作:くすのきしげのり 絵:にきまゆ 出版:フレーベル館
人をばかし続けたタヌキ。
疑うことを知らない子ども。
二人が出会った時、疑う心と信じる心、どちらが勝るのでしょうか。
タヌキと子どもの虹の約束をめぐるお話です。
あらすじ
山の奥にだいごろうというタヌキが住んでいました。
だいごろうは誰も信じず、自分以外のものは、ばかすためにいるのだと思っていました。
ある日、だいごろうは祠の前で泣いている男の子を見つけました。
だいごろうが声をかけると、男の子はりょういちと名乗りました。
だいごろうはりょういちを、ばかすことにしました。
だいごろうは旨いまんじゅうだと言って、土団子を渡したのです。
しかし、りょういちは疑うことなく「美味しいと」食べました。
だいごろうはもう一つばかしてやろうと思い、りょういちに欲しいものを聞きました。
りょういちは「虹がいい」と答えました。
だいごろうは「虹を100円で売ってやる」と言いましたが、りょういちは100円も持っていませんでした。
そこで、だいごろうは「毎日少しずつお金を持ってくれば、それが100円になった時に売ってやる」と言いました。
りょういちは約束して帰っていきました。
次の日、りょういちは本当にやってきました。
そして、だいごろうに5円玉を渡しました。
そのお金はお母さんの仕事の手伝いをして、もらったものでした。
りょういちはその後も毎日5円ずつお金を持ってきました。
ついに100円になった日、だいごろうはりょういちに言いました。
「今日から空にかかる虹はりょういちのものだから、好きなだけ見るがいい」と。
りょういちはばかされているとは露にも思わず、大喜びで帰っていきました。
ところが、次の日もりょういちはやってきました。
りょういちは友だちに虹を買ったと話したらバカにされたから、証明するために今夜虹が見たいのだと言います。
だいごろうは虹を見せる気もないのに、りょういちに「わかった」と言い、約束をしました。
それをきいて安心したりょういちは、嬉しそうに帰っていきました。
だいごろうにばかされて、りょういちは友だちにバカにされてしまうのでしょうか。
『100えんのにじ』の素敵なところ
- 信じる心の大切さを教えてくれる
- 信じられる嬉しさを教えてくれる
- 正反対の2人の微笑ましくも生々しいやり取り
疑うことを知らないりょういち。
たくさんばかされて、土団子まで食べさせられますが、りょういちはいつも幸せそうです。
いつも笑っています。
そんな明るいりょういちの姿に、信じることの大切さを教えられます。
反対に、誰も信じないだいごろう。
何度も何度もばかしますが、全て信じてくれるりょういちに罪悪感を感じます。
そして、信頼に応えたいという気持ちが芽生えます。
信じてもらうことで、心が変わっていくことを教えてくれます。
そんな正反対の2人が織り成すやり取りは、微笑ましくも生々しさがあります。
だいごろうのばかし方はかなり悪質で、かわいいタヌキではなく、意地悪な大人の騙し方です。
その意地悪な表情は陰湿そのもの。
反対にりょういちは鼻を垂らしつつニコニコと笑っていたりと、純粋な子どもそのものです。
でも、そんな容赦のない生々しさがあるからこそ、だいごろうが変わっていくことがとても心に響くのです。
一匹のタヌキの考え方を揺るがすに足るリアリティがあるのです。
信じること、信じられることの大切さが、リアリティのある、細やかな心の動きとともに描かれた絵本です。
コメント