文:香山美子 画:太田大八 出版:教育画劇
変わった響きの「しっぺいたろう」。
化け物どもの恐れる名前「しっぺいたろう」。
「しっぺいたろう」とはいったいどこの誰なのでしょう?
あらすじ
旅の坊さんが、ある村にやってきました。
しかし、村人はなにやらうつむいています。
坊さんが村人に聞いてみると、「毎年、村の娘を一人、神様に捧げなければならない」という。
その話に疑問を持った坊さんは、山の社に行ってみることにしました。
坊さんが隠れて様子を見ていると、木の上から大きな化け物が3匹降ってきました。
地面に降りると化け物は、あたりを見回しながら言いました。
「しっぺいたろうはおるまいな。おるまいな。」と。
そして、いないのを確認すると、化け物たちは踊り始めました。
坊さんはしっぺいたろうを探してみることにしました。
坊さんは生贄の娘の家へ行き、自分が戻るまで待つように言うと、しっぺいたろうを探しに出かけました。
でも、一向に見つかりません。
疲れてうとうと眠ってしまった時、「しっぺいたろう」と誰かが遠くで呼ぶ声が聞こえました。
はっと目を覚ましてみると、目の前には大きな白い犬がいました。
「しっぺいたろう」と呼ばれていたのはその大きな犬だったのです。
坊さんは飼い主のじいさまに訳を話すと、喜んでしっぺいたろうを貸してくれました。
さて、村の方では坊さんが帰らぬうちに、生贄をささげる時間となってしまいました。
娘は白装束を着て、支度を済ませました。
おとうとおかあは泣いています。
果たして、坊さんとしっぺいたろうは間に合うのでしょうか。
『しっぺいたろう』の素敵なところ
- 謎の名前「しっぺいたろう」
- 見つかるか?間に合うか?とハラハラの連続
- 疾走感ある最後の戦い
この絵本はタイトルを見た時に、まず疑問が浮かぶでしょう。
「しっぺいたろうってなに?」と。
それがこの物語の中核です。
化け物がしっぺいたろうを警戒する姿を見て、ますます「しっぺいたろうって誰なんだろう?」という興味と疑問が大きくなっていきます。
でも、中々見つかりません。
そして、興味が膨らみ切った時に聞こえてきたしっぺいたろうを呼ぶ声。
そこに現れたのはまさかの犬でした。
「え!?犬だったの!?」と子どもたちの驚く顔。
まさにこの物語の思惑通りの反応でしょう。
この絵本には、
「誰なんだろう?」
「見つかるかな?」
「間に合うかな?」
といった、ワクワクドキドキな焦らし効果がふんだんに使われています。
そのため、みんな先が気になって、見る姿勢も前のめり。
そんなドキドキワクワクを一気に解決する最後の場面。
しっぺいたろうと化け物が戦う場面は、物凄い疾走感とともに描かれます。
その坊さんとしっぺいたろうのかっこいいこと。
その姿に戦いが終わることには、しっぺいたろうの虜になってしまっています。
「しっぺいたろうかっこよかったね!」
と興奮気味の子どもたちです。
「しっぱいたろう」という、謎の名前を中心としたミステリーな昔話です。
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