【絵本】ピノキオ(5歳~)

絵本

文:斉藤洋 絵:杉浦範茂 出版:講談社

有名な童話ピノキオ。

それをとても原作に近い形で、描いた絵本。

読み応えと、わかりやすさのバランスが秀逸です。

あらすじ

ある日、ジェペット爺さんが、しゃべったり動いたりする丸太をもらいました。

ジェペット爺さんは、その丸太で人形を作りました。

すると、しゃべったり動いたりする人形ができたではありませんか。

ジェペット爺さんはその人形にピノキオという名前を付け、自分の息子にして、学校にも通わせることにしました。

ジェペット爺さんは一枚しか持っていなかったコートを売り、教科書を買いました。

ピノキオはその教科書を持って学校に。

しかし、その途中で人形芝居の小屋を見つけたピノキオは、教科書を売り、そのお金で芝居小屋へ入ってしまったのでした。

芝居を見ていたピノキオは、いてもたってもいられず、自分も舞台に上がり歌ったり踊ったり。

その結果、お客は大盛り上がり。

芝居小屋の親方はお礼にキノピオへ金貨をくれました。

ピノキオが、家へ帰ろうとしていると、キツネとネコが話しかけてきました。

ピノキオが金貨を持っているのを知っていたのです。

キツネとネコが、ピノキオに金貨の実が生える木の話をすると、ピノキオはその話を信じ、2人についていってしまいました。

夜になり、気が付くと2人の姿がありません。

その直後、真っ黒な袋を被った2人の強盗に襲われたピノキオ。

とっさに金貨を口の中に隠すと、強盗はピノキオを木につるし上げて、行ってしまいました。

翌朝には、口から金貨を吐き出していると考えたのです。

しばらくすると、1羽のタカが飛んできて、くちばしで突き縄を切ってくれました。

さらに、ハツカネズミが引っ張る車に乗ったムクイヌが、ピノキオを車に乗せて逃がしてくれました。

実は、タカもムクドリも優しい妖精の家来だったのです。

妖精は、ピノキオを家に入れると、木に吊るされた理由と、金貨のありかを聞きました。

ピノキオは、金貨はなくしてしまったと嘘を言いました。

すると、ピノキオの鼻が伸び、それを見た妖精は笑いました。

妖精は、嘘を吐くと鼻が伸びるのだと言い、これからいい子になるなら人間にしてあげると言いました。

伸びた鼻は妖精が呼んだキツツキが、綺麗に削ってくれました。

ピノキオはいつか人間になれると大喜びし、ジェペット爺さんの元へ帰りました。

けれど、家にはジェペット爺さんがいません。

ピノキオが帰ってこないので、ピノキオを探しに船で海に出発してしまっていたのです。

ピノキオは仕方なく妖精の家へ戻り、真面目に勉強をして暮らしました。

そんなある日、妖精にピノキオはいい子になったから、明日人間にしてあげましょうと言われたのでした。

でも、その夜、ピノキオは悪い友だちにこうも言われていました。

「人間になったって勉強ばかりさせられるから怠け者の国に行こう」と。

ピノキオは、その言葉を信じ、怠け者の国に行ってしまいました。

しばらくはおもしろおかしく暮らしていたピノキオ。

ですが、ある時、ピノキオはロバになってしまったのです。

ロバになったピノキオはサーカスに売られてしまいました。

サーカスでは曲芸をやらされました。

そんなある日、ピノキオは足の骨を折ってしまいます。

サーカスの団長は、それを見て、殺すしかないと言い出しました。

檻の中で泣いているピノキオ。

そこへ妖精が現れ、ピノキオの足を直し、人形の姿に戻して逃がしてくれました。

妖精はピノキオに言いました。

「お父さんを助けに海へ行くのです」と。

ピノキオは妖精に言われた通り、沖に向かって泳ぎ出しました。

しかし、目の前に大きなサメが現れて、ピノキオを一飲みにしてしまったではありませんか。

真っ暗なサメのお腹の中にいるピノキオ。

けれど、目を凝らしてみると、向こうにぼんやりと明かりが見えます。

ピノキオが明かりの方へ歩いていくと、そこにいたのはジェペット爺さん。

ピノキオを探しに海に出たジェペット爺さんも、サメに飲まれていたのです。

2人は再会を喜びましたが、そんな時ではありません。

サメのお腹から逃げ出すため、ひとまずサメの口の近くへ行ってみました。

すると、くすぐったがったサメは大きなくしゃみ。

2人は、その勢いで口から飛び出し、海へと放り出されたのでした。

ピノキオはジェペット爺さんを背負い、必死に泳ぎ、なんとか陸に辿り着きました。

それからというもの、ピノキオはよく働き、勉強するようになりました。

そんなある晩、夢に妖精が現れて、「いい子になりましたね」と語りかけられます。

ピノキオがはっと目を覚ますと、体が人間になっているではありませんか。

それを見て、ピノキオもジェペット爺さんも大喜びしたのでした。

『ピノキオ』の素敵なところ

