作:さとうめぐみ 出版:教育画劇
とても美味しそうな洋菓子の国に住むミルフィーユちゃん。
でも、両親がお手上げになるほどのわがままな女の子でした。
そんなミルフィーユちゃんの、出会いと成長の物語です。
あらすじ
ミルフィーユちゃんは大きな屋敷に住んでいます。
とてもわがままで、嫌いな食べ物は投げ散らかす。
友だちにもわがままばかり言うので、誰も遊んでくれなくなりました。
家庭教師もつけましたが、すぐに見放されてしまいました。
そこでパパは遠い町にある、一番厳しい学校にミルフィーユちゃんを入れることに。
嫌がるミルフィーユちゃんを乗せ、車は学校に向かって走り出します。
ミルフィーユちゃんはわがままを言ってなんとか車を止めようとしました。
そして、止まった隙に車から逃げ出したのです。
走りに走ってたどり着いたところは、見渡す限り何もない寂しい場所でした。
うずくまって泣いていると、スイートポテトおじいさんが通りがかりました。
スイートポテトおじいさんは事情を聞くと、家についてくるように言いました。
食事をあげる代わりに、荷物を持つようにとも。
ミルフィーユちゃんが「疲れて持てない」とわがままを言うと、
「働かざるもの食うべからずじゃ」と言って、先に行ってしまいました。
ミルフィーユちゃんは仕方なく、荷物を持ってついていくのでした。
スイートポテトおじいさんは、温かいスープを出してくれました。
それが本当に美味しくて、ミルフィーユちゃんはわがままひとつ言わずに飲み、ベッドに入りました。
わがまま放題だったミルフィーユちゃんは、スイートポテトおじいさんの元でどんな暮らしをしていくのでしょう。
家に帰ることは出来るのでしょうか。
『ミルフィーユちゃん』の素敵なところ
- とにかく洋菓子が美味しそう
- 生活に必要なことを体験する大切さと楽しさ
- スイートポテトおじいさんの厳しくも優しい眼差し
この絵本の表紙を見ただけでまず感じるのは、
「ミルフィーユが食べたい」
ではないでしょうか。
そう思ってしまうくらい、この絵本の洋菓子たちは美味しそうなのです。
登場人物だけでなく、この国の動物たちや草花も洋菓子です。
クッキーの花や、スイカのようなトリュフの実など、そのどれもが美味しそう。
それはきっと、生地のサクサク感や、クリームのフワフワ感、香りが漂ってきそうなバター感などが、とても繊細な色使いで表現されているからだと思います。
さて、そんな美味しそうな見た目に反して、わがままなミルフィーユちゃん。
パパはあの手この手で教育しようとします。
ですが、この絵本を読むと教育の本質を考えさせられます。
いわゆる「お勉強」の前に大切なのは、自分の生活に直接かかわるものに触れる体験なのです。
自分の食べるものを、重さを感じながら運ぶことを出発点に、卵や野菜の収穫など、食べることに直結することを体験していきます。
その大変さと楽しさ新鮮さの前では、わがままなんてどこかへ飛んで行ってしまったようです。
それを見守るスイートポテトおじいさんの眼差しも素敵です。
やるもやらないも自由だけれど、やらなかったらご飯は出てこないという、
「働かざるもの食うべからず」を合言葉に、厳しさを見せるスイートポテトおじいさん。
ですが、一緒に働いたり、苦労しつつも楽しそうなミルフィーユちゃんの成長を見守る眼差しは、優しくて温かいもの。
本当の孫とおじいちゃんのようです。
特にスイートポテトおじいさんが、ミルフィーユちゃんを評する言葉はパパとは真逆です。
ですが、ミルフィーユちゃんの本当の姿を言い表し、ミルフィーユちゃんの本当の心と向き合っていたからこその言葉なのだと感じます。
美味しそうな洋菓子の国を通して、教育と出会いについて、改めて考えさせられる絵本です。
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