あそこへ(5歳~)

絵本

作・絵:マリー・ルイーズ・フィッツパトリック 訳:加島祥造 出版:フレーベル館

人はみな進んでいく。

「あそこ」へ。

「あそこ」へはどうやって行くんだろう。

「あそこ」はみんな行くのかな。

「あそこ」っていったいどんなところだろう。

あなたは「あそこ」へ行った?

あらすじ

荷物をカバンにつめて、女の子は出発しようとしている。

「あそこ」へ。

いつになったらたどり着けるのだろう。

看板があるのかな。

どれくらいかかるんだろう。

「あそこ」へ行った時、自分は大きくなっているのかな。

大人みたいになって、子どもみたいなことは言わないのかな。

「あそこ」ではひまわりは何色?

空は青い?

虹もあるのかしら。

「あそこ」へ行ったらなんでもわかるようになるの?

ジャングルみたいかな。

ドラゴンがいるのかな。

こぐまさんもいるかな。

だれでもみんな「あそこ」へ行きたいの?

女の子の目指す「あそこ」とは・・・。

『あそこへ』の素敵なところ

  • それぞれの「あそこ」を想像できる
  • 想像力をかきたてる絵と文章
  • 急がなくていい素敵な最後

正体の語られない「あそこ」。

場所も、距離も、どんなところかもわからない「あそこ」。

だからこそ、見ている人はそれぞれ、あれこれと想像してしまいます。

「未来」「大人になる」「大きくなる」「異世界」「おとぎの国」などなど。

見る人の人数の分だけ、「あそこ」はあるのでしょう。

大人が見ても面白く、子どもとはまた違った「ここ」と「あそこ」が見えるかもしれません。

この抽象的な「あそこ」への想像力をかきたてるのが、絵と文章です。

「あそこ」は抽象的なのに、絵や文章はとても具体的です。

それは女の子の視点で「あそこ」について考えているからでしょう。

でも、どれも断定はしません。

疑問形です。

なので、なおさら想像力が膨らむのです。

そんな物語の最後がまた素敵です。

先や答えを急がず、「いま」に戻ってくるのですから。

具体的な絵と文章から、抽象的なたくさんのことを考えさせてくれる。

子どもから大人まで、人生が進むたび読みなおしたくなる絵本です。

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