作:小手鞠るい 絵:たかすかずみ 出版:マイクロマガジン社
家族と離れ離れになったライオンの赤ちゃん。
人間に保護されますが、いつかは自然に帰らなければなりません。
自然に帰ったライオンの、一生をかけた家族探しの物語です。
あらすじ
ある日、ぼうやのお父さんが、川で溺れているライオンの赤ちゃんを見つけました。
お父さんは赤ちゃんライオンを助け家に連れ帰りました。
ぼうやは赤ちゃんライオンにワンダと言う名前をつけました。
ぼうやとワンダは毎日仲良く遊びました。
しかし、別れの朝がやってきました。
ワンダを草原にかえさなければならないのです。
草原に帰ったワンダは、来る日も来る日も家族を探しました。
探し回る間に成長し、大人になり、もうたてがみも生えそろっていました。
さらに時が流れ、ワンダは年老いたライオンになっていました。
ある朝、ワンダが海の側に辿り着くと、海鳥がワンダの家族を見たといいます。
しかし、海鳥が家族を見た場所は空の彼方でした。
ワンダはどうしたら、空の彼方まで行けるだろうと考えました。
家族のいる空の彼方とは・・・。
ワンダは家族と再会できるのでしょうか。
『そらをとんだワンダ』の素敵なところ
- ワンダの成長を通して流れていく時間の重み
- とても切ない隠喩表現
- ワンダを救う奇跡の出会い
この絵本はライオンの一生を描いた物語です。
そこには時間の流れや重みが欠かせません。
その時間の流れをページをめくっていくたびに、少しずつワンダが成長していく様子を通じて描かれます。
そこには家族と会えず、一人ぼっちで成長していくワンダの苦労や寂しさが重ねられています。
そして、家族に会えないまま老齢を迎えてしまいます。
そんな中、「空の彼方で見た」という声。
これは死を意味する隠喩です。
ワンダが老齢になっていることを考え合わせれば推測できます。
物語の結末に向け、この死を意味する隠喩が増えていきます。
それを理解できれば、この絵本の深みや切なさが感じられると思います。
さて、そんなワンダにも最後に救いが訪れます。
それは奇跡的な出会いです。
きっとこの出会いがなければ、完全なる悲劇となっていたことでしょう。
家族を探し求めるワンダに「よかったね」と言える唯一の出来事かもしれません。
一匹のライオンの一生を描いた、壮大で、切なくて、でも温かい。
そんな物語です。
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