作・絵:梅田俊作 梅田佳子 出版:ポプラ社
たくさん遊んでくれて、大好きなおじいちゃん。
でも、いつかは自分より先に亡くなります。
その喪失感が痛いほどに伝わる、とても温かい絵本です。
あらすじ
おじいちゃんが死んだ。
おじいちゃんの部屋はそのままなのに、おじいちゃんはもういない。
男の子と犬のタロはぼんやりしたままで、散歩に行くことにした。
おじいちゃんのマフラーでタロを包み、宅配便ごっこをした荷車に乗せた。
町を歩くと、おじいちゃんとの思い出が色々なところにあった。
おじいちゃんの植えたチューリップ。
おじいちゃんが背中を押してくれたブランコ。
おじいちゃんが植えた桜の木。
おじいちゃんと通った海。
男の子とタロは千年イチョウの森へたどり着いた。
ここもおじいちゃんとたくさん遊んだ場所だった。
「もういいかーい」
どこかで声がした。
タロが耳をそばだてていると、雨が降り出した。
男の子とタロは千年イチョウで雨宿りした。
そこでおじいちゃんから聞いた、千年イチョウの昔話を思い出した・・・。
『おじいちゃん』の素敵なところ
- 子どもの目線で描かれる死の喪失感がとてもリアル
- 同時にたくさんのことを残してくれていることにも気づく
- おじいちゃんに会いたくなる
なにも変わらないのに、おじいちゃんだけがいない。
そんな現実感はないのに、確実にある喪失感。
それが子どもの目線と、子どもの言葉で純粋にリアルに描かれています。
悲しいとも、寂しいとも違う感覚。
死ぬってどういうことなのかを、痛感させられます。
でも、散歩に出かけ町を歩いてみると、おじいちゃんの生きた証が色々なところで見つかります。
形として遺したもの。
人の心に遺したもの。
自分の中の思い出。
それらと向き合う中で、おじいちゃんの死を実感していきます。
最後の場面では、本当の意味でおじいちゃんの死を受け入れたのかもしれません。
この絵本を読むと、おじいちゃんに会いたくなります。
優しくて、たくさん遊んでくれたおじいちゃん。
でも、自分よりも先にいなくなってしまうおじいちゃん。
そんなおじいちゃんの死を心情豊かに描いた絵本です。
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