文:小沢正 画:飯野和好 出版:教育画劇
人生には間のいい時と、悪い時。
両方が交互に訪れます。
でも、この猟師には間のいいことばかり。
それがどんどん積み重なって・・・。
あらすじ
昔々あるところに、どんべえさんという猟師がいました。
どんべえさんは毎日鉄砲を担いで、獲物を探していました。
その日は、山へ出かけるとすぐに気に止まった鳥を見つけました。
「なんて間がいいんだろう」と鳥に向かって鉄砲を撃ちました。
でも、どんべえさんは鉄砲がへたくそで、一度も獲物に当てたことがありません。
撃った弾は、イノシシのお尻に当たってしましました。
怒ったイノシシはどんべえさんに向かって突進してきました。
どんべえさんは慌てて木に登りました。
すると、イノシシは木の幹にぶつかりひっくり返ってしまったのです。
どんべえさんはなにせずにイノシシが手に入ったので、「間のいいことだ」と思いました。
どんべえさんはイノシシを縛って背中に担ぐため、ふじつるを引っ張りました。
すると、木の上から栗の実がたくさん落ちてきました。
ふじつるがくっついていたのは栗の木だったのです。
袋に入りきらないほどの栗の実を手に入れ、どんべえさんは「間のいいことだ」と思いました。
イノシシと栗の実を持って歩いていると、川にぶつかりました。
そこには一本の丸木橋がかかっています。
どんべえさんが勇気を出して渡っていくと、途中でバランスを崩し落ちてしまいました。
なんとか木の根っこを掴み岸へ上がると、掴んだものは木の根っこではなくウサギの足でした。
こうしてウサギも手に入りました。
さらにウサギが暴れて引っ掻いたので、地面から大きな山芋が顔を出していました。
山芋まで手に入れて、どんべえさんはやっぱり「間のいいことだ」と思いました。
しばらく行くと、長者どんの家の前にやってきました。
長者どんは、たくさんの獲物を背負っているどんべえさんを見て、腕のいい猟師だと勘違いし、「家の屋根に止まっているカラスを撃ち落としてほしい」と頼みました。
鉄砲が下手などんべえさんは、理由をつけて断りました。
しかし、代わりに弓を渡されて、やらざるを得なくなりました。
この矢はカラスに当たるのでしょうか?
はたまた間のいいことが起こるのでしょうか・・・。
『まのいいりょうし』の素敵なところ
- 次々と連鎖する間のいい出来事
- でも、考え方を変えれば間が悪い
- どんべえさんの屈託のないキャラクター
この絵本の間のいい出来事は、ただ間がいいだけでなく、全てが繋がって連鎖しています。
だからこそ、たくさんの出来事が起こりますが、飽きずに、息をつかせないのです。
「今度はなに!?」と常に目が離せません。
それと一緒に、流れがわかってくると、「今度はどんな間のいいことがあるんだろう」と安心して次の出来事を楽しみに出来る面白さもあります。
でも、途中であることに気付く子もいます。
それは「運がわるかったのかも・・・」ということです。
確かに、結果オーライですがイノシシに追いかけられるのも、川に落ちるのも一大事です。
間が悪かったとも言えます。
しかし、どんべえさんはいいことしか見ていないので、なんでも「間がいい」ことになってしまいます。
そこにはポジティブシンキングの大切さが隠れているのかもしれません。
そんなとてもポジティブなどんべえさんの姿やキャラクターは好感度抜群です。
素直に喜んだり、ピンチの時に涙を流して泣き叫んだり、自分の実力をちゃんとわかっていて威張ったりしなかったり。
気取らず、背伸びもしないどんべえさんの姿を見ていると、素直に「よかったね」と思えます。
最初「おっさん」などと言っていた子も、読み終わるころにはどんべえさんに愛着が湧いています。
愛されるキャラクターどんべえさんの、とってもポジティブになれる昔話です。
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