まよなかのもりで(3歳~)

絵本

作:ドロテ・ド・モンフレッド 訳:ふしみみさを 出版:ほるぷ出版

真夜中の真っ暗な森の中。

家路を急ぐ男の子がいた。

しかし、森の中には恐ろしい猛獣たち。

困っていると、木のうろに小さな扉があるのを発見して・・・。

あらすじ

真夜中の森の中。

小さな男の子ファンタンは、一人で暗い森を歩いていた。

すると突然、「ガサッガサガサガサ!」という音が・・・。

ファンタンは大急ぎで木のうろに隠れた。

そこにいたのはオオカミだった。

焚火に当たっている。

ファンタンは震えあがった。

すると突然、「ガルルルルルー!!!」という唸り声。

オオカミが飛びあがって逃げ出すと、現れたのはトラだった。

ファンタンが人喰いトラか心配していると・・・。

「ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴオオオォォォー!!!」という雷のような声。

トラが慌てて逃げ出していく。

そこにやってきたのは、ワニだった。

ファンタンがひざをガクガクさせ、うろのすみで小さくなると、なにやら背中に当たるものがある。

それは扉の取っ手だった。

ファンタンは扉を開け中に入ってみた。

そこは誰かの家の台所だった。

と、その時、ファンタンの目の前の扉がゆっくりと開いた。

そして出てきたのはウサギだった。

ファンタンはウサギに、怖い動物がいて家に帰れないことを話した。

それを聞いたウサギは、家まで送ってくれると言う。

ウサギは大きなマントをはおい、カバンを持って入り口の前に来た。

カバンの中から怖い怪物のお面を取り出すと、それをかぶり、ファンタンの肩によじ登った。

2人の姿は、大きな恐ろしい怪物に見えた。

ウサギは怖がるファンタンに、前に進みながらライオンの真似をするよう言った。

ファンタンは声を振り絞り、吼えた。

するとオオカミと、トラと、ワニは・・・。

『まよなかのもりで』の素敵なところ

  • 次々に怖い動物たちが現れるドキドキ感
  • 心の底から怖がるファンタンの姿
  • ウサギとの連携技の爽快感

次々に怖い動物たちが現れるドキドキ感

この絵本のまずおもしろいところは、次々に現れる怖い動物たちでしょう。

オオカミ、トラ、ワニと、怖い動物の代名詞が勢ぞろい。

見つかったら食べられると、直感的にわかります。

その登場の仕方も恐ろしく、

「ガサッガサガサガサ!」

「ガルルルルルー!!!」

「ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴオオオォォォー!!!」

と、恐ろしい音とともに現れて、ドキドキ感を盛り上げます。

子どもたちも、

「今度はなにー!?」

「まだ出てくるの!?」

と、怖さに身を寄せ合って見ています。

この絶体絶命のハラハラドキドキ感が、とてもおもしろいところです。

心の底から怖がるファンタンの姿

そんな怖さをさらに盛り上げるのが、ファンタンの怖がり方。

常に不安そうな表情で、木のうろから様子を伺います。

もちろん震えあがり、ひざはガクガク。

唸り声が聞こえると、思わず目を覆ってしまいます。

この怖がり方が、子どもとリンクしていて、とても感情移入できるのでしょう。

ウサギと出会った時に、ファンタンがほっと安心すると、みんなの肩の力も同じように抜けていました。

ですが、ハラハラドキドキは終わりません。

ウサギが考えた起死回生の作戦ですが、ファンタンにしてみたら、動物たちの目の前に出るなんて恐ろしいことこの上ない。

ノリノリで作戦に乗るのではなく、ひざをガクガクさせながらも勇気を振り絞るのがなんともリアル。

最後まで、怖さと不安を感じている等身大の子どもの姿を見せてくれるからこそ、子どもたちも自分を重ね合わせ、より没頭できるのでしょう。

ウサギとの連携技の爽快感

さて、怖さと不安の中で勇気を出して挑んだ、ウサギとの連携技。

その効果は絶大で、さっきまで怖がっていた動物が子猫のようです。

この立場が逆転する様子がなんとも爽快で痛快。

ひざのガクガクもなくなり、ファンタンも子どもたちも笑顔です。

あんなに怖がっていたのに、怖がらせる側になる逆転劇のおもしろさも、この絵本の素敵なところ。

思いきり怖がっていた分、その解放感はとても大きくスッキリとしたものになっています。

二言まとめ

真っ暗な森の中で、恐ろしい動物たちと出会ってしまう恐ろしさを存分に感じられる。

怖がった分だけ、逆転した時の爽快さと痛快さがとても気持ちいい絵本です。

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