100えんのにじ(5歳~)

絵本

作:くすのきしげのり 絵:にきまゆ 出版:フレーベル館

人をばかし続けたタヌキ。

疑うことを知らない子ども。

二人が出会った時、疑う心と信じる心、どちらが勝るのでしょうか。

タヌキと子どもの虹の約束をめぐるお話です。

あらすじ

山の奥にだいごろうというタヌキが住んでいました。

だいごろうは誰も信じず、自分以外のものは、ばかすためにいるのだと思っていました。

ある日、だいごろうは祠の前で泣いている男の子を見つけました。

だいごろうが声をかけると、男の子はりょういちと名乗りました。

だいごろうはりょういちを、ばかすことにしました。

だいごろうは旨いまんじゅうだと言って、土団子を渡したのです。

しかし、りょういちは疑うことなく「美味しいと」食べました。

だいごろうはもう一つばかしてやろうと思い、りょういちに欲しいものを聞きました。

りょういちは「虹がいい」と答えました。

だいごろうは「虹を100円で売ってやる」と言いましたが、りょういちは100円も持っていませんでした。

そこで、だいごろうは「毎日少しずつお金を持ってくれば、それが100円になった時に売ってやる」と言いました。

りょういちは約束して帰っていきました。

次の日、りょういちは本当にやってきました。

そして、だいごろうに5円玉を渡しました。

そのお金はお母さんの仕事の手伝いをして、もらったものでした。

りょういちはその後も毎日5円ずつお金を持ってきました。

ついに100円になった日、だいごろうはりょういちに言いました。

「今日から空にかかる虹はりょういちのものだから、好きなだけ見るがいい」と。

りょういちはばかされているとは露にも思わず、大喜びで帰っていきました。

ところが、次の日もりょういちはやってきました。

りょういちは友だちに虹を買ったと話したらバカにされたから、証明するために今夜虹が見たいのだと言います。

だいごろうは虹を見せる気もないのに、りょういちに「わかった」と言い、約束をしました。

それをきいて安心したりょういちは、嬉しそうに帰っていきました。

だいごろうにばかされて、りょういちは友だちにバカにされてしまうのでしょうか。

『100えんのにじ』の素敵なところ

  • 信じる心の大切さを教えてくれる
  • 信じられる嬉しさを教えてくれる
  • 正反対の2人の微笑ましくも生々しいやり取り

疑うことを知らないりょういち。

たくさんばかされて、土団子まで食べさせられますが、りょういちはいつも幸せそうです。

いつも笑っています。

そんな明るいりょういちの姿に、信じることの大切さを教えられます。

反対に、誰も信じないだいごろう。

何度も何度もばかしますが、全て信じてくれるりょういちに罪悪感を感じます。

そして、信頼に応えたいという気持ちが芽生えます。

信じてもらうことで、心が変わっていくことを教えてくれます。

そんな正反対の2人が織り成すやり取りは、微笑ましくも生々しさがあります。

だいごろうのばかし方はかなり悪質で、かわいいタヌキではなく、意地悪な大人の騙し方です。

その意地悪な表情は陰湿そのもの。

反対にりょういちは鼻を垂らしつつニコニコと笑っていたりと、純粋な子どもそのものです。

でも、そんな容赦のない生々しさがあるからこそ、だいごろうが変わっていくことがとても心に響くのです。

一匹のタヌキの考え方を揺るがすに足るリアリティがあるのです。

信じること、信じられることの大切さが、リアリティのある、細やかな心の動きとともに描かれた絵本です。

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