文:なかがわちひろ 絵:コヨセ・ジュンジ 出版:徳間書店
小人たちに、迷子探しの依頼がありました。
小人たちは、たくさんの重機とともに捜索に向かいます。
さあ、とても小さく、とても大規模な捜索作戦が始まります。
あらすじ
ある雨の日。
おたすけこびとのもとへ、一本の電話がかかってきました。
電話をかけたのはおばあさん。
迷子を捜してほしいということです。
すぐにおばあさんに迷子の特徴を聞くと、作戦開始。
ブルドーザーや、クレーン車、ヘリにトラック、ショベルカー・・・
たくさんの車両にたくさんの小人たちが乗り込み出発します。
まずは、おばあさんの家の庭。
車両を使い、暗い縁の下や、鉢植えの下など、隅々まで探します。
次は、家の隣にある公園です。高所作業車で花壇の中まで探します。
植え込みの中もくまなく調べていると、ついに迷子を発見。
その正体は子猫でした。
ただ、安心はできません。
ネコがいたのは排水溝の中。
雨で水位があがり、今にも流されそうになっています。
小人たちは、すぐに救出作戦を開始、見事な連携ですぐに子猫までの経路を確保します。
水をせき止めている間に、子猫をクレーン車で釣り上げる作戦。
見事成功し、子猫をトラックの荷台に乗せると、持ってきた傘を使い雨宿りです。
タンクローリーが運んだミルクを飲むと、安心したのか眠ってしまいました。
しばらくして、目を覚まし空を見上げてみると・・・。
『おたすけこびとのまいごさがし』の素敵なところ
- 心躍るたくさんの重機や緊急車両たち
- 小さな小人たちの大規模な捜索活動
- 小人たちの一糸乱れぬ無駄のない救助活動
心躍るたくさんの重機や緊急車両たち
この絵本で、まず目を奪われるのが、たくさんの重機や緊急車両でしょう。
しかも、この絵本では出し惜しみなど微塵もせず、出動のタイミングで、見開きのページにところ狭しと勢ぞろいするのだからたまりません。
ショベルカーにダンプカー、トレーラー、タンクローリー、ブルドーザー・・・。
もう重機は全種類網羅しているのではないかというレパートリーです。
ですが、これだけではありません。
梯子消防車や、救助ヘリなどの緊急車両までいるのです。
これには、子どもたちも大興奮。
「ショベルカーだ!」
「はしご車もいる!」
「ヘリコプターもいるよ!」
と、車両の名前が止まりません。
まさにドリームチームといったような、壮観な光景が広がっているのです。
中でも目を引くのが、梯子消防車。
小人たちの車両は黄色に統一されているので、梯子消防車も黄色。
いつもと違う色合いに、
「はしご車も黄色だよ!」
と、驚きの声をあげていました。
しかも、これだけの数の車両がいるのに、創作活動でもれなく活躍するのがまたすごい。
それぞれの特徴を活かした見事な働きを見せてくれます。
この、たくさんの重機や緊急車両が勢ぞろいし、みんなで協力する姿を見ることができるドリームチーム感が、この絵本の素敵で心躍るところです。
小さな小人たちの大規模な捜索活動
そんな車両たちは、さっそく迷子の捜索を開始します。
これがなんとも小人らしいところも、この絵本のおもしろいところとなっています。
家の庭など、普通の人にとってはそこまで広くない場所も、小人にとっては広大です。
庭から縁側へ登るためには高所作業車が必要だし、家の中を見るためにはヘリコプターを飛ばします。
植木鉢の中を確認するためにも、重機の協力が不可欠です。
これは公園でも同じで、花壇を探すのに高所作業車が必要だったり、植え込みの中などが、まるでジャングルのようにうっそうと見えたりします。
そこで出会うバッタやテントウムシなどは、まさに怪獣。
小人の背丈ほどの大きさです。
この、ぱっと見はものすごく家の庭や公園という見慣れた風景なのに、重機が工事現場のように走り回っているというギャップが、なんともおもしろい光景になっているのです。
小人が、いつも暮らしている身近な場所で、たくさんの車両を使い捜索活動をする・・・。
これが、この絵本のとてもおもしろくワクワクとするところです。
小人たちの一糸乱れぬ無駄のない救助活動
こうして、子猫を見つけた小人たち。
排水溝の中にいる子猫の救助作戦が始まります。
これが本当に見事で無駄がないところも、見ていてとても気持ちいいところです。
すぐにスロープを設置し、排水溝へ車両が降りられるようにし、
ハサミ付きショベルカーが花壇の立札を使い水をせき止め、
子猫が逃げないようヘリで進路をふさぎ、
ショベルカーのかごに乗った小人が子猫に優しく語り掛け、
クレーン車が救助ボートでを排水溝へ降ろす・・・。
これらがすべて同時に行われているのです。
見れば見るほど素晴らしい連携。
そして、これらのにくいところが、ほとんど絵でしか語られないところ。
よーく見れば見るほど、それぞれが見事に仕事をし、それらが連携しているのがわかるのです。
だって、この連携をしている裏で、次のページで使う道具を準備していたりするのですから。
これにより、読み返したときにたくさんの発見があるのもおもしろいところとなっていて、
「あ!これ子猫を乗せるのに使ってた!」
「最初から準備してたんだ!」
など、どんなものを使ったのか知っているからこその気付きがあるのです。
この、パッと見ただけでも素晴らしいけれど、よく見れば見るほどより小人たちの仕事力の高さが伝わってくるところも、この絵本のとてもおもしろく素敵なところです。
最後のおばあさんの家まで送り届ける場面の連携も素晴らしいので、ぜひじっくり見てみてくださいね。
二言まとめ
小人たちがたくさんの車両を巧みに使い、迷子の捜索をする姿に心が躍る。
ページの中を見れば見るほど、レベルの高い仕事ぶりに気付かされ感心してしまう、読み返すたびに新たな発見がある絵本です。
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