作:レベッカ・コッブ 訳:おーなり由子 出版:ポプラ社
遊んでいる時に来るご飯の時間。
呼ばれるけれど、まだ遊んでいたいこともあると思います。
そんな子どもの気持ちを、とても素直に飾り気なく描いた絵本です。
あらすじ
女の子が絵を描いていると、お母さんが呼んだ。
「ごはんよー」
女の子は忙しかったので「いらなーい」と言ったが、「は、や、く、ご、は、ん、た、べ、て」と少し怖い声になったので、しぶしぶ食卓に座った。
でも、お腹も空いてないので、ご飯に手を付けずに座っていた。
すると、テーブルの下から声がした。
そこにはおしゃれな模様のワニがいて、サンドイッチを欲しがった。
その時横から、のんびりした声のクマも現れて、スープを欲しがった。
今度は後ろからオオカミの坊やがリンゴに手を伸ばした。
3匹は女の子を囲んでいった。
「ねえ、君のお昼ごはん、ぼくらで食べていい?」
女の子は3匹にご飯をあげた。
そして、あっという間に全部食べ、「ごちそうさま」と帰っていった。
おかげで、ママは綺麗になったお皿を見て喜んで、女の子は夕方までたっぷり遊べるようになった。
だけどね・・・。
『ごはんのじかん』の素敵なところ
- 子どもの素直な気持ちが等身大に描かれている
- とても美味しそうに食べる動物たち
- 善悪や教訓がないありのままの物語
遊びに夢中な時のご飯の時間。
子どもだって手が離せない時があるし、食べたくない時もある。
この絵本の女の子は、そんな気持ちを絵本を読んでいる子に代わって、代弁してくれます。
とても素直で等身大なその気持ちが、「そうそう」と読んでいる子に寄り添ってくれるのです。
そんな時、現れたのが3匹の動物たち。
個性的な3匹は、とても美味しそうにご飯を食べてくれます。
その感想もとても素敵で、
「ああ、このスープとろけそう」
「このパン、香ばしくて、ふんわり。すばらしいわ」
などなど本当に美味しそうなのです。
また、3匹とのおしゃべりが、「食べたくない」という暗かった食卓を、明るく楽しいものにしてくれています。
女の子は食べてはいないけれど、楽しいご飯の時間を過ごしているのです。
こういう展開の話の時、どうしても善悪や教訓が出てきやすいところがあります。
ですが、この絵本にはそういうものが一切ないのが本当に素敵なところだと思います。
女の子は食べずに遊べて、動物たちは大満足、ママも綺麗に食べてもらえて喜ぶ。
傷つくものもいないし、咎めるもの、後ろめたさを感じるものもいません。
でも、ご飯を食べてないからお腹は空くし、お腹が空いたらご飯が待ち遠しくなります。
そんな時のご飯の時間は食欲も湧いてきます。
そんな当たり前のことが、等身大の女の子を通してありのまま描かれているのです。
だから、読んでいる人も素直に受け入れることが出来るのだと思います。
「ごはんいらなーい」「ちょっとまってー」と言う子の気持ちがよくわかる。
子どもだけでなく大人にも読んで欲しい絵本です。
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