作:あきびんご 出版:偕成社
一見親切そうなオオカミさん。
でも、それはヤギを食べるための罠。
それに気づいてしまったヤギさんは、震えながらも勇気と知恵を絞ります。
恐怖の時間の始まりです。
あらすじ
南の島に色々な動物が住んでいました。
ある日、ヤギがオオカミの家の前で夕立に遭いました。
ヤギがずぶ濡れになって困っていると、オオカミが家に誘ってくれたので、ヤギはオオカミの家で雨宿りをすることにしました。
オオカミはタオルを渡してくれ、ヤギが体を拭いている間、オオカミは三味線を手にして歌い始めました。
その歌は、上手く聞き取れないような歌でしたが、耳のいいヤギにはしっかりと聞こえました。
それは夕立が来たときは、家にいれば美味しい客が勝手にやってくる。
美味しい客は帰さない。
という歌でした。
美味しい客が自分のことだとすぐにわかり、ヤギは震えました。
しかし、なんとか平気な顔をして、オオカミから三味線を借り、一曲歌いだしました。
その歌は、夕立が来たらむしゃくしゃして変になる。
この前はオオカミを3匹食べた。
なにをしでかすかわからない。
という歌でした。
オオカミはびっくりしました。
その間にも、歌っているヤギの雰囲気がおかしくなってきます。
次第に大声になり、早口になっていきます。
オオカミは心配になり、一人息子にお使いを頼み、家から出しました。
ヤギはますます頑張り、イスから立ち上がり、足を踏み鳴らしました。
オオカミは本当に恐ろしくなり、奥さんに息子を探しに行くように言い、家から出しました。
ヤギはさらに声を張り上げ、暴れながら歌いました。
ヤギはオオカミを騙し抜くことが出来るのでしょうか。
『ゆうだち』の素敵なところ
- オオカミへ恐怖で立ち向かうヤギ
- ヤギの迫真の演技が怖すぎる
- 立場が逆転する痛快さ
最初は自然の摂理にしたがって、ヤギを食べようとしているオオカミ。
その後、勘違いや、ごまかしたりして、逃げ出すお話は数あります。
しかし、このお話は一味違い、恐怖を恐怖で返します。
面と向かって、真っ向から立ち向かうのです。
オオカミに食べられる恐怖。
それを歌を通して、そっくりそのまま返します。
その歌う姿は、徐々にエスカレートしていき、まるで悪魔のように見えてきます。
最初は「オオカミに食べられちゃう」と、か弱いヤギを心配していた子も、ヤギのあまりの変わりように「怖い!」「オオカミ逃げて!」とオオカミ目線になってしまう子も多数。
本当にオオカミを食べ始めるのではないかと思えるほどの迫真の演技です。
最初はヤギが捕食者からの恐怖に震えていたのに、いつの間にか、オオカミが捕食される側になり、恐怖で震えあがる。
そんなある意味小細工なしで、立場が逆転する様が本当に痛快です。
ヤギが一対一でオオカミを恐怖に陥れる、珍しい絵本です。
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