変わってる」と笑った。

友だちのさのくんは耳が聞こえない。

ひろくんは「聞こえないって、どんなかんじかなあ」と、耳栓をしてしばらく耳を塞いでみた。

耳を塞いで色々なものを見ているうち、すごいことに気付いた。

お母さんの顔のほくろの数を初めて知ったのだ。

7つあった。

それで、さのくんに会った時に言った。

聞こえないってすごいこと、あんなにたくさん見えること。

聞こえるってちょっとしか見えてなくて損だということ。

それを聞いたさのくんはぷっと吹き出して「ひろくん、考えすぎー」と言った。

友だちのきみちゃんは、お父さんもお母さんもいない。

神戸にいた時に、大地震で死んでしまったのだ。

ひろくんは「それってどんなかんじかなあ」と考えてみたけど、わからなかった。

お父さんとお母さんをなくしてみる訳にはいかないから。

だから、きみちゃんが来た時聞いてみた。

「すごおく、寂しいんだろうね」と。

きみちゃんはちょっと考えてからこう言った。

「そうでもないよ」と。

次の日曜日、きみちゃんがひろくんのところにやってきて言った・・・。

『どんなかんじかなあ』の素敵なところ

  • 純粋で前向きな気付き
  • なりきってみることで気づくこと
  • ひろくんのひみつ

純粋で前向きな気付き

この絵本のなによりも素敵なところは、ハンディを持っている人の持つ、すごいところへ目を向けてくれることでしょう。

目が見えないことで、聞こえる音。

音が聞こえないことで、見えるもの。

そんな見落としがちなすごいところへ、見ている人の目を向けてくれます。

それを与えてくれるのが、ひろくんの純粋で前向きな気付きです。

ただ、気になってやってみたら、そのすごさに気付いて本人に伝えた。

そのひろくんの反応や、言葉、仕草の一つ一つに、強い説得力があるのです。

このひろくんの自然体な気付きや驚きが、それぞれのハンディに対して、身構えたり、「かわいそう」という先入観を薄れさせてくれます。

そして、相手のハンディも含めたありのままの姿を感じさせてくれます。

このハンディへのフィルターがない、純粋な目線がこの絵本の本当に素敵なところです。

なりきってみることで気づくこと

さて、ひろくんは相手がどんな感じなのか体験するために、出来るだけ同じ状態に身を置いてみます。

この方法もまた素敵なところです。

考えるだけなく、実際にやってみる。

それは本当の気付きに繋がる方法です。

絵でもその感覚が描かれていますが、見ていると子どもたちも自分でやり始めます。

目をつぶり「本当だ!目を閉じた方が色んな音が聞こえる」

耳を塞ぎ「じーっと見ると、色んなものが見える!」

と、少しやっただけでも、色々な気付きがあったみたいです。

また、絵本に出てきたものだけじゃなく、

「歩けないってどんなかんじかなあ」

「腕が使えないってどんな感じだろう」

と、骨折した友だちに思いを巡らせるなど、さらに広げて考える姿が見られました。

「足が動かないようにしたら、どんな感じかわかるかも」

など、それを感じ取るための方法も、絵本を見て考えていたのが印象的です。

ひろくんのひみつ

そんな色々な気付きをくれるひろくんですが、本人にもある秘密があります。

この秘密が、物語やひろくんの言葉に、より深い説得力を与えています。

こんなに色々なことを考える理由。

それまでのページで感じていた不思議さの理由。

そんなものが、最後にきみちゃんと話す場面で明かされます。

この秘密、普通ならきっと色々な感情が渦巻くでしょう。

ですが、とても自然にありのままに受け入れられるのが、この絵本のとても素敵なところなのだと思います。

それはここまでに、ひろくんの言動の積み重ねがあったからこそ。

「バリアフリーってこういうことなんだろうな」と思わせてくれるのです。

二言まとめ

ひろくんの、純粋で前向きな目線を通して、相手がどんな感じなのかになりきって考えてみる。

それぞれの持つ「出来ないところ」ではなく、「すごいところ」へ目を向けさせてくれる絵本です。

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