作:カイ=ベックマン 絵:ペール=ベックマン 訳:やまのうちきよこ 出版:偕成社
夜、女の子は人形がないと眠ることができません。
女の子はベッドへ人形を持ってきました。
すると、人形もクマがいないと眠れないと言います。
仕方がないのでクマもベッドへ持ってくると、今度はクマが・・・
あらすじ
夜になり、女の子リーセンは眠る時間になりました。
リーセンは人形がないと眠れません。お母さんに人形を持ってくるよう言いますが、自分で取ってくるよう言われてしまいました。
リーセンは、自分で人形を持ってきてベッドに入れました。すると、人形がリーセンにクマがいないと眠れないと言ってきます。リーセンはクマも持ってきてベッドに入れてあげました。
今度はクマがリーセンにイヌがいないと眠れないと言ってきました。リーセンはイヌもベッドに入れてあげました。
すると、イヌもネコがいないと眠れないと言ってきます。リーセンはネコもベッドに入れてあげました。
その後も、ウサギ、操り人形、ヒツジ、ライオン、アヒルと、ベッドの上にはどんどん連れてきたものが増えていきます。
アヒルがお願いしたボールをベッドに置くと、人形たちはやっと静かになり眠ることができました。
でも、リーセンは眠ることができません。だって、ベッドの上は人形たちでいっぱいなのですから。
リーセンはお母さんを呼びました。すると、お母さんが・・・

おしまい!
『あたし、ねむれないの』の素敵なところ
- ベッドの上がどんどん埋まっていく大忙しな繰り返し
- 一生懸命さが全身から伝わってくるリーセンの姿
- 自分だけ眠れないまさかの結末とやっぱり頼りになる優しいママ
ベッドの上がどんどん埋まっていく大忙しな繰り返し
この絵本のなによりおもしろいところは、どんどんベッドの上が埋まっていく楽しい繰り返しです。
人形を持ってきたので眠れるかと思ったら、人形からまさかの注文をされてしまいます。しかも、人形の頼み方はリーセンがお母さんに頼んだ時とまったく一緒。リーセンがお母さんの立場になってしまいます。
仕方なくクマを連れてくると、さらにクマからも頼み事が・・・。子どもたちも、

クマさんも!?



また~?
とまさかの展開に驚きつつも楽しそう。さらにクマがなにを言うのかとワクワクしながら見ていました。
もちろん、クマも頼みごとをしてきます。この頼みごとの連鎖がとてもおもしろい。どこまで続くのか?次は誰がやってくるのかとワクワクが止まりません。
また、ベッドの中の仲間だけでなく、決まり文句の中の言葉も増えていくのもリズミカルで楽しいところ。
「リーセン、クマを連れてきてよ。クマがいないとあたし眠れないの。」という決まり文句から、
「リーセン、ボールを持ってきてちょうだい。ボールがないと、お人形もクマもイヌもネコもウサギも操り人形もヒツジもライオンも私も眠れません。」と、どんどん眠れない人が増えていくのです。
ベッドの上が埋まっていく視覚的な効果も相まって、ものすごく「たくさん」な感じが伝わってきておもしろい。



めっちゃ多い!



まだ連れてくるの!?
と、子どもたちも視覚と言葉の両方で「たくさん」を味わい楽しそう。際限なく増えていくというのは、鉄板のおもしろさがありますね。
この、止まらない頼みごとの連鎖から、どんどん仲間や言葉が増えていく大忙しの繰り返しが、この絵本のとても楽しいところです。
一生懸命さが全身から伝わってくるリーセンの姿
リーセンは人形たちから頼みごとをされるたび、ベッドと家の中を行ったり来たりすることになります。
絵本の中では、左のページにベッド、右のページにリーセンがベッドへ新しい仲間を運んでくる姿が、後ろ姿をメインに描かれます。このベッドへ仲間を運んでくる一生懸命なリーセンの姿から、リーセンの様々な感情を感じ取ることができるのも、この絵本の素敵なところとなっています。
持ってくるものの大きさは様々で、持ち上げてくるものもあれば、抱えてくるもの、中には背負ってくるものもあり、リーセンはとても大変そう。



重そう・・・



転ばないようにね・・・
とパジャマの裾を踏んでしまっていたり、よろけ感のあるリーセンの足取りに心配そうな声も上がります。
重さだけでなく、リーセンの姿からは感情も伝わってきます。



疲れたーって顔してるよ



ボール楽しそうだね!遊びたくなっちゃったのかな?
など、リーセンがどんな思いで頼まれごとを解決しているのか、それぞれに想像が膨らみます。見る人によって、リーセンを見る目が全然違うのがなんともおもしろく、ボールを持ってくる場面では、「楽しそう」という子もいれば「怒ってる」という子もいるなど、想像の幅がとても広いものとなっていました。
この、なにかを運ぶリーセンの姿1つから、リーセンの様々な感情を感じ取り、見た人それぞれの想像が広がっていくのも、この絵本のとてもおもしろいところです。
ぜひ、子どものリーセンに対する言葉に耳を傾けてみてください。きっと、子どもの心の中を少しだけのぞくことができると思いますよ。
自分だけ眠れないまさかの結末とやっぱり頼りになる優しいママ
リーセンは一生懸命仲間たちをベッドに運んできます。運んできた数はなんと10個。10個目のボールでなんとか頼みごとは打ち止めとなり、人形たちはゆっくり眠ることができました。
・・・が、肝心なリーセンの眠る場所がありません。子どもたちも薄々感づいてはいましたがやっぱりな結果と、リーセンの悲しそうな後ろ姿に、



リーセンかわいそう・・・



あんなに頑張ったのに・・・
と、がっくり肩を落とします。気持ちよさそうに眠る人形たちと、目をこすり悲しそうにたたずむリーセントの対比がなんとも残酷。
お母さんに人形を自分で取ってくるよう言われたあと、1人で寝るためにここまで頑張ったリーセン。ですが、ついにお母さんに助けを求めます。リーセンの声を聞きやってきたお母さん。
この最後の場面での、お母さんの対応がリーセンにも人形たちにも、とても優しい愛情たっぷりなものになっているのも、この絵本のとてもとても素敵なところとなっています。
自立のために厳しいことも言うけれど、やっぱり、最後どうしようもなくなった時、頼りになり助けてくれるのはお母さんだという安心感を強く感じ取れることでしょう。
特に、リーセンだけじゃなく、人形たちのことも同じくらい大切にしていることが伝わってくる、最後のページは必見。心がぽっと温まり、つい口元が緩んでしまいますよ。
二言まとめ
1人で眠るために人形を持ってきたら、次々頼みごとをされ眠れないという、どんどん増えていく繰り返しがおもしろい。
ほとんどしゃべらず、一生懸命ベッドと家の中を往復するリーセンの姿から様々な気持ちを想像させられる、心温まるおやすみなさいの絵本です。
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