文:川村たかし 画:関屋敏隆 出版:教育画劇
山から聞こえる謎の声。
「おぶさりたい・・・、だかさりたい・・・」
その正体をめぐる3兄弟の少し不気味な昔話です。
あらすじ
昔、山奥の村に太郎、次郎、三郎という力自慢の兄弟が住んでいた。
ある日のこと、太郎が用事で出かけた帰り、峠で日が暮れてしまった。
この峠には光るオバケが出るという。
太郎は恐る恐る峠を越えたが何も出なかった。
と、思った時、峠のてっぺんがピカピカと光、その光が「ガッチャガッチャ」と音を立てて近づいてくる。
さらには「おぶさりたいよう、だかさりたいなあ」という気味の悪い声まで聞こえてきた。
太郎は一目散に逃げかえって、家の布団に潜り込んだ。
太郎から峠のオバケの話を聞いて、今度は次郎が峠に行ってみることにした。
光を見つけた次郎は木の棒を握りしめ、その光に近づいた。
すると、オバケはやっぱり近づいて来て、
「おぶさりたいよう、だかさりたーい」
と、目の前に迫ってきた。
次郎も怖くなって、逃げ出し布団に潜り込んだ。
今度はのんびり屋の三郎が次郎から話を聞いて、峠に行ってみることにした。
三郎はおんぶするための背負いひもを持って、峠に出かけて行った。
三郎が峠を登っていくと、やはり光るオバケが近づいてきた。
三郎はそのオバケに「おんぶしてやる」と言うと、オバケは三郎の背中におぶさった。
三郎はオバケをおぶったまま峠を降りていく。
オバケをおぶった三郎はどうなってしまうのでしょうか。
光るオバケの正体とは・・・。
『おぶさりてい』の素敵なところ
- 怪談話ならではの不気味な空気感
- それぞれ個性的な三兄弟
- 三郎とオバケの手に汗握る駆け引き
この絵本は全体を通して、怪談話の古典的な怖がらせ方がふんだんに使われています。
ホッとした頃に出てくるオバケ。
音を立ててゆっくりと近づいてくる。
そして不気味な声。
「で、でたあ!」と逃げる人。
まさに古典的ですが、だからこそゆっくりじっくりとした怖さがあります。
そんなオバケに立ち向かうのは三人の兄弟です。
三人とも力自慢ですが、性格は全然違います。
臆病者の太郎。
せっかちで見栄っ張りの次郎。
のんびり屋だけど肝の座った三郎。
これらの性格が物語の中にもよく表れていて、物語を盛り上げ、怖さを引き立たせ、愛着を持たせてくれるのです。
さて、その中で実際にオバケとやり取りするのは三郎です。
その駆け引きは手に汗握るもの。
「どうなるんだろう?」「三郎大丈夫かな?」と子どもたちから心配の声や応援の声も上がります。
そして、ついに決着!
そこには意外なオバケの正体が待っていました。
古典的だからこそのドキドキ感を味わえる。
とても読みやすい昔話の絵本です。
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