おだんごスープ(4歳~)

絵本

文:角野栄子 絵:市川里美 出版:偕成社

亡き妻が作っていたおだんごスープ。

そのスープを残されたおじいさんが作ってみると、次々にお客さんがやってくる。

料理と食事は心にも元気をくれる。

そんなことを感じさせてくれる絵本です。

あらすじ

おばあさんが死んで、ひとりぼっちのおじいさん。

元気なく、一日中座って過ごしていました。

何日も経ったある日、おじいさんはおばあさんの作ってくれた温かいおだんごスープが飲みたくなりました。

台所にあった5つのお鍋から一番小さなものを使い、作ってみることにしました。

おじいさんはおばあさんの口ずさんでいた歌を思い出しながら作っていきます。

材料はひき肉と塩こしょう。

おだんごスープが出来ると、ネズミが三匹やってきて言いました。

「あー、いいにおい」

そこで、おじいさんはネズミにスープをあげました。

スープはほんの少ししか残りませんでした。

それを飲みながら、考えました。

「おばあさんのはもっとおいしかったな」と。

次の日、またおだんごスープを作りました。

今度はネズミが来てもいいように、少し大きな2番目の鍋ることに。

歌も少し思い出し、ジャガイモを加えました。

出来上がると、ネズミとネコがやってきて言いました。

「あー、いいにおい」

そこで、ネズミとネコにスープをあげると、おじいさんの分はまた少ししか残りませんでした。

飲んでみると、やっぱりおばあさんのスープの方が美味しいのです。

次の日、今度はネコが来てもいいように、少し大きい3番目の鍋でおだんごスープを作ります。

歌もさらに思い出し、玉ねぎも加えました。

完成すると、イヌとネコとネズミがやってきて言いました。

「あー、いいにおい」

そこでイヌとネコとネズミにスープをあげると、またスープはほんの少ししか残りませんでした。

飲んでみると、まだおばあさんのスープの方が美味しいのです。

日に日に思い出していく歌と、美味しくなっていくスープ。

そして増えるお客さん。

おばあさんのおだんごスープを完成させることが出来るのでしょうか。

おじいさんは元気を取り戻せるのでしょうか。

『おだんごスープ』の素敵なところ

  • 規模の大きくなっていく繰り返し
  • スープを作るたびに元気になっていくおじいさんの姿
  • 人に食べてもらうこと、一緒に食べることのパワーを教えてくれる

この絵本の繰り返しは、日に日に色々なところが連動して大きくなっていきます。

鍋の大きさ、歌の内容、スープの具材、お客さんの数。

それにより、

「今度はおじいさんの分もあるかな」

「次はスープに何を入れるんだろう」

「次は誰が来るんだろう」

と、想像と期待が膨らむのです。

そして、作れば作るほど、おじいさんは元気を取り戻していきます。

最初は猫背で、イスに沈み込んでいたおじいさん。

でも、作るたびに表情は明るくなり、背筋も伸びてはつらつとしてきます。

そのおじいさんの様子に合わせて、物語も明るく、力強くなっていきます。

まるでこの絵本が、おじいさん本人であるかのように。

しかし、スープを作るだけならこんなに元気にならなかったでしょう。

そこには食べてくれる相手の存在が大きかったのだと思います。

作って誰かに食べてもらう。

それはとても大きな喜びで生きがいなのでしょう。

一緒に食卓を囲めばなおさらです。

どんなに悲しいことがあっても、笑顔にしてくれるパワーがあるのだと思います。

料理を作ること、ふるまうこと、一緒に食べること。

そのとてつもないパワーを、おじいさんを通して教えてくれる絵本です。

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