文:おーなり由子 絵:はたこうしろう 出版:講談社
激しい雨の中、傘を投げ捨て遊んだことはありますか?
全身で雨の重さや音を感じ、水しぶきをあげながら。
物凄い解放感、自分を自然の一部だと感じさせてくれる瞬間です。
そんな気持ちを味あわせてくれる絵本です。
あらすじ
ある暑い日。
男の子が家の庭先に出ると、急に黒い雲が出てきた。
すると、ぽつぽつぽつと雨が降ってきた。
空や地面の匂いがする。
傘を差すと、そこに雨粒が当たり、太鼓みたいな音がする。
次第に雨は激しくなった。
あまりの音に男の子が「うっるっさーーーい!」と雨に言うと・・・。
さらに雨が降ってきた。
色んな音、いっぱいの音。
雨が歌っている。
傘をよけると、ぼくのところに雨の声が降ってくる。
傘を捨て、靴を脱ぎ、雨を蹴飛ばし走り出す。
跳んで、水しぶきをあげる。
雨粒がおでこをつついて「あそぼ!」と言っている。
男の子は雨に「もっと、こーい!」と言う。
雨はどんどん降って来て、男の子と楽しそうに遊び続ける・・・。
『どしゃぶり』の素敵なところ
- 色々な視点から見た、色々な降り方の雨たち
- 思い切り雨に打たれて遊びたくなる
- すっきりとした終わり方が、夕立のような雨にぴったり
この絵本の素敵なところは、雨のリアルさです。
降り始めの小さな雨粒や、土砂降りの線のような雨、自分から見上げた一人称視点の雨や、地面に落ちる雨粒など、本当に雨が降っているようにリアルな絵で描かれます。
また、絵だけでなく、音もとてもリアルです。
降り始めの「ぽつっ、ぴたん ぽつぽつっ!」
傘にあたる「とん ととん ぼつんっ ばらばらばらっ」
土砂降りの「ずざあ ずざあ ずざあ ずざあああ」
といった具合に、本当の雨の音が想像できてしまいます。
特に、土砂降りの時には色々な音が、同時にしている様子も描かれていて、ますます臨場感があがります。
そんな中、傘を捨てて、靴を脱ぎ、雨の誘いに乗って駆け出す男の子。
水しぶきをあげる姿は、本当に楽しそうでまるで雨が友だちのようです。
その感性も素敵で、雨の音を声として聞き、対話しながら遊びます。
ここでの飛沫や、雨が男の子の体を打つ様子も見事な描かれ方で、雨の感触やその温度を感じてしまうほどです。
そんな激しく楽しい水遊びですが、急に振る雨は、急に去ってしまいます。
その束の間感と雨上がりの晴れ上がった空が、この絵本にスッキリ感と爽やかさを与え、さらに気持ちのいい絵本にしてくれています。
びしょぬれになった後の、家での一幕もほっこりして素敵です。
雨を視覚だけでなく、音、匂い、感触、全てで感じさせ、その中で思い切り遊ぶ楽しさや解放感まで味あわせてくれる絵本です。
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