カッパーノ(4歳~)

絵本

文:森くま堂 絵:いわさきさとこ 出版:BL出版

イケメン河童のカッパーノはみんなの憧れ。

でも、ある日、自慢の皿が取られてしまった!

人気が地に落ちたカッパーノは、皿を取り戻すことを決意する。

あらすじ

ある河童の町に、輝く皿を持つ人気者の河童カッパーノが暮らしていました。

みんなカッパーノに夢中です。

しかし、ある日、カッパーノはカラスに皿を取れらてしまったのでした。

皿のないカッパーノを見て、町の河童たちは「もはや河童じゃない」と噂しあい、カッパーノの人気は地に落ちてしまいました。

カッパーノはバケツやネコ、リンゴなど、色々なものを頭に乗せてみました。

けれど、どれも上手くいきません。

そこでカッパーノは、ついに皿を探し出すことを決意し、町を後にするのでした。

山を越え丘を越え、人里に辿り着いたカッパーノ。

さっそく、住んでいる人々に、取られた皿を知らないか訪ねて回りました。

けれど、誰も知りません。

町中巡りましたが、皿は見つからず、気付けば夜になっていました。

空を見上げると、そこには皿のような綺麗な満月が。

そんな月を見て、カッパーノは輝く皿を思い出しながら、藁にもすがる思いで月へと祈りました。

すると、月の光が、ある家の窓を照らします。

そこにはピザを食べようとする男の姿が。

さらによく見ると、ピザを乗せている皿はカッパーノの皿ではありませんか。

勢いよく窓から飛び込むカッパーノ。

果たして、皿を返してもらうことはできるのでしょうか?

『カッパーノ』の素敵なところ

  • カッパーノの扱いの落差がひどい
  • 探している間もカラスに弄ばれるカッパーノ
  • さらにイケメンになって帰ってきたカッパーノ

カッパーノの扱いの落差がひどい

この絵本のおもしろいところは、皿ひとつで河童の運命が大きく変わってしまうことでしょう。

カッパーノの皿は、他の河童とは輝きが違います。

明らかに特別製です。

さらに顔つきも違います。

切れ長の目に決まった髪型。

明らかにイケメンです。

けれど、町の河童たちが噂するのは、皿ばかり。

「お皿が素敵」

「あんなお皿が欲しいわあ」

と、皿へと羨望の眼差しを向けるのです。

河童にとって、どれだけ皿が大事かが伝わってきます。

だからこそ、皿を取られた後の扱いが悲惨です。

まさに手のひらを返したように、

「頭の上になんにも無いなんて」

「もはや河童じゃないね」

「みっともないわあ」

と、すごい言われよう。

カッパーノの情けない表情と相まって、最初のイケメンっぷりとのギャップがすごいことになっています。

最初は鼻持ちならない感があるカッパーノですが、ここまでどん底だと流石に応援したくなってくるからおもしろい。

皿ひとつで立場が180度変わる、河童界の厳しさと皿の重要性が、この冒頭でひしひしと伝わってくるのです。

探している間もカラスに弄ばれるカッパーノ

そう考えると、カッパーノが皿を必死で取り戻そうとするのにも、ものすごい納得感が生まれます。

山越え、野を越え、たどり着いた町で皿を探すカッパーノ。

民家、街頭、映画館に、本屋さん・・・。

大きな町中を駆け巡って探します。

なんとこの時、カッパーノのすぐ近くにカラスと皿が隠れています。

これも、この絵本のとてもおもしろいところです。

民家であれば、窓からカラスが顔を出し、洗い物に積まれた皿の中にカッパーノの皿が、

街頭では、ショーウインドウの中に、カラスがいて、マネキンの頭に皿が・・・。

というように、カラスと皿がセットで隠れているのです。

もちろん子どもは気付きます。

「うしろうしろ!」

「カラスいるって!」

「気付いて~!」

と、必死で訴えますが、カッパーノには届きません。

このカッパーノと町の人だけが気付いていないという構図が、たまらなくヤキモキしておもしろいのです。

カッパーノも子どもたちも、見事にカラスに弄ばれてしまう。

そんなところも、この絵本の楽しいところです。

さらにイケメンになって帰ってきたカッパーノ

さて、さんざん弄ばれて夜になってしまうカッパーノですが、お月様の力を借りて、ついに皿へと辿り着きます。

ですが、このまま皿を返してもらい、めでたしめでたしとはなりません。

窓から必死で飛び込んだのがいけませんでした・・・。

カッパーノを絶望させるアクシデントが起こってしまったのです。

けれど、絶望するカッパーノを見たおじさんから一つの大きな提案が。

これにより、カッパーノはさらにイケメンにパワーアップすることになるのです。

ただ、このパワーアップが人間にはよくわからず、

「えーそれでいいの!?」

となってしまうオチも、この絵本のおもしろいところ。

でも、カッパーノが幸せそうでイケメンに戻ったことだけは伝わってきます。

この圧倒的な絶望を感じるアクシデントからの斜め上な復活も、この絵本のワクワクドキドキするとて素敵なところです。

二言まとめ

皿を失った河童が、皿を取り戻すまでの、カラスに弄ばれ続ける旅がおもしろすぎる。

河童にとっての皿の大切さが、ひしひしと伝わってくる絵本です。

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