作:ヘルガ=ガルラ― 訳:やがわすみこ 出版:偕成社
みんなそれぞれ違う個性。
それが原因で仲間外れになることも。
それが自分の武器になることも。
ネリノの個性はその真っ黒な身体でした。
あらすじ
身体がまっくろなまっくろネリノ。
父さん、母さん、兄さんが4人の7人家族でした。
自分だけがまっくろで、他の家族はきれいな色をしていました。
兄さんたちは仲よく遊んでいるけれど、ネリノはまっくろだからと一緒に遊んでもらえませんでした。
まっくろネリノは素敵な花たちにどうしたらきれいな色になれるのか尋ねてみました。
でも、「生まれつき」と言われてしまいます。
薬を飲んでみようと考えてみたけれど、どれを飲めばいいかわからずやめました。
そんなある日、兄さんたちが行方不明になりました。
探していくと、兄さんたちは捕まえられて、鳥かごに入れられていました。
あんまり色がきれいなので捕まえられてしまったのです。
まっくろネリノは自分の黒さを活かし、夜の闇に紛れて、兄さんたちを助け出すことにしました。
まっくろネリノは無事に兄さんたちを助け出すことができるのでしょうか。
『まっくろネリノ』の素敵なところ
- みんな違う個性の見方
- 奇麗で鮮やかな色使い
- まっくろネリノの素朴で心に響く言葉
この絵本はみんな違う個性のネガティブな面と、ポジティブな面の両方を見せてくれます。
色というわかりやすい表現を通して。
鮮やかできれいな家族たちの色に対して1人まっくろなネリノ。
その違いから仲間はずれにされ、自分の個性についてネガティブな悩みを持ちます。
でも、まっくろネリノのすごいところはそこだけにとらわれず、その個性の特性もしっかりわかっているところ。
だからこそ、兄さんを助けるときにその特性を使うことを考えついたのです。
使い方や視点によって、個性をネガティブにもポジティブにもなることを伝えてくれるのです。
そんな、個性を色で表現しているだけあり、色使いもとてもきれいで鮮やかです。
でも、明るくなりすぎず、どこか落ち着いているのも魅力の一つだと思います。
また、まっくろネリノの黒を場面や気持ちに合わせて背景とのコントラストで使い分けているのもとても素敵です。
黒い背景で見えなくさせたり、月をバックに鮮やかに黒いからだが見えたりと、黒一色なのに色々な色合いに見えるのです。
色合いと構図だけでもまっくろネリノの心境がかなり描かれていますが、文章もまた心に響きます。
この絵本はまっくろネリノが語る形で描かれます。
その語りがとても素朴。
その時感じていることを、素朴に語る姿に共感し、応援したくなるのです。
兄たちが寝静まった後、「かなしいなあ」って考えたりと、その気持ちが伝わってきます。
まっくろネリノの素朴でわかりやすい言葉に子どもたちも
「かわいそう・・・」
兄たちを助けるときには
「がんばれ!」「ネリノ勇気あるね!」
と思わず声が出てしまいます。
かわいく、素朴で、芯の強いまっくろネリノ。
その小さな姿を通して、個性について考えさせられる絵本です。
コメント