【絵本】雪ダルマは生きている(5歳~)

絵本

文と絵:ティエリー・デデュー 訳:田中一明・大野博人 出版:カクイチ研究所・ぷねうま舎

雪ダルマと遊ぶのが大好きな森の動物たち。

ですが、春が近づくと雪ダルマは溶けてしまいました。

そんな時、溶けた雪は海へ行くと知った動物たちは、雪ダルマを探しに行くことに。

あらすじ

夜明けとともに目を覚ましたリス、ウサギ、フクロウ、ハリネズミ。

彼らは急いであるところに向かいます。

そこは、雪ダルマのところ。

雪が降り始めてから、動物たちは毎日雪ダルマと遊び、楽しく過ごしていたのです。

雪ダルマは誰よりも遊び上手で、いろんな国の話もしてくれました。

そんなある日、ある変化が訪れます。

クロッカスが芽を出したのです。

そう、春が近づいてきているのです。

でも、雪ダルマ本人はまったく気にしていない様子。

それどころか「泳ぎを習いたい」と言っているのだそう。

動物たちが心配する通り、温かくなるにつれ、雪ダルマの力は抜け、ついに溶けていなくなってしまいました。

悲しむ動物たち。

ところが、ある日クマ先生の授業を聞き、その悲しみは吹き飛びました。

だって、雪は解けて水になり、水は山から海へ流れていくというのです。

それだったら、また雪ダルマに会えると思い、動物たちはすぐに海へ向かって出発したのでした。

海に着くといかだを組み、みんなで海の上を探します。

けれど、雪ダルマの影も形もありません。

動物たちはがっかりして、空を見上げたその時・・・。

溶けた雪ダルマはどこに行ってしまったのでしょう?

動物たちは、また雪ダルマに会えるのでしょうか?

『雪ダルマは生きている』の素敵なところ

  • 雪ダルマを中心とした季節の変化のハラハラ感
  • 水の循環を動物たちと一緒にたどる旅
  • 雪ダルマが遊び上手だった納得の理由

雪ダルマを中心とした季節の変化のハラハラ感

この絵本のとてもおもしろいところは、春を待ち遠しく感じないことでしょう。

雪ダルマと遊ぶのが待ち遠しくて、夜明けとともに起き、雪ダルマと遊びに行く動物たち。

一緒に遊ぶ姿は本当に楽しそうだし、雪ダルマが遊び上手なことも伝わってきて、一緒に遊びたくなってしまいます。

そんな、毎日雪ダルマと遊んでいる動物たちにとって、春の訪れは別れを意味します。

クロッカスの芽を見つけ、慌てるリス。

別れの時が迫っているのを感じている動物たち。

この、じわじわと春が迫ってくる感覚が、ゆっくりとしたページめくりと相まって、カウントダウンのようなハラハラ感を生み出しているのです。

ページをめくるたびに、

「雪ダルマ大丈夫かな?」

「もう、溶けちゃうよ・・・」

と、心配する子どもたち。

普通なら、春を楽しみにするものですが、この絵本では雪ダルマが中心にいることで、反対になっているのがなんともおもしろいところです。

でも、どんなに心配しても春はやってきます。

力が抜け、ついに溶けていなくなってしまう雪ダルマ。

動物たちとまったく同じ気持ちで、

「あ~、溶けちゃった・・・」

「悲しいね・・・」

「春になっちゃったんだ・・・」

と、子どもたちも悲しんでいました。

この、雪ダルマが溶けるとわかった状態で、少しずつ春になっていくハラハラ感が、この絵本のとてもおもしろいところです。

なにしろ、この物語は雪ダルマが溶けたことがきっかけで、大きく動き出すのですから。

きっと、ここからの話がとてもおもしろく、動物たちに感情移入できるのは、この溶けるまでをゆっくり丁寧に描いているからこそだと思います。

水の循環を動物たちと一緒にたどる旅

こうして溶けてしまった雪ダルマ。

けれど、自然とはよくできたもので、溶けた雪はそのまま消えてしまうわけではありません。

自然の中を循環しているのです。

それを知るきっかけになったのが、クマ先生の授業です。

水は海に流れ着くという話を聞き、ピンときた動物たち。

雪ダルマに再会する方法を考え付きます。

もちろん、見ている子どもたちも。

「海に行けばいいんだ!」という子どもたちの言葉と、「だったら、友だちの雪ダルマにまたあえる!」という動物たちの言葉がリンクしたのは、とてもおもしろいところでした。

こうして、海へと繰り出し雪ダルマを探す動物たちですが、もちろん広大な海の中、ちっぽけな雪ダルマが見つかるはずもありません。

動物たちも、子どもたちも、広い海で探すことの無謀さに絶望してしまいます。

でも、水の循環には、クマ先生の授業の先がありました。

海に流れた水もそのままではいないのです。

それを感じられるのが、この絵本の最後の場面。

ただ、海で再会するのではなく、その先を体感できるのがなんとも素敵な旅の終わりとなっているのです。

この、動物たちと一緒に水の循環を、自分たちの足で辿っていく旅も、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。

自分たちの目で見に行ったことで、ただ水の循環を習うよりも、何倍も水の循環が生き生きと感じられることでしょう。

そして、自分たちの作った雪ダルマが溶けた後、次の雪の日へと生きて繋がっていることも。

雪ダルマが遊び上手だった納得の理由

さて、水が一巡りする様子を見て終わったこの絵本ですが、雪ダルマの秘密を知ると、なぜ雪ダルマがあんなにも遊び上手だったのかわかってきます。

色々な遊びを知っていて、様々な国の話をしてくれる雪ダルマ。

でも、雪ダルマは基本的にその場所にいて、そんなにも色々なことを知っているのには違和感があるのです。

子どもたちも最初は、

「なんでそんなに物知りなんだろう?」

「雪ダルマは空を飛ばないでしょ!」

「なんで暑い国のことも知ってるんだろう?」

と、雪ダルマの話に色々な疑問を持っていました。

しかし、最後まで絵本を見ると、その秘密がわかります。

だって、雪ダルマは海に出た後・・・。

この種明かしのように、雪ダルマの秘密に急な納得感が出てくるのも、この絵本のとてもおもしろいところです。

読み返したとき、雪ダルマを見る目が、最初とは大きく変わっていることでしょう。

絵本の中の雪ダルマだけでなく、自分で作った雪ダルマへも、ここに来るまでの色々な想像が膨らむかもしれませんね。

ぜひ、雪ダルマが溶けた時、この絵本を読んであげてください。

きっと、その別れをより素敵な体験にしてくれると思いますよ。

二言まとめ

雪ダルマが溶けたことをきっかけに始まる、水の循環をたどる旅がおもしろい。

雪が溶けたあとどうなるのかを、動物たちと一緒に自分の目と足で体感できる科学絵本です。

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