作:ミゲル・タンコ 訳:福本友美子 日本版監修:西成活裕 出版:ほるぷ出版
数学って難しい?
いえいえ、実はみんな数学に囲まれて暮らしているんです。
そんな、身近な数学のおもしろさに、気付かせてくれる絵本です。
あらすじ
女の子の家族には、それぞれ好きなことがある。
パパは絵を描くこと。
ママは虫を研究すること。
お兄ちゃんは音楽。
女の子も、自分の好きなことを探すけれど中々見つからない。
学校で、色々なクラブにも入ってみたけど見つからない。
でも、一つだけ「これだ!」と思ったものがあった。
それが数学。
数学はどこにでも隠れている。
街路樹や、公園の遊具。
湖にできる波紋や積み木。
窓の枠に床の模様。
綺麗な曲線を探すのも楽しいし、数を数えてどうわけるか考えるのも楽しい。
女の子の頭の中は数学だらけで、他の人にはチンプンカンプンらしいけれど。
誰にだって好きなことがあって、それぞれのやり方で世界を見ている。
だから、数学で世界を見たっていいじゃない?
『すうがくでせかいをみるの』の素敵なところ
- 実は身近にたくさんある数学
- 自分の好きなもので世界を見るおもしろさ
- 数学のおもしろさが深まる巻末の「数学ノート」
実は身近にたくさんある数学
この絵本のなによりおもしろいところは、身近な数学に気付かせてくれることでしょう。
算数や数学は学校で勉強というイメージが強いと思います。
特に数学は計算や数式というイメージではないでしょうか?
ですが、この絵本はその勉強と生活を繋げてくれるのです。
まずは形。
街を歩いていると、たくさんの数学でできていることがわかります。
建物やジャングルジム、おもちゃだってほとんどが、数学的な形です。
積み木やブロック、ボールなんて、その典型的なものでしょう。
水に現れる波紋だってそうです。
さらには、紙飛行機を飛ばしたり、ボールを投げるのだって、数学が影響しています。
でなければ、投げたら一直線に宇宙まで飛んでいってしまいますから。
こんな風に、生活から遊びまで、とても様々なところに数学は存在します。
むしろ、数学の中に生きているといってもいいくらい。
でも、あまり気付かれてはいません。
それは数学が「勉強」だと思われて、生活とは関係ないと思われているからかもしれません。
そんな「数学は難しい」というイメージをひっくり返し、とても身近で親近感のあるものへとひっくり返してくれるのが、この絵本のとても素敵で刺激的なところなのです。
自分の好きなもので世界を見るおもしろさ
こうして、身近な数学に気付かせてくれるこの絵本ですが、実はもう一つ大切なことを伝えてくれます。
それが、自分の好きなもので、好きなように世界を見ればいいということ。
絵で世界を見る人。
音楽で世界を見る人。
虫を通して世界を見る人。
その見方は無限に存在します。
でも、生きていると、その自由を忘れがち。
「周りに合わせないといけない」と、意識的にも無意識的にも思ってしまうことが多いと思います。
そうすると、好きなものではなく、当たり障りないもので世界を見ることになってしまう。
そんな常識に風穴を開けてくれるのが、この絵本の女の子です。
数学で世界を見ている女の子の言っていることは、他の人にはチンプンカンプン。
家族にだって理解しきれません。
それでも、女の子はとても楽しそうだし幸せそう。
自分が見る世界に、しっかり自信を持っています。
その姿を見ていると、「好きなように世界を見て楽しんでいいんだ!」と勇気をもらえることでしょう。
この、周囲の目など気にせずに、自分の好きなことへ没頭し、好きなように世界を見ていいのだと思わせてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。
数学のおもしろさが深まる巻末の「数学ノート」
さて、この絵本には巻末に素敵な付録がついています。
それが女の子の書いた「数学ノート」。
物語の中では、かなりわかりやすく伝えてくれた、身近にある数学を、さらに深掘ってくれるノートなのです。
その中では、フラクタルや多角形、軌道、同心円、立体図形、曲線、集合など、数学の用語と一緒にどういうことか説明されます。
でも、深掘っているのに、とてもわかりやすく、身近に感じられるのが本当におもしろいところ。
説明文ではわからない子も、具体例で納得できます。
例えば同心円では、水に石を投げ込んだ時の波紋や、年輪、玉ねぎの断面などが例として挙げられています。
実際に見たことがあるということで、「そういうことか」と納得できるのです。
さらに同心円という知識を得たことで、実際に見てみたくなります。
そして、見た時に「本当に同じ形でどんどん大きい円になってる!」と驚くことでしょう。
軌道も一緒です。
ブランコやボール、紙飛行機の動きが例になっています。
それまでなんとなく遊んでいた子も、この絵本を見た後なら、きっと軌道が気になったり、その軌跡が見えるようになっていることでしょう。
こんな風に、数学ノートで、さらに深く数学へ触れられることで、そのおもしろさを感じると当時に、実際に実験したり観察できるようになっているのです。
自分の目で見て、体で体感したことは、とても生きた知識になります。
この数学の世界を知るだけなく、数学ノートを通して、自分で使ってみることができ、より数学を身近に感じることができるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
気付いていないだけで、実は身近にいっぱいある数学に気付かせてくれる。
さらに、それを見つけたり、使ったりするおもしろさまで味あわせてくれる数学絵本です。
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