【絵本】ゆきのもりのおくりもの(4歳~)

絵本

文・絵:リンデ・ファース 訳:西村由美 出版:岩波書店

クリスマスの夜。

ソフィーの家は、お父さんが忙しくパーティーができません。

寂しさから家を飛び出したソフィー。

その先で、一人ぼっちのヘラジカともみの木に出会いました。

あらすじ

どこか雪が降る街に、ソフィーという女の子が住んでいました。

今日はクリスマス・イヴで、どの家もパーティーをしています。

けれど、ソフィーの家はパーティーを開く時間がありません。

お父さんがいつも忙しいからです。

北国の夜明けは遅く、朝になっても外は暗い。

そんな暗い朝、ソフィーはなにか素敵なことがないかと、家を抜け出したのでした。

ソフィーはあてどなく歩きました。

そのうちに雪は強くなり、吹雪となってあたりは真っ白に。

そんな降りしきる雪の中、目の前に1頭のヘラジカが現れました。

ヘラジカは、優しくソフィーを背中に乗せると、どこかへ歩き出しました。

そして、いつしか街を抜け、吹雪がやむころにはあたり一面、まっしろな森に。

その森にはたくさんの動物たちが住んでいます。

ソフィーが森を歩いていくと、凍った湖が見つかりました。

それと、小さな1人ぼっちのもみの木が1本。

ソフィーはそのもみの木を見て、いいことを思いつきました。

森のみんなを集め、もみの木に贈り物をあげることにしたのです。

だって、1人ぼっちなのですから。

森のみんなは、あちこちから色の着いたものや、きらめくものを持ってきました。

そして、クリスマスの夜。

みんなでもみの木に飾りつけをしたのです。

すると、不思議なことに、もみの木が輝き始めたではりませんか。

まるで、おとぎ話の魔法のように。

それを眺める動物たち。

しかし、その後ろでソフィーはしょんぼりしています。

ソフィーの作戦は成功したのに一体どうして・・・?

『ゆきのもりのおくりもの』の素敵なところ

  • 感情移入しやすいソフィーと過ごす不思議な1日
  • クリスマスの不思議で素敵な出会い
  • ソフィーの本当の願いが叶う最後の場面

感情移入しやすいソフィーと過ごす不思議な1日

この絵本の、なにより絵本へ入り込んでしまうところは、ソフィーという等身大で、とても感情移入しやすいキャラクターでしょう。

ソフィーは夢見がちで、素敵なことを思い浮かべ、魔法のようななにかを楽しみにする女の子です。

これは、同じくらいの子どもなら、とても共感できるところでしょう。

でも、そんなソフィーはクリスマスの日に、お父さんが忙しく、寂しい思いをしています。

自分と重なり合う子が、クリスマスの日に寂しい思いをしているとなれば、その寂しさにも共感できます。

その寂しさから家を出て、素敵なことを探しに出かけることにしたソフィー。

この家から出る動機の時点で、子どもたちにその気持ちが痛いほど伝わります。

お父さんが相手にしてくれない寂しさ。

自分の家だけパーティーしていない悲しさ。

そんなものが、ひしひしとソフィーの暗い家から伝わってくるのです。

だからこそ、家から出たソフィーが、素敵なことと出会えるよう、物語に心がこもるのでしょう。

吹雪の中、ヘラジカにあった時も「よかったね!」と、心から安心している様子でした。

ヘラジカとあった後、さらに小さなもみの木にも出会います。

ここで、1人ぼっちのもみの木と、自分を重ねて贈り物をしようという提案も、この絵本の本当に素敵なところ。

元々共感する力が高い子どもたち。

その共感力が、ソフィーの共感と共鳴し、

「贈り物したら喜ぶもんね!」

「1人ぼっちは寂しいもん!」

と、さらに物語にのめりこませてくれるのです。

この、とても共感でき気持ちを重ねあえるソフィーと一緒に、不思議で素敵な出会いを体験できるのが、この絵本のとても素敵なところです。

特に、最後の場面で見せる等身大な表情は、子どもたちの気持ちとぴったり重なり合うことでしょう。

ぜひ、ソフィーと重なり合う子どもたちの言葉を聞いてみてください。

クリスマスの不思議で素敵な出会い

こうして、ヘラジカやもみの木、森の動物たちと出会ったソフィー。

その持ち前の行動力と優しさで、もみの木に贈り物をする作戦を立てます。

だって、1人ぼっちで寂しそうだから。

この作戦が、森のみんなと森の恵み、すべてを集めた本当に素敵なものでした。

森の動物、それぞれが素敵だと思うものを集めて作るクリスマスツリー。

木の実も、つららも、羽も、貝も、なんでも贈り物になってしまいます。

さらに、素敵なことは本当に魔法が起こること。

飾り付けられたもみの木が、まるで嬉しさを表すかのように、光り輝き始めるのです。

とても幻想的に美しく、見惚れてしまうほどに。

これには子どもたちも、

「光ったよ!」

「電気ないのに!」

「きれいだね~」

と、驚いたりうっとりしたり。

森の中で、光ることがないとわかっていただけに、その予想外の出来事に魔法の存在を強く感じたことでしょう。

同時に、魔法のような素敵なことを求めていた、ソフィーの願いが叶った嬉しさも。

この、不思議な出会いからソフィーの優しさが起こした、素敵で美しい魔法のような出来事も、この絵本のとても素敵なところです。

特に、最後のページの光景は、本当に北欧の空を見上げているような進歩的な美しさに息をのむこと間違いなしなので、ぜひ見てみてください。

まさに自然の作った魔法を目の当たりにすることでしょう。

ソフィーの本当の願いが叶う最後の場面

さて、こうして、作戦は大成功に終わり、とても嬉しそうな動物たちともみの木。

ですが、ソフィーはしょんぼりとしています。

そんな場面で、1つの問いかけがなされます。

「いったい、どうして?」

この言葉に、子どもたちはみんな答えがわかっています。

だって、ソフィーと自分たちの気持ちは重なり合っているから。

どんなにきれいなツリーが出来ても、動物たちがいても、魔法が起きても、本当に欲しいものは最初から決まっているのです。

でも、この絵本では、魔法が起こっても隠し切れないそんな本当の願いにしっかりと向き合い、叶えてくれるのが本当に素敵なところです。

ここで、動物たちとパーティーをし、家に帰っても十分おもしろいこの物語。

けれど、しっかりとソフィーの気持ち、そして子どもたちの気持ちに、この絵本は寄り添ってくれます。

最後に登場する大切な人。

その人が手に持っているもの。

そして、そのあとの時間。

欲しかったものがすべてそろった結末に、子どもたちは心からの笑顔を見せ、

「よかったね!」

と、嬉しそうに終わるのです。

最後の息をのむような美しい光景とともに。

この、どんなに素敵なことがあってもソフィーの中心にあった悲しみに、しっかりと寄り添い解決してくれる最後の場面と、優しい物語もまた、この絵本のとてもとても素敵なところです。

二言まとめ

寂しさから家を出たソフィーの不思議な出会いや、魔法のような出来事に、うっとりと見惚れてしまう。

その根底の寂しさに、しっかりと向き合い寄り添ってくれる、優しく温かく美しいクリスマス絵本です。

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