おばあちゃんのおくりもの(4歳~)

絵本

文:キャリー・ガラッシュ 絵:サラ・アクトン 訳:菊田まりこ 出版:WAVE出版

おばあちゃんにもらったぬいぐるみ。

いつも一緒に過ごして来ました。

でも、ある日壊れてしまい、直したけれど・・・。

あらすじ

おばあちゃんと女の子アリーはいつも一緒だった。

そんなおばあちゃんが作ってくれたのが、ぬいぐるみのちびうさぎ。

ちびうさぎとはいつも一緒で、色んなことをして遊んだ。

おばあちゃんとは毎朝、海の見える部屋でミルクとビスケットを食べた。

もちろんちびうさぎも一緒に。

ちびうさぎは、体が柔らかいからイスの下にずり落ちたり、どこかに隠れてしまうから、うっかり置き去りにしてしまう時もある。

でも、すぐに気付いて迎えに行くから大丈夫。

ある日、アリーはちびうさぎと海へ遊びに行った。

手を繋いでいるちびうさぎは、アリーが走ると耳と足がゆらゆらぱたぱたと楽しそうに揺れる。

その夜、アリーはベッドにもぐりこんだ時、大変なことに気が付いた。

ちびうさぎがいないのだ。

その日のことを考え、浜辺に置いてきてしまったのだと思い出した。

ちびうさぎを探し、ようやく見つかった場所は飼い犬のベッドの中。

けれど、浜辺からくわえてもってきたからか、ちびうさぎの体はバラバラになっていた。

翌朝、おばあちゃんはイスに座ってなにかを作っていた。

それは、ちびうさぎの新しい身体だった。

おばあちゃんのおかげで、ちびうさぎの身体は元に戻った。

だけど、それはアリーの知っているちびうさぎではなかった。

身体も丈夫で硬く、依然と違い、ぴんと座っている。

段々と、アリーは一人で遊ぶようになっていった。

ちびうさぎは、高い棚の上で行儀よく座っている。

そんな日々が続いたある日。

おばあちゃんが突然いなくなってしまった。

急に静かで寂しい毎日になってしまった。

寂しい日々の中、アリーの手は自然と・・・。

『おばあちゃんのおくりもの』の素敵なところ

  • おばあちゃんとちびうさぎとの素敵な時間
  • 丈夫で綺麗になったけど・・・
  • おばあちゃんとの「今」を大切にしようと思える結末

おばあちゃんとちびうさぎとの素敵な時間

この絵本の素敵なところは、おばあちゃんとの幸せな時間を一緒に過ごせることでしょう。

アリーとおばあちゃんとちびうさぎ。

3人で過ごす時間は、のんびりしていて、温かで、本当に幸せそうです。

特に、毎朝3人で囲む、海の見える部屋でのミルクとビスケットは、その象徴と言えるでしょう。

3人がそれぞれのことを、とても愛していることが伝わってきます。

その中で、アリーとちびうさぎとの関係性は特に深く丁寧に描かれます。

イスからずり落ちて、隠れてしまう様をちびうさぎの性格のように感じていたり、隠れてもすぐに見つける姿はまるで姉弟のよう。

ここで、ちびうさぎを丁寧に描写することが、後々のちびうさぎの変化へアリーが違和感を持つことの伏線にもなっていて、物語全体でのアリーやちびうさぎへの感情移入をより強いものにしてくれているのです。

同時に、この3人での幸せな時間を丁寧にしっかりと描いているからこそ、後半の寂しさが自分のことのように感じられるのだと思います。

この、まるでおばあちゃんの家に来た時の様な、温かく、愛されていることを実感できる幸せな時間を過ごせるのが、この絵本のとても素敵なところです。

丈夫で綺麗になったけど・・・

ですが、3人での時間は、ある日終わりを迎えます。

ちびうさぎがバラバラになってしまったのです。

ちびうさぎ自体は、すぐに直ります。

むしろ、おばあちゃんが腕によりをかけ、より丈夫に、素敵にしてくれています。

カラフルになった耳、ずり落ちない丈夫な体、素敵に輝く目。

けれど、アリーには別人のように映ります。

この感覚は、大切なぬいぐるみなど、物の友だちがいる人ほどわかるのではないでしょうか?

洗濯をして色合いが変わってしまったり、表情が変わって違和感を覚えたり・・・。

「いつも同じ」だと思っていたものに、裏切られたような感覚。

そんな気持ちが、アリーの姿から痛いほどに伝わってくるのです。

そして、少しずつ距離が開いていく物悲しさ。

ある意味では自立であり、成長ですが、友だちがいなくなった寂しさはぬぐえません。

でも、その寂しさはおばあちゃんが埋めてくれる。

このちびうさぎを意識しながらも、心の距離は開いていく、なんとも言えない寂しさのような、複雑さのような感覚を味わえるのも、この絵本ならではだと思います。

おばあちゃんとの「今」を大切にしようと思える結末

さて、こうしておばあちゃんとアリー、2人で過ごすようになっていきましたが、それにも終わりが訪れます。

おばあちゃんが、ある日突然いなくなってしまったのです。

当たり前だった幸せな日常が消え、急に静かに寂しくなった日々。

その中で、アリーの手は、自然とおばあちゃんが作ってくれたものへと伸びていきました。

形が変わっても、その中にはおばあちゃんを感じることができ、その本質は変わっていないことに気付かされるのです。

そして、おばあちゃんの愛が詰った贈り物が、おばあちゃんのいなくなった寂しさから救い出し、おばあちゃんとの思い出とずっと一緒にいられるようにしてくれたのです。

この物語を見ていると、おばあちゃんは必ず先にいなくなってしまうことを痛いほど実感します。

同時に、おばあちゃんとの「今」がどれほど大切な時間であるかということも。

健在であれば、一緒に遊べる「今」を。

亡くなってしまっていれば、その思い出と過ごす「今」を。

改めて、大切にしようと思えるところが、この絵本のなにより素敵なところです。

二言まとめ

おばあちゃんからもらったぬいぐるみを通して、おばあちゃんからの愛が痛いほどに伝わってくる。

読めば、すぐにおばあちゃんと会って、話したり遊んだり、おばあちゃんからもらったものと触れ合いたくなる絵本です。

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