【絵本】たったさんびきだけのいけ(4歳~)

絵本

絵と文:宇治勲 出版:PHP研究所

小さな池に3匹の生き物が住んでいました。

でも、意地悪なオタマジャクシが、いつも誰かを仲間外れにしています。

そんな時、池に大変なことが・・・。

あらすじ

森の湖の側に、小さな池がありました。

その池に住んでいたのはカメと、オタマジャクシと、魚の3匹だけでした。

池の真ん中には小さな島があり、池はドーナツのような形になっています。

その島に上がれるのは、カメだけ。

水の中から出られないオタマジャクシと魚は、カメが島でひなたぼっこするのを、羨ましく思っていました。

ある日、魚がカメにひなたぼっこの感想を聞こうとすると、オタマジャクシがやってきて、「陸に上がれないのだから聞いたって意味がないよ」と、魚を連れていってしまいました。

いつしかオタマジャクシが嫌がる魚を無理やり誘い、カメを仲間ずれにするようになったのでした。

そんなある日、オタマジャクシに足が生えてきました。

みるみる体が変化して、オタマジャクシはカエルになったのです。

カエルになったオタマジャクシは、島に上がることができるようになりました。

そうすると、今度はカメと仲良くし、魚を仲間外れにするようになったのでした。

やがて、夏が来ました。

ところが、今年の夏は雨が一滴も降りません。

あまりの暑さに、池の水はみるみるなくなって行きました。

このままでは干上がってしまいます。

カエルとカメはあまりの暑さに、湖に移る相談を始めました。

けれど、中々決断できません。

なぜなら、水から出られない魚が苦しそうにしていたからです。

カエルは悩みました。

同時に、自分の身勝手さに気付き、反省しました。

そして、決めたのです。

池から湖まで穴を掘り、トンネルを繋げることで湖の水を池に引き込もうと。

カエルは池に飛び込むと、トンネルを掘り始めました。

果たしてこの作戦は成功するのでしょうか?

『たったさんびきだけのいけ』の素敵なところ

  • 意地悪で調子のいいオタマジャクシ
  • 追い詰められてわかった本当の気持ち
  • 思わず応援したくなる生死を賭けた大作戦

意地悪で調子のいいオタマジャクシ

この絵本で一番印象に残るのは、オタマジャクシの意地悪さかもしれません。

最初は、一匹だけ島に上がれるカメを仲間外れに、水の中で魚を引き連れ遊び、

カエルになり島に上がれるようになると、今度は魚を仲間外れにし、カメと遊び始めるのです。

この自分勝手な姿に子どもたちも、

「オタマジャクシひどいね!」

「おさかなさんかわいそう・・・」

など、オタマジャクシを責める声が上がります。

ただ、この光景はそんなに珍しいものでもありません。

子どもの間でも、大人の間でも、よく見ることではないでしょうか?

3人のうちの一人と仲良くしたいから、仲間に入ろうとして来ても入れてあげない。

相手の優れているところをねたんで、仲間外れにする。

自分の都合のいいように、仲間外れの対象を変える。

これは日常的に起こっていることだと思います。

それをオタマジャクシの姿を通して、客観的に描いているのが、この絵本の素敵なところなのです。

きっと、オタマジャクシの姿を見て、自分のやっていることと、それをされた相手の寂しそうな姿に気付く人もいるでしょう。

この絵本からは、そんな人間関係のリアルな側面が垣間見られます。

追い詰められてわかった本当の気持ち

けれど、オタマジャクシは意地悪で自分勝手ではありますが、カメと魚のことが嫌いなわけではありません。

だからこそ、魚を見殺しにできなかったのでしょう。

池の水が減り、追い詰められていく中で、初めて自分のしてきたことに気付き、悔やみます。

この気付きも、この絵本のとても素敵なところです。

大切な友だちだからこそ、みんなで仲良くすることが幸せなんだと気付いた瞬間なのでしょう。

そして、なにより素敵なのは、その後悔を大きな力に変えること。

自分の身を削ってでも、魚を救うことを決意します。

こんな作戦、みんなで普通に仲良くしていたら思いつかなかったかもしれません。

これまでしたことへの後悔が大きかったからこそ、なにより魚のことを大切に思う自分に気付けたからこそ、発揮できた力なのではないでしょうか。

思わず応援したくなる生死を賭けた大作戦

さて、そんなカエルの考えた作戦は、湖まで穴を掘り、水を引き込むというものでした。

人間からみたら、湖までの距離はそんなに遠くはありません。

ですが、体の小さなカエルからしたらすごい距離。

冬眠用の穴を掘るのとはわけが違います。

土は固く、手に血をにじませながら掘り進めるカエル。

その姿からはまさに決死の覚悟を感じます。

さらにそれをサポートするカメ。

カエルとカメが力を合わせて、湖へと掘り進む最後の場面は、まさに映画のクライマックスの様。

時間制限や体力の限界が刻一刻と迫る中、湖まで届くのか・・・?

という展開は、もう固唾を飲んで応援するしかありません。

「あとちょっと!」

「カエル頑張れ!!」

と、子どもたちからも自然と熱入った声援が送られます。

このすべてを賭けた、手に汗握る最後の大作戦もこの絵本のとても素敵なところです。

特に最後の力を振り絞る時のカエルの言葉には、応援する心へさらに力が入ることでしょう。

ぜひこの結末を、手に汗握りながら迎えてみてください。

二言まとめ

意地悪なオタマジャクシの言動に、とても嫌な気持ちにさせられる。

でも、その後悔からの言動に、最後はオタマジャクシを心から応援している絵本です。

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