作:筒井頼子 絵:林明子 出版:福音館書店
いつもはお父さん、お母さんと一緒に行くお店。
そこに一人で行くことになったら、それは日常から大冒険へと変わります。
そんな大冒険をリアルな絵とリアルな子どもの視点で描くこの絵本。
初めて大人と離れて町に出ないといけない時に、きっと勇気を与えてくれるでしょう。
また、そんな日が来る時のための心の準備にもなると思います。
あらすじ
ある日、忙しくて手が離せないママがみいちゃんに赤ちゃんの牛乳を買ってきて欲しいと頼みます。
すると「みいちゃん、もういつつだもん」と力強く引き受けます。
みいちゃんはママと「車に気を付けること」「おつりを忘れないこと」の二つの約束をして出発します。
途中、すごい速さで走り抜けていく自転車とすれ違ったり、友だちのともちゃんに合ったりしながらお店へ向かいます。
そしてお店の前の坂で勢いよく駆け出すと、転んでお金を落としてしまいます・・・。
みいちゃんは無事にお店にたどり着き、買い物をすることが出来るのでしょうか。
お店に着いた後も一筋縄ではいかない出来事が盛りだくさん。
そんな中でのみいちゃんの頑張りをぜひ読んでみてください。
『はじめてのおつかい』の素敵なところ
- 描き込まれた町の風景や人々の表情
- 5歳児の目線で描かれた文章
- 思わず応援したくなるみいちゃんの頑張り
まずすごいのがページの中の描き込みです。
1ページ目のみいちゃんの家の台所。
洗い物、沸騰している鍋にやかん、テーブルの上にはジュースの少しこぼれたコップに、みいちゃんの描いた絵、散らばったクレヨン、床に落ちた絵本などなど、他にもまだまだ色んなものがリアルかつ躍動感あふれるタッチで描かれています。
これが全ページ通して続きます。
子どもは読むたびに「あ、○○がある」と新発見。
じっくり一人で見るにも面白い絵本です。
また、みいちゃんを中心に、その時の心情を見事に表している細かな表情の描き方もすごい。
少し不安そうなどの‟少し”をとても繊細に描き出しています。
もちろん表紙になっている、みいちゃんの満面の笑顔も素敵ですよね。
そして文章もしっかりとみいちゃんの視点で描かれます。
自転車が「風のようにぴゅるーん」と通り過ぎたり、「胸がどっきんどっきん鳴って、目もしぱしぱ音がしました」など子どもの等身大な言葉選びが印象的です。
それらがみいちゃんの頑張る姿をとてもリアルにし、応援したくなるし、自分と重ね合わせやすくもしているのだと思います。
『はじめてのおつかい』のおすすめの読み方
- みいちゃんになりきってセリフを読む
- 子どもの発見に耳を傾ける
- 背表紙までしっかり見せる
みいちゃんの目線で進んでいくので、不安な時は不安そうな声、勇気を出した時には振り絞った声などみいちゃんの心情や行動と読み方をリンクさせましょう。
この絵本は読んでいると「あ、猫だ!」「危なかった~」など子どもから発見や色々な反応があると思います。
テンポが悪くならない程度に「ほんとだ。ここにある」など返してあげると、一緒に町を歩いてお店に向かっている雰囲気が味わえます。
こういった反応や没入感も絵師さんの狙いだったのかもと思わされます。
そして最後に本を閉じた背表紙にこっそり後日談が描かれているので、そこまでしっかりと見せましょう。
きっと読んでいるうちに、子どもとの色々な対話が生まれると思います。
それがとてもおもしろく読みがいもある絵本です。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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