【絵本】とべ!ちいさいプロペラき(4歳~)

絵本

作:小風さち 絵:山本忠敬 出版:福音館書店

初飛行の小さなプロペラ機。

緊張で泣き出してしまいそう。

そんなプロペラ機の背中を押してくれたのは、大きなジェット機でした。

あらすじ

ある飛行場に、小さなプロペラ機がいました。

プロペラ機はピカピカで、エンジンもプロペラもいい調子。

それもそのはず、初飛行を格納庫で待っていたのです。

そんなある日、格納庫に大きなジェット機が入ってきました。

様々な国を飛び続けたので、格納庫へ休みに来たのです。

そのジェット機を見て、プロペラ機のパイロットが、そのエンジンの大きさを比べます。

その言葉を聞いて、プロペラ機は自分のことが恥ずかしくなってしまいました。

あんなに調子のよかったエンジンも不調です。

夜になると、プロペラ機はなんだか泣き出しそうな気持ちになってきました。

その時、となりにいたジェット機が声をかけてくれました。

ジェット機は、プロペラ機はまだ飛んだことがないと聞くと、エンジンを褒め、広い空では飛行機の大きさなんてちっぽけに感じられるんだと励ましてくれます。

そして次の朝、いつもより早くパイロットがやってきました。

いよいよプロペラ機の初飛行です。

ジェット機も点検が終わり出発するようです。

プロペラ機は滑走路へ進んでいきます。

その途中、たくさんのジェット機が、プロペラ機の小ささをささやき合っています。

プロペラ機は段々と心細くなってきました。

その時、目の前を格納庫にいたジェット機が飛び立っていきます。

「頑張れよ」という言葉とともに。

いよいよ、プロペラ機の番がやってきました。

滑走路へ入ります。

小さなプロペラ機は、無事に空へはばたくことができるのでしょうか?

『とべ!ちいさなプロペラき』の素敵なところ

  • 大きなジェット機の優しい言葉
  • 小さなプロペラ機の緊張感と臨場感あふれる初飛行
  • 写実的に描かれた本物そっくりの飛行機と空の世界

大きなジェット機の優しい言葉

この絵本のとても印象的なところは、大きなジェット機と小さなプロペラ機の心温まるやり取りでしょう。

大きなジェット機と比べられて恥ずかしくなり、泣きそうになるプロペラ機に、ジェット機は優しくよりそってくれます。

その姿は、先輩に悩みを聞いてもらう後輩や、年上の子に慰めてもらう小さな子のようです。

大きなプロペラ機は、広い世界を見てきたからこその、大きな視点をプロペラ機へ教えてくれます。

その言葉はとても力があり、頼もしい。

きっとプロペラ機だけでなく、なにかに挑戦しようとしている子みんなに勇気をくれることでしょう。

別れ際の励ましも、たった一言なのに、鳥肌が立つほど心に響きます。

それは心の底から応援してくれているのが、伝わってくるからなのでしょう。

他のたくさんのジェット機からの言葉で心細くなっているプロペラ機と、それとリンクして心細くなっている子どもたちの心を、この一言で晴らし、目の前の滑走路と飛ぶことへ集中させてくれるのです。

この、大きなジェット機の、プロペラ機だけじゃなく、見ている子にも勇気をくれる温かな言葉と励ましが、この絵本のとても素敵なところです。

小さなプロペラ機の緊張感と臨場感あふれる初飛行

こうして、飛ぶことへ集中することができるようになったプロペラ機。

目の前には滑走路がまっすぐとどこまでも伸びています。

ここからの初飛行の一部始終が、この絵本最大の見どころです。

まっすぐ空だけを見据えたプロペラ機。

ゆっくりと動き出し、スピードを上げていきます。

どんどんどんどん速くなっていきます。

そして・・・。

という、地上から空への動きが、すべて丁寧にリアルに描かれているのです。

この時の「飛べるのか!?」「飛べー!」という、全身に力がいるような緊張感。

そして、自分も操縦桿を握っているかのような臨場感がたまりません。

さらに飛んだ瞬間、安心感と目の前に広げる景色が合わさって、全身の力が抜ける感覚はまさに機体が浮いた時の浮遊感のよう。

まさに、心が一緒に飛び立ってしまうのです。

この本当にコックピットにいる感覚になるほどの、緊張感と臨場感あふれ、浮遊感まで味わえるプロペラ機の初飛行も、この絵本のとても手に汗握る素敵なところです。

写実的に描かれた本物そっくりの飛行機と空の世界

さて、この絵本の大きな二つの魅力を紹介してきましたが、これらの魅力が発揮されたのは、ある土台があったおかげだと思います。

それが本物そっくりの写実的な絵です。

この絵本では人も飛行機も景色もすべて写真のように本物そっくり。

飛行機は空港で見る姿そのままですし、人間も等身大。

だからこそ、ジェット機の言葉に現実的な重みや力強さが宿り、プロペラ機の初飛行も、あんなにも臨場感が出たのだと思います。

さらにこの写実的な絵が活かされているのが、実はプロペラ機が飛んだ後。

この絵本は飛び立って終わりではなく、空を飛ぶページも描かれています。

そこでの空の青さや、遠くなってく街並み、浮かんだ雲など、すべてがリアル。

本当に空の中を飛んでいる気分が味わえます。

同時に、ジェット機が言っていた「空の広さ」も。

この物語に現実味や臨場感、空の広さを心から感じさせてくれる写実的な絵もまた、この絵本に欠かせないとても素敵なところです。

二言まとめ

小さなプロペラ機の初飛行を、不安や緊張、達成感や解放感まで、その全てを臨場感たっぷりに描いた。

まるで自分が小さなプロペラ機の操縦桿を握って、一緒に初飛行を成し遂げたような嬉しさと感動を味あわせてくれる絵本です。

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