作・絵:マリー・ルイーズ・フィッツパトリック 訳:加島祥造 出版:フレーベル館
人はみな進んでいく。
「あそこ」へ。
「あそこ」へはどうやって行くんだろう。
「あそこ」はみんな行くのかな。
「あそこ」っていったいどんなところだろう。
あなたは「あそこ」へ行った?
あらすじ
荷物をカバンにつめて、女の子は出発しようとしている。
「あそこ」へ。
いつになったらたどり着けるのだろう。
看板があるのかな。
どれくらいかかるんだろう。
「あそこ」へ行った時、自分は大きくなっているのかな。
大人みたいになって、子どもみたいなことは言わないのかな。
「あそこ」ではひまわりは何色?
空は青い?
虹もあるのかしら。
「あそこ」へ行ったらなんでもわかるようになるの?
ジャングルみたいかな。
ドラゴンがいるのかな。
こぐまさんもいるかな。
だれでもみんな「あそこ」へ行きたいの?
女の子の目指す「あそこ」とは・・・。
『あそこへ』の素敵なところ
- それぞれの「あそこ」を想像できる
- 想像力をかきたてる絵と文章
- 急がなくていい素敵な最後
正体の語られない「あそこ」。
場所も、距離も、どんなところかもわからない「あそこ」。
だからこそ、見ている人はそれぞれ、あれこれと想像してしまいます。
「未来」「大人になる」「大きくなる」「異世界」「おとぎの国」などなど。
見る人の人数の分だけ、「あそこ」はあるのでしょう。
大人が見ても面白く、子どもとはまた違った「ここ」と「あそこ」が見えるかもしれません。
この抽象的な「あそこ」への想像力をかきたてるのが、絵と文章です。
「あそこ」は抽象的なのに、絵や文章はとても具体的です。
それは女の子の視点で「あそこ」について考えているからでしょう。
でも、どれも断定はしません。
疑問形です。
なので、なおさら想像力が膨らむのです。
そんな物語の最後がまた素敵です。
先や答えを急がず、「いま」に戻ってくるのですから。
具体的な絵と文章から、抽象的なたくさんのことを考えさせてくれる。
子どもから大人まで、人生が進むたび読みなおしたくなる絵本です。
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