作:北村直子 出版:偕成社
とてもいぶし銀な岩のオオイシさん。
その活躍の場は多種多様。
漬物石から、みんなの日陰を作る仕事まで大忙しです。
今日はどんな仕事が舞い込んでくるのでしょう。
あらすじ
町の一角に店を構える大岩のオオイシさん。
そこへ大工がやってきました。
工事の車が壊れて困っているというのです。
オオイシさんは工事現場に行き、舗装中の道路をゴロゴロ転がりました。
すると、道路は少し平らになりました。
オオイシさんは朝から大忙しです。
漬物屋の漬物石、粉屋の石臼、相撲の稽古に子どもたちとの遊びなど、みんなの人気者なのです。
ある日、京都の撮影スタジオからスカウトがありました。
その役は大石内蔵助の家にある立派な石の役でした。
何日も撮影は続き、終わるころにはスタッフと仲良くなっていました。
時代劇が終わってもオオイシさんは引っ張りだこでした。
次々に色々な映画に出演していたある日。
撮影で海にやってきていたのですが、オオイシさんが海に落ちてしまったのです。
海の底で待っていましたが、助けはきませんでした。
オオイシさんはこのまま海の石になってしまうのでしょうか。
『オオイシさん』の素敵なところ
- オオイシさんのみんなを包み込むような器の大きさ
- 石の特性を活かした展開
- 大人もクスリとなる映画のパロディネタ
この絵本の一番の魅力はオオイシさんの人柄だと思います。
いつも温かな笑顔でみんなを包み込むオオイシさん。
漬物石から相撲の稽古まで嫌な顔一つせず引き受けます。
撮影所のスタッフがオオイシさんにもたれかかって休憩している姿などは、オオイシさんがみんなから好かれているのがひしひしと伝わってきます。
だからこそ、映画でも引っ張りだこになったのでしょう。
そんなオオイシさんが出演している映画ですが、どれも見たことのあるパロディネタばかり。
しかも、全体的にちょっと古め。
「忠石蔵」「イシマゲドン」「大石神怒る」「石神家の一族」など。
上手く石と掛け合わされています。
子どもたちは「なんだこれ!」と、オオイシさんの役柄に大笑いですが、大人はこのパロディネタにクスリとさせられます。
さて、そんなオオイシさん。
海に落ちてしまいます。
そこからの冒険は大変なものでした。
その冒険を通して、石ってなんであんなに滑らかに丸くなるのかがさりげなく語られます。
これを見たら、河原の石などを見た時にオオイシさんに思いを馳せることでしょう。
そんな石の特性をしっかり盛り込みお話は展開していきます。
石として全力のオオイシさんを通して、石の特性という科学や、往年の名作という歴史に触れることが出来る。
オオイシさんのように懐の深い絵本です。
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