かべのすきま(4歳~)

絵本

文:中西翠 絵:澤野秋文 出版:アリス館

一人での留守番。

なんだか不安で、いつもの家が少し違って見えたりする。

壁の染みや隙間などを見るだけで不安が増していく。

でも、本当に壁の隙間から何かが出てきたら・・・。

あらすじ

夜、一人で留守番をする男の子。

秒針の音が響き、隙間風の音もする。

男の子は寝る前にトイレに行くことにした。

しかし、トイレに行く途中、壁から少し出ている糸のようなものを見つけた。

それを引っ張ってみると壁の隙間が出来てしまった。

とりあえずトイレに行き用を足していると、どこからか人の声がする。

おっかなびっくり部屋に戻り、布団にくるまった。

すると、壁の隙間からニョキっと足が現れた。

続いて、ヒョウ柄タイツに、紫メガネ、トラ顔のシャツを着たおばちゃんが出てきた。

なんと現れたのは三人のおばちゃんたち。

こたつでおしゃべりしながらお菓子を広げ始めた。

男の子は布団の中からおばちゃんたちを観察していた。

おばちゃんたちが話しかけてきたので、「誰ですか?」と聞いてみた。

おばちゃんたちの答えは「わてらピチピチギャルやで」「30年前のな」だった。

不安そうな男の子を見て、おばちゃんが卵焼きを作ってくれることになった。

卵焼きのいい香りにつられ、男の子は布団から出てきた。

おばちゃんと卵焼きを食べていると、どこからか石焼き芋を売る声が聞こえてきた。

それを聞いた一人のおばちゃんが財布を持って、壁の隙間に消えた。

壁の隙間から帰ってきたおばちゃんは、手に石焼き芋を持っていた。

すっかり打ち解けた男の子は、おばちゃんたちにお茶を入れてあげることにした。

しかし、お茶をこぼしてしまい、おばちゃんたちが掃除してくれた。

しょんぼりしている男の子をおばちゃんたちが元気づけ、男の子にも笑顔が戻った。

おばちゃんたちとの楽しいひと時。

でも、このおばちゃんたちはいつまでいるのでしょうか。

『かべのすきま』の素敵なところ

  • 一人で留守番をする不安感がリアル
  • 予想外過ぎる壁からのおばちゃん
  • 関西のおばちゃんの図々しさと、心遣いと、頼もしさと、優しさ

夜、一人での留守番。

いつもと同じ家なのに、どこか物悲しくて不気味です。

時計の秒針や隙間風など、いつもは聞こえない音が聞こえたり、部屋が広く感じたり。

そんな中、出来た謎の壁の隙間。

聞こえてくる話し声。

子どもたちはその不穏な雰囲気にホラーと勘違い。

「こわい!」「やだ!」「何か出てくる」と目を背けたり、子どもどうしで抱き合ったり。

しかし、出てきたのはヒョウ柄タイツの足。

子どもたちは唖然とし、何が起こっているのかよくわかりません。

おばちゃんの全身が出てきても、まだ時が止まっています。

おばちゃんが三人そろったあたりでホラーじゃないことに気付き「なんでおばちゃん!?」とツッコミが。

予想外過ぎたのでしょう。

そんな謎のおばちゃん三人組は、イメージそのままのザ・関西のおばちゃんです。

当たり前のようにお菓子を食べ始め、しゃべりかけてきます。

「誰ですか」と聞いても、帰ってくるのは切れのいいボケとツッコミ。

石焼き芋の声を聞けばダッシュして、去り際には飴ちゃんもくれます。

そんなおばちゃんは、一人での留守番には強い味方です。

人見知りする余地もないくらいグイグイ来るし、お菓子もどんどん進めて来るし、話だって止まりません。

小さな失敗なんて笑い飛ばして、初対面とは思えないくらい仲良く笑顔になっています。

関西のおばちゃんの図々しくも、細やかで温かい心遣いを感じさせてくれます。

ホラーかと思いきや、関西のおばちゃんの魅力を全力で伝えて来る。

ノリと勢い全開の愛情で、ほっこりさせてくれる絵本です。

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