作:長新太 出版:佼成出版社
ある川に長い橋がかかっていました。
なんと、その橋は通るものをなんでも長くしてしまう橋。
そこを動物たちが通ると・・・。
あらすじ
山の中に川があり、そこに橋がかかっていました。
その橋を人間は怖がって渡りません。
なぜなら、この橋を渡ると体が伸びてしまうから。
ちょうどやってきたネコが橋を渡ると・・・
体が伸びてネーーーコーーーになってしまった。
そして、橋を渡りきると、体は元通り。
次にイヌがやってきて・・・
体が伸びてイーーーヌーーーになった。
次にタヌキがやってきて・・・
ターーーヌーーーキーーーになった。
お腹をたたくと「ペンペン」と変な音がした。
次にブタがやってきて・・・
ブーーーターーーになってしまった。
体が伸びたらなんだかお腹が空いたみたい。
次にゾウがやってきて・・・
ゾーーーウーーーになった。
本当はゾウの重さで橋がつぶれてしまうのだけど、細くなったからか橋は大丈夫だった。
次に鳥が空から降りてきて・・・
トーーーリーーーになった。
いつのまにかあたりは暗くなってきて、時間は夕方。
そして、夜になると・・・
『へんてこへんてこ』の素敵なところ
- なんでも長くなってしまうへんてこな橋
- 「長くなったからねぇ」と納得してしまう変化
- 体が伸びたヘンテコ動物の姿に笑いが止まらない
なんでも長くなってしまうへんてこな橋
この絵本のなによりおもしろいところは、橋を渡るとなんでも体が伸びてしまうという、シンプル過ぎるおもしろさでしょう。
橋に入った瞬間に、体がにゅーっと伸びてしまう動物たち。
その見た目も楽しいのですが、さらにおもしろいのが動物の名前。
体が伸びると、名前まで伸びて「イヌ」なら「イーーーヌーーー」、「タヌキ」なら「ターーーヌーーーキーーー」に変わってしまうのです。
このヘンテコな見た目と、ヘンテコな名前に笑わずにいられません。
シンプルかつ凝縮されたおもしろ要素に、つい吹き出してしまいます。
「体めっちゃのびてるー!」
「名前も伸びてる!」
「変な名前~!」
と、子どもたちは大盛り上がり。
シンプルな笑いの破壊力を思い知らされることでしょう。
この、橋を渡ると体と名前が伸びるというシンプルなおもしろさが、この絵本のなにより素敵なところです。
ぜひ、思いっきり間延びさせて動物の名前をヘンテコに読んであげてください。
「長くなったからねぇ」と納得してしまう変化
そんな体が伸びてしまう動物たちですが、体と名前以外にも、ある変化がありました。
それがいつもの特徴的な動きや音の変化です。
タヌキなら、お腹をたたくと「ポンポコポン」というのが普通だと思いますが、この絵本では違います。
体が伸びているので「ペンペン」といつもの音が出ないのです。
ゾウなら伸びて細くなっているからいつもより軽く、
ライオンは「ガオー」ではなく、「フオー」と見た目通りの情けない鳴き声。
こんな風に、長くなったことでの変化が現れます。
そして、おもしろいのはそのどれもが「長くなったからねぇ」と、妙に納得できるものになっているというところ。
このそれぞれの動物らしい、体が長くなったからこその変化も、この絵本ならではのおもしろいところとなっています。
体が伸びたヘンテコ動物の姿に笑いが止まらない
さて、ここまで様々なおもしろい要素を取り上げてきましたが、その根源となるのはやはり体がにゅーっと伸びた動物たちの絵。
それがたまらなくおもしろいからこそ、他の要素が輝くのだと思います。
その伸び方は特徴的で、胴だけが見事ににゅーっと伸びるのです。
これが絶妙にヘンテコ。
きっと、他のところは普通なのに、胴だけ伸びているアンバランスさが、全部が伸びているよりヘンテコに見えるのでしょう。
ここに長新太さんが描く動物たちのゆるゆるっとした感じが加わって、妙に力が抜ける絵に。
そこへさらに力抜ける「イーーーヌーーー」というネーミングも加わり、見事に肩の力を抜いてくれます。
そして、そこに笑いが起こることで、全身骨抜きに。
この肩の力を抜いてくれ、細かいことを忘れさせてくれる、ヘンテコな動物たちのヘンテコすぎる見た目も、この絵本のとてもおもしろく素敵なところです。
ただでさえゆるゆるした長新太さんの動物が、伸びてさらにゆるゆるになっているところをぜひ見てみてください。
二言まとめ
橋を渡ると体が伸びるという、シンプル過ぎるおもしろさに笑いが止まらない。
動物たちの見た目と名前の変化に、自然と肩の力が抜けてしまうヘンテコな絵本です。
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