  • 読み応えがありつつも、わかりやすいピノキオの物語
  • 次々と迫りくる誘惑にドキドキしっぱなし
  • 意外過ぎるジェペット爺さんとの再会

読み応えがありつつも、わかりやすいピノキオの物語

この絵本の特徴は、童話ピノキオをかなり原作に近い形で描いていることでしょう。

けれど、幼児でも無理なく見ることができるよう、わかりやすく、程よい長さでまとまっています。

このバランス感が、この絵本のとても素敵なところです。

文章量は、4~5歳児に日頃読む絵本に比べると、けっこう多く読みごたえは抜群で、ピノキオの辿る紆余曲折が丁寧に描かれます。

けれど、5歳児くらいであれば、集中して見切れるくらいの、絶妙な分量になっているのです。

もちろん、そのボリュームの分、ピノキオのエピソードもしっかりと描かれ、没入感やドキドキ感を高めてくれます。

ディズニーのピノキオとはまた違う、原作寄りのピノキオとして、よりエピソードの細かく分量もあるピノキオの原作を読む前の入門編としてもピッタリでしょう。

ディズニーのピノキオしか知らない子や、そもそもピノキオの物語を知らない子も多いので、大人が思っているよりも、子どもには新鮮味があるのもおもしろいところ。

ぜひ、古典童話やピノキオという物語のおもしろさを、子ども達と味わってみてください。

次々と迫りくる誘惑にドキドキしっぱなし

さて、原作に近く、分量も多いということは、ピノキオへの誘惑がたくさん描かれているということでもあります。

なぜなら、ピノキオはたくさんの誘惑を乗り越えて人間になる物語だからです。

そして、純粋ゆえに、その誘惑のすべてに乗ってしまう物語でもあります。

同時に、甘い話に乗るとろくなことにならないという教訓でもあるわけですが。

この誘惑とそれに乗ってしまうピノキオの姿に、ドキドキさせられっぱなしなのも、この絵本の見どころの一つ。

冒頭すぐに、教科書を売ってしまうピノキオ。

この時点で、子ども達は焦ります。

だって、ピノキオといったら、なんの躊躇もなく、芝居小屋に行くため教科書を売ってしまうのですから。

自分たちと同じくらいの背丈のピノキオと、自分たちとの思考回路の違いをいきなり突きつけられる事件です。

これを見たら、この後のピノキオの行動が不安で仕方ありません。

金貨の実がなる木の話をされれば、

「行っちゃだめだよ!」

「騙されてるよ!」

と止めているのに、案の定ついていってしまうピノキオに、

「あ~・・・」

「いっちゃった~」

とため息。

怠けのもの国の話をされた時も、行ってしまうのが予想できます。

「なんで行っちゃうの!」

と怒り出す子も。

でも、騙されてしまったものは仕方がない。

そこからどうやって助かるのかに注目が集まります。

ここがなんともドキドキして楽しいところ。

木に吊るされるピノキオ。

ロバになって足を折り殺されそうになっているピノキオ。

サメに飲まれるピノキオ。

もう絶体絶命で、どうやったら助かるかもわかりません。

だからこそ、助かった時の安堵感と、さらなる窮地に陥る衝撃がおもしろいのでしょう。

一難去ったらまた一難。

しかも、全部自業自得という何とも言えないドキドキ感も、この絵本とピノキオの大きな魅力です。

意外過ぎるジェペット爺さんとの再会

こうして、ジェペット爺さんを助けに行ったのに、サメに飲まれてしまったピノキオ。

これまでで一番の大事件に、子ども達の緊張感も最高潮に高まります。

しかし、ピノキオはサメのお腹の中で生きていました。

さらには、サメのお腹の中というまさかの場所でジェペット爺さんと再会するという奇跡。

これには子どもたちも驚きつつ、喜びつつ、

「ジェペット爺さんだ!」

「そう言えば、海に行ってたもんね!」

「よく生きてたね!」

と、歓声が上がります。

この偶然による奇跡的な再会の驚きもまた、この絵本のとてもおもしろいところ。

ピノキオと子どもたちの心が重なり合う瞬間です。

これまで、ピノキオの行動にため息をついていた子どもたち。

ここからは、ピノキオのジェペット爺さんを背負って泳ぐといったヒロイックな行動や、ジェペット爺さんと過ごすピノキオの姿に、気持ちが合わさります。

きっと、最後の場面に向けたこの気持ちの重なりがあるからこそ、最後にピノキオが人間になったことへ、大きな喜びと達成感を感じるのでしょう。

この奇跡的な再開からの、物語やピノキオの気持ちの大きな変化も、この絵本のとてもおもしろくドキドキワクワクするところです。

二言まとめ

原作のピノキオという物語を、読みごたえとわかりやすさをバランスよく描き出した。

年長クラスで読むのにぴったりな、ピノキオのドキドキ感を思いきり楽しめる絵本です。

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