作・絵：せなけいこ 出版：スズキ出版
雨が降ると「いやだなぁ」と思う人は多いはず。
でも、雨雲だって好きで降らせているわけではないのかも。
悪気のない子どもの雨雲が近づいてきたら・・・。
逃げる？逃げない？
あらすじ
小さな雨降り雲が空を飛んでいると、楽しそうに遊ぶ３匹の猫を見つけました。
何をしているのか見に行くと、「雨だ！」と猫たちは逃げていきました。
なぜかわからない雨降り雲は、猫を喜ばせるため魚の形になって近づいていきました。
でも、猫たちはやっぱり逃げてしまいます。
いくら追いかけても猫たちは遊んでくれず、とうとう猫たちの家まで来てしまいました。
雨を降らせ続ける雨雲に、猫たちはついに怒ってしまいました。
気球に乗って雨降り雲の所へ行った猫たちは、雨降り雲に水をぶっかけました。
小さな雨降り雲と猫たちはずっと仲良くなれないのでしょうか。
『ちいさなあめふりぐも』の素敵なところ
- 悪気はないけど迷惑
- 雨降り雲の気持ちも、猫の気持ちも両方よくわかる
- 雲の特性を活かした素敵な結末
悪気はなく近づく雨降り雲。
猫を喜ばせようと形を変える工夫までしています。
ですが、近づくだけで雨が降るので、猫としては大迷惑。
せっかく遊んでいたのに台無しです。
このジレンマが別々の視点を同時に見せてくれます。
雨降り雲も、猫たちもどちらも悪くないのにわかりあえない。
お互い傷ついてしまいます。
でも、どちらが正しいとも言えない。
そんななんとも言えない空気感がこの絵本にはあります。
子どもからも様々な声が上がります。
「雲さんかわいそう」
「でも、雨で遊べなくなるの嫌だよね」
などなど、子どもたちも色々考えさせられているようです。
そんな答えの出ないお話の最後に待っているのはとっても素敵な結末でした。
その結末に、雲ならではの科学なひねりが加わっている所がなおさら素敵です。
人とのかかわりの複雑な部分が本当に伝わりやすく描かれた絵本です。
コメント